2種類設定されているのはJIS企画で定められているから

 日本のガソリンスタンドでは、赤いノズルのレギュラーガソリンと黄色いノズルのハイオクガソリンという2種類のガソリンが売られている。メーカーも、そうしたガソリンに合わせてレギュラー仕様のエンジンを作ったり、ハイオク仕様にしていたりする。自動車メーカーがレギュラー仕様、ハイオク仕様を作っているから、ガソリンスタンドは2種類用意しているのか。それとも、2種類のガソリンが売られているから自動車メーカーは合わせているのか。まるでニワトリか卵か、といった話になりそうなものだが、結論からいえばガソリンが2種類あるのはJIS規格で決まっているからだ。

 JIS K2202により、自動車用ガソリンは1号と2号の2種類について規格が定められている。おもに異なるのはオクタン価で、1号=プレミアムガソリンはオクタン価96.0以上、2号=レギュラーガソリンはオクタン価89.0以上となっている。なお、JIS規格ではハイオクのオクタン価は96以上であればいいのだが、現実的にはオクタン価100に達していることが多い。

 ガソリンを一種類に統一すれば、ユーザーの利便性も上がるだろうし、クルマの開発コストも抑えられるように思えるが、規格で決まっているので2種類が販売され続けているわけだ。では規格を統一することはできないのか? ガソリンを一種類にしたほうが合理的に思えるが、原油を蒸留したり、LPGを使ったりと石油製品は、多様な基材から作られている。その安定供給や無駄のない原料の利用を考えるとガソリン規格を統一するのは得策ではないという見方もできる。

日本のハイオクガソリンは欧州と比較してもオクタン価が高い

 実際、欧州では3種類のガソリン規格がある。こちらもオクタン価でいうと92/95/98となるが、彼の地でのスタンダードとなっているのはオクタン価95で、これが日本でいうレギュラーガソリン感覚で売られている。しかし、日本のレギュラーガソリンはJIS規格を確実に満たすためにオクタン価90となっている。そのため欧州系の輸入車は日本ではハイオク仕様となってしまう。オクタン価100の燃料は、ある意味ではオーバースペックだったりするのだ。

 ちなみに、オクタン価というのはガソリンエンジンがノッキング(異常燃焼)を起こしづらいという目安になるもので、オクタン価が高ければエンジンの圧縮比を上げることができ、熱効率に有利となる。そしてノッキングを起こしづらいハイオクガソリンを使うことで、圧縮比を上げたり、点火時期を早めたりできるのでパワーアップにつなげることができる。

 ただし、レギュラーガソリンとハイオクガソリンの持つ熱量自体は同じである。そのため、レギュラー仕様のエンジンにハイオクを入れてもパワーアップするわけではない。ただし、ハイオク仕様のエンジンにレギュラーガソリンを入れると、ノッキング防止のために点火時期を遅らせたりするのでパワーダウンしてしまうのだ。