遠藤の負傷で塩谷起用も、チャーチ氏は「中盤のスペースを明け渡してしまった」と分析

 日本代表は1日のアジアカップ決勝でカタールに1-3で敗れ、準優勝に終わった。

 前半12分、27分と相手のスーパーゴールによって2点のビハインドを背負い、後半24分にMF南野拓実(ザルツブルク)の今大会初得点で反撃の狼煙を上げたが、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定でDF吉田麻也(サウサンプトン)がペナルティーエリア内でのハンドを取られてPKを献上。1-3とリードを広げられ、通算5度目の決勝で初めて黒星を喫した。

 かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップを6大会連続で取材した英国人記者のマイケル・チャーチ氏がカタール戦を分析。森保一監督の開始30分間の戦術と、中盤でスクランブル先発となったDF塩谷司(アル・アイン)の機能不全ぶりにクエスチョンマークをつけている。

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 2大会ぶりの優勝を果たせなかった日本だが、今回はカタールが勝者にふさわしかった。試合開始30分間の森保監督の戦術はあまりに酷く、塩谷の低調ぶりは目に余るものだった。

 この30分間で、日本の5度目のアジアカップ制覇の夢は完全に潰えた。スピードと決定力で上回るカタールに蹂躙されてしまった。

 準決勝でフィジカルに優れた難敵イラン相手に素晴らしい試合を見せたが、カタールの衝撃的なスピードに対抗できなかった。日本の中盤のバランスの欠如をあぶり出したフェリックス・サンチェス監督率いるカタールでFWアクラム・アフィフが輝く一方、森保監督は選択肢を失っていた。

 MF遠藤航が故障で欠場し、森保監督は塩谷を送り込む以外に手段はなかった。だが、日本の栄冠を阻み、カタールの初優勝を許す決定的な采配となってしまった。

 日本の中盤が抱えていた脆弱性は明白だった。塩谷を蹂躙することで、カタールは優位性を手にした。MF柴崎岳がMF南野拓実の前方で空けたスペースにしばし突出するたびに、塩谷は中盤で晒された。アフィフとMFアブデラジズ・ハティム相手に孤独な戦いで圧倒され、日本は自陣でスペースを明け渡してしまった。そこから日本は危機を迎えていた。

前半30分間の2失点は「挽回不能な致命傷」 両監督の戦術と采配の違いを指摘

 守備陣も不振だった。特に先制点の場面が痛恨だった。FWアルモエズ・アリがボールを受けた際、DF吉田麻也はマークが甘かった。大会史上最も成功したストライカーに衝撃的なオーバーヘッドキックを許す原因となった。ユースレベルから磨いてきたカタール攻撃陣のスピードと連携も、日本守備陣にとっては手に余るものだった。ハティムの見事なミドルシュートにも、もはや驚きはなかった。

 前半残り15分から、日本は反撃に出た。後半30分までに9回のコーナーキックを手にしたが、カタールGKサード・アルシーブは一度もセーブする機会はなかった。

 後半24分、南野の美しいゴールで日本は反撃の狼煙を上げたが、それもすぐに潰えた。吉田のペナルティーエリア内でのハンドが無情にもPKと宣告された。これで試合は終わった。ラブシャン・イラマトフ主審の判定に同意しない人間がいたとしても、アジアのどの人間もこの試合結果に納得しない者はいなかったのではないか。

 日本はダイナミックな中盤を中心とした攻撃で、準優勝にふさわしい力を見せつけた。守備の組織力も素晴らしかった。だが、頂上決戦で明暗を分けたのは両監督の戦術と采配だった。あの30分間が日本にとっては返す返すも惜しまれる。挽回不能な致命傷を負ってしまった。(マイケル・チャーチ/Michael Church)