川越投手コーチが上位進出の鍵を握る若手投手の現状と課題を語る

 24日現在でパ・リーグ最下位に沈むロッテ。打撃陣の不調に加え、先発ローテーション投手が相次いで離脱するなど、苦しい出だしとなった。そんな中、6年目23歳の二木康太投手や、5年目22歳の岩下大輝投手、中継ぎで好投している3年目20歳の種市篤暉投手ら、若手がアピールを見せている。昨年まで2軍投手コーチを務め、今季から1軍投手コーチに就任した川越英隆投手コーチに、若手投手陣について聞いた。

 二木は2016、17年シーズンに7勝を挙げたが、昨季は4勝にとどまった。17年の好成績で守りに入ってしまったことが昨季不振の要因だと川越コーチは見ている。

「もっと上を目指してやらなきゃいけないのに、今の状態を維持しようとしているように見えました。もっと上に行けるのに欲がない。『僕はちゃんとやってきました』という感じに見えたので『このままじゃ絶対無理だよ』と言いました。前の年と同じやり方では進歩がない。満足しているわけではないと思いますが、二木は『自分はこれでいいです』となりがちです」

 奮起を期待した今季だったが、開幕ローテーション入りを逃した。

「調子もいいとは言えなかったし、もっと上げてもらいたかった。開幕ローテーションに入れなくて、悔しい思いをしたと思います。ここまではいいピッチングをしてくれている。1軍にいて投げているからと守りに入らず、レベルを上げるために、いろいろなことにトライしてほしいです」

 昨季初の1軍昇格を果たし、初勝利も挙げた岩下は、17日のソフトバンク戦で6回1安打無失点と好投。早くも今季初勝利を挙げた。24日の西武戦では山川に2本塁打を浴びるなど6回4失点で今季初黒星を喫したが、故障が完治し、フォームが安定したことが大きいと川越コーチは好調の理由を話す。さらなる活躍が期待される今シーズンだが、岩下も開幕1軍を逃した。

「去年いい経験をしたので、今年は開幕1軍にいなくちゃいけなかった。それなのに、キャンプで見た時はボールも投球フォームも去年のいい時とは雲泥の差で『自主トレで何をやってきたんだ』と思いました。『これでは無理だな』と思いながら見ていましたが、やっぱり調子が上がってこなかった。『今年はいける』と思いながらやってきたところがあると思います。でも、そんなに甘くない。去年と同じ入り方をしたと思いますが、そこで失敗している。さらに上を目指さなくてはいけません」

 シーズン通して体力とメンタルを維持することが今後の課題になってくるという。

「1年間ローテーションを守るのが一番大変だと思います。そのため、疲れたら休んでしまいがちですが、その先を見ないといけない。そこでさらにトレーニングをすることで、その先まで行ける。二木同様、まだ若く伸びる時期なので、現状に満足せずに取り組んでほしいです」

開幕1軍の種市は「『これは伸びる』というのが第一印象でした」

 一方、開幕1軍を掴み取り、中継ぎとして好投している種市は、1軍で経験を重ねることで成長しているという。もともと持っているものが非常によく、初めて見た時に「育てないと責任問題だ」と川越コーチが感じたほどだ。

「『これは伸びる』というのが第一印象でした。ボールの質が良く、肩関節、肘が柔らかいのでフォームがしなやかで、いいボールを投げていました。体力強化など、基礎は2軍で作りますが、試合での経験、メンタルは高いレベルで投げていかないと身につかない。今、それを肌で感じながら1軍で成長できている。彼にとってはすごくプラスになっています」

 ここまで8試合に登板し2失点と結果を残しており、今後は先発での起用が予想される。

「中継ぎはいかにゲームの流れに乗れるかが大事ですが、先発は自分でゲーム作っていくので、気持ちの入り方が一番重要になってくる。最初は必死で、そこまで考えられないと思いますが、経験を重ねて、さらに成長してほしいと思います」

 さらに、ファームで実績を積んでいる投手が今後1軍に食い込んでくる可能性は十分にあると話す。ドラフト3位ルーキーの小島和哉投手は、プロ初先発となった4日の西武戦で2回8失点と打ち込まれたが「苦労したほうが絶対に伸びる」とエールを送る。

「僕もプロ初先発は2回ノックアウトでした。そういう話もしながら『誰もが通る道だ』と伝えました。プロのレベル、厳しさをすごく感じたと思う。初先発でメットライフドームの西武打線は厳しかったかもしれないけど、いつかは経験しないといけない。彼にとって、デビュー戦は一生忘れられないものになると思います。今後、10年先にどんなピッチャーになっているかわからないけど『このデビュー戦があってここまでになれた』と思ってくれるはずです」

 また、ファームで6試合に登板、5勝を挙げている土肥星也投手については「去年の後半から感じよく投げられていましたが、今年のキャンプの入り方もすごくよかった。今いい成績を残していますが『やっぱりそうだな』と感じています」と評価する。さらに、昨年右肘関節遊離体の除去手術を受け、リハビリを続けていた佐々木千隼投手も、3日のイースタン・ヤクルト戦で実戦復帰を果たした。

「思いのほか時間がかかってしまいましたが、順調に来ています。5球団競合のドラ1で、鳴り物入りで入ってきて、彼が1番悔しいと思う。何とか1軍でしっかり投げられるようにしていきたい。夏場くらいまでには出てきてくれるのではないかと思っています」

 ZOZOマリン特有の風の中での投球は、経験することで掴めるようになると川越コーチは話す。1軍のマウンドで成長を続ける投手陣の活躍が、ロッテ浮上のカギとなりそうだ。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)