ファーウェイは2018年、スマートフォンにおいて怒濤の新製品ラッシュを行い、低価格モデルからハイエンドのモデルのラインナップを一新させている。

特に、昨年はauを皮切りに、NTTドコモ、ソフトバンクといった大手キャリアとの協業で市場をさらに拡大した。

11月には最新鋭のチップセット「Kirin 980」を搭載したフラグシップスマートフォン「HUAWEI Mate 20 Pro」を発売。SIMフリー版の販売価格は11万1880円(税抜)、今やハイエンドスマートフォンは10万円超えが当たり前となった。

ソフトバンクもMate 20 Proを120,960円(税込)で取り扱っており、24回/48回の割賦払いによる購入も可能だ。大容量データプランと合わせて、ヘビーに使うならこうした選択肢もありだと思う。

このMate 20 Proは、
次のファーウェイ製品に繋がる技術を先取りして搭載したスマートフォンである。

スマートフォンのカメラ機能のスタンダードになり得る可能性を秘めているので、その機能について紹介していきたい。

Mate 20 Proのカメラは、
・ライカ監修の3つのカメラからなる「トリプルカメラ」
・AIによるシーン認識
この2つを搭載する。

AIカメラは、ハイエンドスマートフォンでは当たり前となりつつある。
この分野は被写体として認識する対象や精度、速度などカメラの使い勝手や画質に関わる部分であり、新しければ新しいほど良いものになるという成長分野である。




このAIは、チップセットにも機械学習によって正しい応答をする「NPU(Neural network Processing Unit)」として組み込まれており、その使い方は、ユーザーの癖の学習や、節電、使い方アシストなど、カメラ以外でも利用されている。


いまや最新ハイエンドスマートフォンは、必要なパーツだけを寄せ集めて作ったものではない。メーカー独自の研究開発が反映された集大成の製品なのだ。

ハイエンドモデルに搭載された技術は、やがて廉価モデルにも落とし込まれる。
当然、ミドルやローエンドのモデルの性能や品質の向上も加速する。
今後、自社でAIなど研究技術を持たないメーカーは価格以外では勝負できなくなってしまうことになりそうである。





Mate 20 ProのAIカメラは、人物、ペット、風景など綺麗に写したい被写体や、逆光や雪山、ビーチなど露出が難しいシーンを認識し、ブレの少ない適正な明るさで撮影し、ライカの色彩や空気感を反映させる働きをする。

Mate 20 Proは、これまでのライカカメラを搭載してきたファーウェイのスマートフォンと比べても、
「人間が見たままのイメージをそのままライカ画質で記録できる」
カメラに進化しているように思う。




・逆光や曇天のシーンでも白飛びや暗くなりすぎない
・極端に誇張されたHDR(ハイダミックレンジ)風になっていない

こうした露出制御と味わいの追加で、デジタルカメラの理想的な写りになっていると感じた。


Mate 20 Proカメラのもう一つの特徴は、トリプルカメラだ。
これまでのファーウェイは、
・カラーイメージセンサー
・モノクロイメージセンサー
この2種類による独自のダブルレンズカメラシステムを構築してきた。

・モノクロメージセンサーで階調と解像感を確保
・カラーイメージセンサーの色情報を加える
この方式で、暗所での撮影に強みを発揮するとともに、人の目のように二眼で捉えた視差のズレから距離情報を割り出して、ピント位置を後から指定してボケを加えるという画期的な「ワイドアパーチャ」機能を実装してきた。

しかしながら、今ではグーグルのスマートフォン「Pixel 3」などシングルカメラでも深度情報を得ることが可能となった。

つまりダブルレンズカメラは逆にコスト増に繋がりかねない状況になりつつある。高速演算可能なチップセットとAIが、シングルカメラの性能を引き上げて行くことになるだろう。

ファーウェイ以外にも、2つのカメラを搭載したモデルは他社も研究開発しており、
・アップルの「iPhone 7 Plus」の標準レンズと望遠レンズ構成
・LGエレクトロニクスの「V20 Pro」、「isai Beat」の標準レンズと広角レンズ構成
など、各社とも個性を打ち出してきている。

ベースはシングルカメラとサブカメラという位置づけだ。これはファーウェイのダブルレンズカメラとはことなる方式である。


そこでファーウェイは、従来のダブルレンズカメラに望遠カメラを追加した「HUAWEI P20 Pro」を発売する。
ライカカメラ+AI+標準/望遠レンズ
というトリプルカメラという構成で高い撮影能力をアピールした。

しかしMate 20 Proに搭載するトリプルカメラは、P20 Proとは異なるアプローチだ。

というのも、従来のカラーイメージセンサーとモノクロイメージセンサーによるダブルレンズカメラを捨てて、シンプルに
広角レンズ+標準レンズ+望遠レンズ
というシングルカメラ3台による三眼構成としているからだ。



望遠レンズならイベントの撮影にも最適だ(撮影協力:東京アイドル劇場、Girls Live Project)



ポートレートモードでは、点光源のボケの演出が新しくなった


もちろんこれまでのダブルレンズカメラによるワイドアパーチャ機能が使えなくなったわけではなく、その機能はしっかりと継承している。さらに、動画撮影時に人物以外をボカしたりモノクロ背景にしたりするなど、高い処理能力を活かして撮影機能がアップしているのである。

このように新チップセットKirin 980とパワフルなISP(Image Signal Processor)よって画像処理に関するパフォーマンスが上がり、シングルカメラでもこれまで以上の高機能・高画質なカメラに進化しているのである。


標準レンズ(35mm判換算27mm)



広角レンズ(35mm判換算16mm)



望遠レンズ(35mm判換算81mm)


カメラがシングルカメラ×3という構成になったことで、広い範囲が撮影可能な広角レンズから離れた被写体を大きく写せる望遠撮影まで可能な理想的な製品に仕上がっている。

そう、これまでの他社にはないカメラを作り上げたのである。

広角レンズには広角レンズ独特の遠近感がある。
標準レンズで同じ広さになるように撮影しても、広角レンズの迫力を出すことは難しい。一方で、写り込む範囲が狭まる望遠レンズは被写体を引き立てたいときに役立つ。

従来のスマートフォンでも撮影テクニックによって、一種類のレンズでも被写体を大きくも小さくも撮影できるが、レンズの“違い”による映像表現はできない。

そういう意味では、撮影領域の拡大は、写真表現の拡大をもたらす。
Mate 20 Proは、そんなカメラへと進化したのである。

Mate 20 Proは、汎用性の高い撮影料域への拡大が狙いだが、ライカにはちょうど3焦点のレンズ「Tri-Elmar28-35-50mm/f4 ASPH」がある。今後の製品展開では、こうしたライカの世界感の再現にも力を入れて欲しいところである。

トリプルレンズカメラは、広角から、標準のカメラ、そして望遠撮影を可能とすることでカメラ機能を重視したモデルの差別化となる要素だ。

この取り組みは、今後カメラに力を入れたハイエンドモデルのスタンダードになり得るのではないだろうか。


執筆  mi2_303