家族で楽しい外出になるはずの一日が悪夢へと変わった。このほどスペインで、両親と出かけていた2歳児が突然姿を消した。男児は深さ100メートルほどの古井戸に転落してしまい、現在も救助隊らが不眠不休で救助活動に尽力している。『BBC News』『New York Post』などが伝えた。

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1月13日、スペインのマラガ東部のトタラン近くにある井戸に2歳男児が転落する事故が起こった。2歳のフレン・ロセロ君(Julen Rosello、一部報道ではユレン/Yulenとも)は、父親ホセさんや母親ビクトリアさんと一緒に出かけており、両親が昼食を準備している間にふらりと出てしまったようだ。その後、いなくなってしまったフレン君を捜した両親は、古井戸を見つけ「ここに落ちたに違いない」と確信した。

男児の救出に駆けつけた救助隊らは、直径わずか25cmしかない井戸の穴に本当にフレン君が落ちたのかを確認するため、井戸の中から土や瓦礫を掻き出す作業を行い、その中に混じっていた毛髪をDNA鑑定にかけた。すると普段フレン君が使用していた飲み物のボトルから採取したDNAと一致したことから、フレン君は間違いなく深さ100メートルほどの井戸に落ちたことが確認された。

フレン君の救出活動には、スペイン北部とスウェーデンからの鉱山の救出専門家チームが呼び寄せられた。スウェーデンのチームは2010年にチリのサン・ホセ鉱山で起こった落盤事故でも、アタカマ砂漠の地下に生き埋めになっていた33人の鉱山作業員らの居場所を正確に位置づけ、33人全員を救助した功績があるという。彼ら専門家らは、フレン君が井戸に落ちた際に土や瓦礫なども一緒に崩れ落ちていると推測しており、とにかく井戸の土を掻き出す作業から始めた。またカメラを使って、穴の中の様子を確認する作業も行われている。しかしその穴にカメラを送り込むことも、困難と危険を伴う。中の様子を探る時にも、万が一周りの土が崩れてフレン君が生き埋めになってしまわないようにと慎重にならざるを得ない。

やがて救助隊らは、深さ73メートルほどの地点にお菓子の小さな袋とプラスチックのカップがあることをカメラで確認した。現在、フレン君は深さ80メートルの地点にいるとみられている。何より重要なのは、フレン君の位置を正確に特定することであり、フレン君が井戸に落ちたとされる13日から、救助隊員らはまさに不眠不休の救助活動に尽力しているが、現時点ではフレン君が井戸の中で生存しているという兆しは見つかっていない。

1月16日には、井戸に平行したトンネルと、フレン君がいるとされる場所に到達するように丘の勾配を利用した水平のトンネルを掘る作業が始まったものの、土砂崩れが酷く作業は難航。17日には水平のトンネルを掘ることを断念し、トンネルの両サイドに2つの穴を掘り、そこから井戸に繋がる横穴を作るという作戦に切り替えられたようだ。

実は1か月前にこの井戸で作業をした人物は、井戸を塞いだと主張しているが、穴はそのまま開いた状態になっていたようだ。ホセさんは「息子が井戸に落ちてしまった姿をはっきりと頭に描くことができる」と言い、メディアの前で涙ながらにこのように語った。

「もう何か月も待っているという感じがしています。息子はきっとまだ生きているという一縷の望みを捨てずにいます。」

実はホセさんとビクトリアさんは、2017年にも子供を失っていた。一家が暮らす地域の住民の話によると、家族一緒に地元のビーチへ散歩に出かけていた時に、息子のオリバー君(当時3歳)が突然、心臓に問題が起こり息を引き取ってしまったという。オリバー君の死からまだ2年も経っていないうちに今度はフレン君がこのような事故に巻き込まれた。ホセさんは「天使が息子を生きてここに返してくれることを願っています。諦めていません」と語っており、現在もフレン君発見のために懸命の救助活動が続いている。

画像は『BBC News 2019年1月16日付「Spain Totalán search: Hair found in search for boy in well」(EPA)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)