そこで、競業他社に遅れをとらず、優秀な人材を確保・定着させるという観点から、副業を解禁する企業も出てきています。 様々なメリットで注目される副業ですが、健康管理や情報漏洩の点でリスクがあり、導入に踏み切れないという声もあります。

 まず、健康面で「過重労働となり、本業に支障をきたす心配がある」という点については、副業希望者から副業に充てる時間を申告してもらい、労働時間を管理する中で、本業に支障をきたすような働き方をしているようであれば、改善するよう話し合うといいでしょう。また、明らかに支障をきたしている場合は、会社から副業の制限や中止を命じることができるよう就業規則等に定めておくのも一つの方法です。

 次に、「組織内の知識や技術等、情報の漏洩が懸念される」というリスクについて、本来、社員は業務上知り得た機密情報や個人情報等について守秘義務があり、それらを漏洩してはならないことになっています。よって、副業の有無にかかわらず、社員はそれを守らなければなりません。

 情報管理・情報漏洩等のセキュリティの観点から、銀行が副業を解禁することは難しいとされていましたが、2018年4月より、新生銀行が副業を解禁しました。また、他の大手企業の副業解禁も増えてきています。

 副業解禁と情報漏洩の問題を切り離すことは難しいのですが、社員に対し、守秘義務の重要性と万が一情報を漏洩させた場合には、就業規則等の規定に基づき、厳正に処罰するということも含めて周知を徹底することで、会社全体のリスク回避につなげることができます。

 その他にも、「労働時間の管理・把握が困難になる」という管理面においても、懸念点が挙げられます。確かに現行のルールでは管理することが多く、副業解禁に消極的になってしまうことがあります。

 政府は、副業やテレワークの普及・推進を進めていますが、実際にはなかなか広がらないため、その原因となっているものを探り改善していく目的で、議論をしています。

 2019年5月10日の政府の規制改革推進会議で、働き方の多様化に資するルール整備に関するタスクフォース主査である八代尚宏氏の「働き方の多様化に資するルール整備について」の資料において、「(前略)労働時間の通算規定は同一事業主の範囲内でのみ適用し、自己の自由な選択に基づき働く労働者を雇用する、他の事業主には適用しないこと」「主たる事業主は健康確保のための労働時間の把握に努めるものとすること」等の意見が出されています。

 また、30日以内の短期派遣(いわゆる日雇派遣)は、2012年から原則禁止とされていますが、副業の場合は、例外措置として認められています。ただし、主たる業務(自身のメインである仕事)における年収が500万円以上のものに限る、と年収要件が課せられているため、その年収要件を見直し、副業の雇用機会を広げようという意見もありました。

 同会議では、これらの内容を答申に盛り込むこととしていますので、これからの動向にも注目です。 2018年9月11日に独立行政法人労働政策研究・研修機構が公表した「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査」によれば、労働者の40%近くが副業を「新しくはじめたい」「機会・時間を増やしたい」と回答しています。

 日本人の寿命は伸び、100歳以上の高齢者は30年前より約50倍に増えました。ある海外の研究では、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています。人生100年時代の到来です。

 100歳まで生きるのであれば、いくつまで、どのように働きたいでしょうか。強い日本経済のために、日本の国民が豊かに、かつ、幸福に生きていくために、これを機に、様々な角度から「副業」について考えてみてはいかがでしょうか。