いまなお語り継がれる過激なキャッチコピーが乱舞

 ひと昔前まで、ライバル関係にある車種同士のキャッチコピーは非常に過激なものが多かった。明確に相手の車名こそ出していないが、見る人が見ればすぐにどの車種を指しているかは明らかだったのだ。

 最近では消費者庁が景品表示法第5条において、「自己の供給する商品・サービスの内容や取引条件について、競争事業者のものよりも、著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認される表示などを不当表示として規制」しており、そう指摘されかねない比較広告は鳴りを潜めてしまったが、今回はそんな強気だったころのキャッチコピーを振り返ってみたい。

1)名ばかりのGT達は、道をあける(2代目セリカ)

 1977年に登場した2代目セリカが79年にマイナーチェンジを実施したときのコピーがこれだった。ここでいう「名ばかりのGT」とは、当時「GT」を名乗りながら、昭和53年排出ガス規制の影響でシングルカムエンジンしか設定のなかったスカイライン(5代目)を指している。

 さらに「ツインカムを語らずに、真のGTは語れない」という煽り文句も追加する念の入れようだった。もちろんセリカにはツインカムエンジン搭載グレードが設定されており、その違いを指したコピーというわけだ。

2)今、スカイラインを追うものは誰か(5代目スカイライン)

 もちろん日産も黙ってそれを見ていたわけではない。1980年にターボエンジンを搭載したグレードを追加し、最高出力でセリカを上まわったことで、上記のコピーをテレビコマーシャルで使用し、ターボの設定がなかったセリカのことを逆に挑発したのである。

 すると今度はセリカが3代目でツインカムターボを設定し、対する日産は6代目スカイラインで190馬力を発生する2000ターボRSを出すという風にしばらくライバル関係が続いたのだ。

排気量100ccの違いで競い合ったことも

3)プラス100ccの余裕(初代カローラ)
4)隣のクルマが小さく見えます(2代目サニー)

 じつはトヨタと日産の因縁は古く、1966年に登場した初代カローラの時代までさかのぼる。先にデビューしていたサニーは1リッターエンジンを搭載した小型セダンであり、比較的好調な販売を記録していた。

 しかし、その6か月後に登場したカローラは、あえてエンジンを100cc大きい1.1リッターエンジンとし、「プラス100ccの余裕」というコピーとともに豪華さをアピールして販売したのである。

 結果的にカローラに販売台数で後塵を拝したサニーは、2代目で1200ccのエンジンを搭載。ここぞとばかりに1100ccのカローラを挑発する「隣のクルマが小さく見えます」というコピーで反撃をしたというわけなのだ。

5)ポリシーは、あるか。(初代ストリーム後期型)

 全長1.7メートル未満の5ナンバーサイズでありながら3列シートを擁し、全高を低く抑えたありそうでなかったコンセプトが消費者のニーズにマッチし、登場するや否や大人気車種となったホンダ ストリーム。

 2000年のデビュー以来好調な販売を記録していたのだが、2003年にトヨタがほぼ同じコンセプトのウイッシュをぶつけてきたのである。

 そんな“後出しじゃんけん”をされたホンダは、2003年9月に行われたマイナーチェンジ時のコマーシャルで「ポリシーは、あるか。」という怒りに満ちたコピーをぶつけてきたのである。しかし、結果的に販売台数ではウイッシュに大きく水を開けられる形になってしまった。