現地時間7月17日、鹿島アントラーズからバルセロナBに移籍した安部裕葵が、クラブ公式以外では初めてのメディア対応を行なった。
 
 バルサの選手としての最初の数日をどう過ごしているのだろうか? 地元メディアは、まずその関心を安部にぶつけた。
 
 バルサBに所属する最初の日本人選手は、「周りの反応などを見て、クラブの大きさを感じています」と返答。「想像していた通りでしたし、来てからも別に違和感なく、ここが自分の居場所だという思いで生活できています」と付け加えた。
 
 異国の地で順応できずに終わる日本人選手も少なくない。「どう適応していくつもりか」とお約束の質問が飛ぶと、安部は落ち着いてこうコメントした。
 
「食事などは、この3日間でだいぶ分かってきて対応できていますし、言葉に関しては、時間が解決してくれると思います。チームメイトもとてもフレンドリーで、いい人たちなので、とても助かります」
 
 そして、「何か、知っている言葉は?」と問われ、「あれ、最近、覚えたの、なんだっけ? ビスカ・バルサ?(”バルサ万歳”を意味するカタルーニャ語)」と答え、笑いを誘うシーンもあった。
 
「チームメイトとは簡単な会話程度ですね。サッカーは、言葉が通じなくてもみんな笑顔になれて、楽しめますし、絆みたいなものを感じられるので。スタッフには、チームの歴史だったり、そういったものを少し教わったりしています」
 
 バルサBには、安部と同様に、このプレシーズンから移籍してきたオランダ人選手が二人いるため、練習後には彼らとともにスペイン語の授業を受ける予定だという。
 
 この日、バルサBは午前と午後の2部練習が予定されており、安部はその間にメディア対応を行なった。午後の練習では、その様子が公開される予定になっていたが、午前中のセッションで右腰部をぶつけて腫れが引かないため、念のために、休息をとることになった。本人も「ちょっとぶつかっただけです」と言っており、明日には練習に復帰できる予定だ。
 
 この囲み取材が行われたバルサの練習場で、数年前までトレーニングを積み、時同じくしてFC東京からレアル・マドリーに移籍した久保建英についても、質問が飛んだ。
 
「久保に、バルサについて訊いたか?」という地元メディアからの質問には、「代表で知り合う前から、プライベートでもすごく仲が良いですし、今でも連絡を取り合っています。サッカーに関係なく、いろんなことを話すので。なんでも訊いています」と親交があることを明かした。
 
 二人がトップチームでプレーする可能性について質問を受けると、久保に対しては「友人として応援している」とし、自身については、「期待されているのは感じています」と言いつつ、「時期は問わず、早ければ早いほどいいですけど、焦りながらも落ち着いた気持ちで、やることが大切だと思います」と語った。
 
 ちなみに、バルサBを率いるガルシア・ピミエンタ監督は、安部について、「7回か8回、練習を行なったら、どんなクオリティーがある選手が話せるだろう」と即答を避けたが、「トップチームは分からないが、ここにいるということは、少なくともバルサBではやっていける力があるからということ」と話した。
 
 そして、「安部は素晴らしい選手だ。彼ができるだけ早く適応できるよう、私たちは努力するし、来てくれて満足している」と続けている。
 
 安部自身も「今まで自分を育ててくれた家族はもちろん、小さい頃からのチームメイトや鹿島アントラーズの人たちの支えがあって、自分がこういう立場でできる喜びを感じている。その人たちのためにも、こういう環境でトライすべきだと考えています」と、周囲の尽力があって、ここまで辿りつけたことを実感しているようだ。
 
「まずはこのチーム(バルサB)が、どんな試合でも、どんな時でも勝てるように力を尽くし、個人的には、自分の成長を求めて日々の練習に取り組む。そうすれば、より良いものが見えてくると思います」と地に足をつけた目標を掲げた。
 
 最後に安部は、「ここで何を成し遂げたいか」という質問に対して、こう答えた。
 
「自分が今まで生きてきたなかで、そういうふうに物事を捉えたことはないです。常に自分が成長するために決断し、チャレンジしてきているので、ここで何を成し得るかは誰にもわからないので、成長することにこだわってやろうかと思います」
 
 安部の冒険は、まだ始まったばかりだ。
 
取材・文●山本美智子