お金の心配がない未来をつかむにはいったい何が必要なのでしょうか?(写真:victorflowerfly/PIXTA)

お金のことってなんだか面倒くさいと思う人……。または、お金をもっともっと知りたい人。お金が増えるのはどちらの人でしょうか? 持つべきものはお金の不安ではなく増やす勇気です。
国際テクニカルアナリストの横山利香氏の著書『お金を増やす勇気―貯金から投資へマインドチェンジする!』をもとに本書の主人公である31歳OLの大木マイコさんとともに解説します。

将来を考えるとお金のことが不安



(『お金を増やす勇気―貯金から投資へマインドチェンジする!』より。イラスト:森下えみこ)


お金に働いてもらえばいい


(『お金を増やす勇気―貯金から投資へマインドチェンジする!』より。イラスト:森下えみこ)


まずはライフプランを立ててみよう


(『お金を増やす勇気―貯金から投資へマインドチェンジする!』より。イラスト:森下えみこ)

Q: 一生にかかるお金はどれくらい?
A :ぶっちゃけ、最低1億円以上はかかる!

マイコさん:“なんとなく不安”の正体は、将来生活していくうえで、いろいろなことにお金がいくらかかるかわからない、足りるのかな?っていう心配なんですね……。

横山:生きるって、お金がかかることなの。だから心配なのは当然よ。日々の食費や光熱費はもちろん、人生の節目、節目にも大きな出費が待っているわ。

マイコさん:人生の節目というと……結婚に出産、マイホーム、子育て……とかですよね?

横山:そう。人生の節目となる出来事のことを一般的にはライフイベントと言ったりするわ。マイコさんは、子どもを何人か育てて、マイホームとマイカーを手に入れて、貯金をしながら家族旅行に行き、定年退職のころには住宅ローンを完済、蓄えと年金で悠々自適に暮らす、そんな将来像をイメージしているのかしら?

マイコさん:私も自分の親みたいな人生を送りたいと思っています! でも、周りからマイホームは高いから断念したとか、子育てにもお金がかかるから、本当は2人目が欲しいけど諦めたって話も聞くんですよね……。不安に加え、切なくなってきました。

一生に必要なお金は1億8000万円近く??

横山:まずは人生に必要なお金がいくらか、知ることが大切よ。自分のライフプランを立てて、いつ、何にどれくらいお金がかかるかを把握してみましょう。

ライフイベントにかかるお金はどれくらい?
結婚 約420万円
ゼクシィ「結婚トレンド調査2018」より
出産 約49万円
厚生労働省保険局「出産育児一時金の見直しについて」平成26年7月7日より
※厚生労働省令の基準を満たす出産では、出産育児一時金42万円が支給されます
マイカー 約180万円
+駐車場、税金、保険等、維持費も
ソニー損保「2018年 新成人のカーライフ意識調査」より
マイホーム 約3300万円
住宅金融支援機構「2017年度フラット35利用者調査」より
教育費 約1200万円/1人
文部科学省「平成28年度子供の学習費調査の結果について」、日本政策金融公庫「平成29年度教育費負担の実態調査結果」を参考に公立の幼稚園から高校、私立の大学に通った場合
介護 約510万円/1人
生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/平成30年度「リスクに備えるための生活設計(介護)」をもとに算出
老後 約4300万円/1人
世帯人数によっても異なります
総務省「平成29年 家計調査報告(高齢夫婦無職世帯の家計収支 2017年)」をもとに60〜90歳までの生活費を算出

横山:自分の老後の生活費も大切よ。60〜90歳まで生活する場合には約4300万円。でも、年金では足りない場合もあって、一般的には2000〜3000万円の備えが必要といわれているの。

マイコさん:一生に必要なお金は……げげっ、1億8000万近く! 生きるってお金がかかりすぎ……。

横山:ざっくりとした計算だから、実際はここまでかからないかもしれない。だけど、自分の稼ぎで足りるか不安になるのが普通よね。

22歳から60歳で定年退職するまでにかかる生活費は
1人 約7700万円
(平成29年総務省家計調査報告より算出)
ライフイベントにかかる費用をすべてプラスすると
一生にかかるお金の合計は……
約1億7700万円
Q: もしかして私は、親のように豊かに暮らせない……?
A :時代が変わったから、比べる意味はありません

マイコさん:老後までにもお金がかかりすぎるし、老後だってお金がかかるし……。やっぱり不安しかないです……。親世代は、どうしてあんなに裕福なんですか?

横山:国税庁が発表している『民間給与実態統計調査』をもとに作った30代後半の年収の推移を見てみると、団塊世代といわれるマイコさんの親世代が働いていた1970〜1990年代は右肩上がり。一方、マイコさんが働き始めた2000年以降は減少傾向にあるわ。

マイコさん:えーっと、最も高かった1997年(498.8万円)と2017年(442万円)を比べると……年収でマイナス約57万円。毎月の給料にしてみると、約4万7000円も減ってる! 確かに働き出してから潤っている感覚ってないんですよね……。

税金や社会保険料負担も増す一方だ

横山:そう感じるのはアナタだけじゃないはずよ。税金や年金、健康保険などの社会保険料が上がってきているから、たとえ収入が変わらなくても以前と比べると手取りの所得は減っているの。

マイコさん:え! 知らないうちに手取り額が減っているんですか!

横山:消費税も少しずつ上がっていて、2019年10月には10%に上がるという報道があったわね。買い物するたびに税金を払っているわけだから、同じ内容の買い物をしても、出費は増えているわ。

マイコさん:ううっ。またランチ代を節約しなくちゃいけなくなる……。子どものころから、一軒家に住んで、お父さんが運転する車で週末はお出かけ、毎年家族旅行をして、兄妹そろって大学に行かせてもらって……普通だと思っていたけど、今の時代、そんな生活は一部の人の話ともいえるのか……。


横山:高度経済成長期からバブル期にかけての日本は、上昇気流にのって物価もグングン上昇、給料もどんどん上がって、将来の収入の伸びが明確だったから、ローンも返せる。みんなイケイケだったわ。戦後のどん底がスタートだから大躍進よね。

マイコさん:数十年という短期間で先進国の仲間入りをしたんだから、スゴイ!

横山:そんな上昇気流の時代に比べると、今の日本は先進国として成熟しているといえるわ。バブル崩壊やリーマンショックがあったけれど、物価は比較的安定しているし。これがどういうことかわかる?

マイコさん:??

横山:時代とともに生活のベースが変わったということ。だから、親世代の生き方と比べること自体に意味がないの。戦後と違って今は食べる物に困らないし、車は買わずにリースできるようになったわ。ネットでポチっと買い物ができるし、わざわざ会いに行かなくてもメールやSNSでやりとりができる時代になった。経済の仕組みが大きく変わっているから、価値観も多様化していて、結婚や子育てを選択しない人も増えているわね。

マイコさん:ということは、人によっては一生にかかるお金は1億8000万円じゃないかも?

横山:正解! そこに気がつくことが大切よ。