オリンピック絡み 交通対策テストの目的

text:Kumiko Kato(加藤久美子)

東京2020大会において選手をはじめとする大会関係者を安全かつ円滑に輸送することを最重要課題として、大会期間中の道路交通についてより良い交通環境の実現を目指すため、実施目標を次のとおり設定している。

一般交通

東京圏の広域における一般交通について、大会前の交通量の一律10%減。特に重点取組地区については、出入りする交通量の30%減を目標とする。

首都高速道路における交通量のさらなる減

首都高速の至るところで「東京2020交通対策思考中」と知らせた。

東京圏のオリンピック・ルート・ネットワークの基幹をなす首都高速道路については、交通量を最大30%減とすることで、休日並みの良好な交通環境を目指す。

こうしてオリンピック開催1年前の7月24日(水)と26日(金)に実施されたのが、「交通対策テスト」である。

具体的には、以下の内容となる。

実際に行われたテスト

終日閉鎖

晴海、外苑(上下)、新都心(上)

状況に応じて閉鎖

与野、用賀、三軒茶屋、大師など

本線料金所手前でレーン数を減らし首都高への流入を制限

東京料金所(東名)、三郷(常磐道)、八王子(中央)、湾岸浮島東など計11か所

また、一般道においては東京都道318号環状七号線を超えて都心方向に流入する車の通航制限が行われた。

実際に走ってみた:東名〜首都高〜都心へ

ひと足早く、オリンピックの雰囲気を味わえる? 今回の交通対策テスト。筆者も参加してみることにした。

東名高速道路横浜青葉ICに近い場所に住んでいるので、東名→首都高3号線でも通行規制が行われていた7月24日と26日に横浜青葉インターから首都高速に向かって走ってみた。

24日午後8時頃

7月24日朝7時35分と26日7時35分の首都高渋滞の様子。

首都高速につながる各高速道路では、本線料金所の手前ですべての路線で通行規制が行われていた。

筆者が東名に乗ったのは19時30分ごろで、さすがに上り方面は空いていると思ったが大間違いだった。

青葉ICから乗って間もなく、渋滞の最後尾が見えてきた。いつもは5分程度で東京料金所まで行ける距離(6.8km)だがこの時は3倍以上15〜16分もかかってしまった。

26日午前9時頃

この日も24日と同様の規制が行われており、東名高速から首都高への通行規制も終日行われていた。

この時も東名青葉ICから東名上り線に乗って、首都高3号線→都心環状線→芝公園ランプで下車した。

東京料金所まで24日のような渋滞はなく、いつもは混雑している3号線の上り三軒茶屋付近も実にスムース。組織委員会が理想とする「日曜日の首都高」のようだった。

24日と26日の首都圏高速道路の渋滞の様子を画像で見比べてみた。いずれも朝7時30分頃。

都心に向かう高速道路では本線料金所付近で激しい渋滞となっているが、都心環状線を中心とした首都高にはほぼ渋滞は見られない。

首都高の上を走っていたクルマは休日の首都高を満喫できたはず?

プロドライバー「いつも1時間→3〜4時間」

普段、都内を走っているタクシードライバーや営業車で移動しているドライバーにこの度の交通対策テストについて聞いてみた。

どのような影響があっただろうか?

当日の渋滞状況を示す掲示板。

〇お客様の希望するコースの首都高ランプが使えず、その結果迂回をして別のランプを使用することによって通常より売上が上がった。(タクシードライバーAさん)

〇実際に高速道路の交通量が減って走行がスムースにできた。(同Bさん)

×六本木から久我山駅までの進行を希望されたお客様が、高速を使用してのご帰宅を希望されたが外苑ランプが封鎖されていたために高速を使うことができず、やむなく一般道での進行を余儀なくされた。

ふだん通り首都高が使えていたら外苑→高井戸で降り、環八から人見街道というコースで料金も上がって時間も早く送れたところを、表参道→井の頭通り→人見街道というコースだったために、料金は安くなり時間もよりかかった。

(同Cさん)

△都内に入るまでは普段より1.5倍程度の時間がかかったが、首都高は意外と空いていていたのでプラマイゼロ(都内ルート配送)

×常磐道の渋滞がひどかった。いつもは1時間で行くところを3時間以上掛かった。(飲料会社配送)

×東名厚木ICから駒沢までなんと3時間 オリンピック期間中は毎日こうなのか?(製薬会社営業)

やはりプロドライバーに聞いても都心の道路は比較的空いていたようだが都心に向かう道路では厳しい通行規制が行われていたため、ひどい渋滞の被害に遭ったドライバーも少なくなかった模様。

首都高や組織委員会、どう考えている?

実際、7月24日、26日の交通対策テストに関してどのような結果となり、どのような課題を見いだせたのか? 東京2020組織委員会と首都高速広報室に聞いてみたところ……

「首都高全体で交通量を減らそうとしているがこれは東京2020の大きな枠の中でやっていること。首都高として単独のコメントは出せない」(首都高速道路広報室)

当日の渋滞状況。

「現時点ではリリースやコメントを出す予定はない」(東京2020組織委員会)

あっさり却下されたので、筆者自身が取材をして感じた課題を述べてみたい。

ずいぶん前からこの日に交通対策テストが実施されることが告知されており、個々の運送会社やタクシー会社などの一部に協力要請がされていた。

しかしテストのことなど全く知らなかったというドライバーも数多く存在したようで、地方から東京を目指していた車の中には渋滞の列に入って初めて交通対策テストのことを知ったケースもあったようである。

業務に支障をきたすほどの大渋滞ではオリンピックのためとはいえ看過できないこともあるだろう。

今後は事前告知をさらに強化して(渋滞状況に関わるデータ提供など)、規制に関する情報はおちろん、渋滞回避の方法なやピーク時間などのデータも提供いただけると良いのではないだろうか?

今後どんな交通対策テストが行われる?

今後行われる予定、また実施しなくなった交通対策テストを紹介してみたい。

2019年8月23日(金):予備日として設定、実施されず

この日は7月24・26日の交通対策テストの予備日に設定されており、7月のテスト結果を踏まえ実施の可否が決まる。

交通対策テストのカレンダー。

実施する場合は、組織委員会ホームページにて改めて告知される。

※8月22日の時点で実施しないことが決まっている

2019年8月25日(日)

開閉会式テストとして実施される。バス20台〜30台で隊列を組み、選手村予定地(東京都中央区晴海)から明治神宮外苑に隣接する新国立競技場周辺までの走行等を予定している。

本番に向けた課題を検証するため、開閉会式時のバス輸送に関わるテストを実施。

地域住民の安全確保に配慮しながらのテストとなる模様。

なお、テスト実施の可否や規制ルートなど詳細については「公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」に問い合わせることが可能。