1億円なんて、あまりに数字が大きすぎて、自分には程遠いものと思うところだが、年収400万の平凡な会社員でも可能だった! どんな方法なら貯められるのか、実際に1億円をつくった人はどんな人なのか。

■収入の3割を貯める生活とは

資産形成には4つの要素が関係しています。(1)収入、(2)収入の何%を貯蓄するか(貯蓄率)、(3)何%で運用するか(運用率)、(4)運用する期間。この組み合わせ次第で、結果が変動するのです。

年収400万円の人が1億円をつくる場合には、貯蓄率が非常に重要な要素となります。1割では40年間貯蓄を続けても1600万円にしかならず、到底1億円には手が届きません。しかし、収入の3割を貯蓄できれば、40年で4800万円貯まる。これなら運用率次第で1億円も夢ではありません。

とはいえ、年収400万円の家計で貯蓄率3割を目指すのは簡単ではありません。しっかりと家計管理を行い、固定費をはじめとするムダを徹底的に削減する必要があります。当社の顧客でも、貯蓄できている人は、携帯電話ではなくPHSを、スマートフォンも格安スマホを使っています。なかには、月々の食費を1万5000円に抑えて、資産を築いた家族もいます。話を聞くと、食材はもやしを中心にし、肉はミンチのみ。牛乳や調味料などは、いつ、どの店が安いかを調べ、そのときに購入する。家計を徹底的に管理してこそ、なせるワザです。ただし、節約メインで資産を築くことは、デフレの時代だからできたこと。この先も同じことができるとは限りません。

次に運用率ですが、これは高ければ高いほど早く資産を増やせます。仮に、年収400万円のうちの3割、月々では10万円を運用に充てたとしましょう。年率1%の場合には、40年間運用しても5866万円と1億円には届きません。しかし、年率5%で運用できれば、34年で1億円になります。5%の運用率は、国際分散投資を行えば実現できない数字ではないでしょう。

ここで4つ目の要素である期間が関係してきます。運用期間が40年あるならともかく、20年なら、同額を年率5%で運用しても、手にできる資産は3968万円にすぎません。20年で1億円をつくるには、年率14%で運用することが必要になります。これは現実的な数字とは言えないでしょう。

■「貧乏サイクル」から、脱却する方法

では、どうすればいいのでしょうか。解決策は、運用期間を延ばすか、現実的な運用率で運用するか、貯蓄率を上げるか、収入を増やすかです。

写真=iStock.com/Rawpixel

まず、期間から見ていきましょう。40〜50代の人の多くは、「運用期間が限られているから、1億円なんて無理だ」と思うかもしれません。しかし、いまは国が65歳以降も働き続けることを推奨する時代です。40歳の人が70歳まで働けば、30年運用できます。

といっても、株式や投資信託、外債などの値上がり益(キャピタルゲイン)を狙う証券投資では、価格に上がり下がりがあり、利益を得られるときもあれば、反対に損失を被るときもあります。常に5%程度のリターンを狙えるわけではありません。しかし、価格が割安なときにしっかり仕込むことができれば、5%や10%のリターンも不可能ではありません。日本株を例にすると、アベノミクス直前の株価が安いときに仕込んでいれば、今ごろ大きな利益を手にできていたでしょう。ところが、多くの人は、株価が上がってから投資を始め、高値づかみをします。株価が下がって損をすると怖くなって、株式市場から退場する。また株価が上がると「リベンジ」とばかり高値づかみをし、また損をする……。私たちは、前者を「金持ちサイクル」、後者を「貧乏サイクル」と呼んでいます。

過去を振り返ると、概ね5〜10年のサイクルで好景気と不景気が繰り返されています。運用期間が30〜40年あるなら、少なくとも3〜4回は不景気がくる計算です。この波に乗れるかどうかが、1億円をつくれるか否かの鍵になります。金持ちサイクルにある人は、好景気のときにはしっかりと元金を貯め、不景気のときに投資をする。そして、好景気に売却して、不景気(=投資タイミング)を待ちます。チャンスが到来したときには躊躇わずに投資をするのです。これに対し、貧乏サイクルに巻き込まれている人は、好景気に消費と投資をし、不景気に損失を膨らませてしまいます。まずは、ここから脱却することが重要です。

資産が増えてきたら、主にキャピタルゲインを狙う証券投資から、賃料収入などインカムゲインも得られる不動産投資などに歩を進めるといいでしょう。ただし、業者が「節税」や「保険代わり」と勧める物件は避けたほうが無難です。「投資しても儲からない」と言っているのと同じだからです。

最後に、そもそも論になりますが、収入を増やすことも考えたいところです。妻が専業主婦ならパートに出る、パートタイマーなら正社員になることで、家計の収入が増えます。1日も早く貯蓄と運用を始めることも重要です。年を取りすぎてから1億円を手にしても、楽しんで使うことができない可能性が高いからです。

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年収400万で3億2000万円貯めた男が絶対譲らなかった「結婚の条件」
御発注さん
神奈川県在住の会社員。誤発注した経験を戒めも込めて現名でツイッターを発信。

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はじめは何の知識もなかった僕ですが、社会人になって17年目の現在、株式投資と節約だけで3億2000万円の資産を持てました。勤務先は製造業で、高給取りでもありません。資産1億円を達成したのは33歳のときですが、当時の年収は400万円台です。

amanaimages=写真

お金を貯めようと思ったのは、会社を辞めたい一心です。入社早々、自分が会社勤めに不向きであることを悟った僕は、2000万円くらい貯めたら生活費の安い海外でリタイア生活を送ろうと決めたのでした。

節約のために会社の寮に住み、朝は食べず、昼は社食、夜は毎晩自分でスパゲティを茹でて食べる。1年間で120万円貯めました。あるときボーナスが出たので外食しようと「リンガーハット」に行ってみた。そこで株主優待のチラシを手にしたのが、株との出合いです。株主優待や配当を得られれば、生活費がかなり抑えられる。そこで収入の大半を株につぎ込み、入社4年目で当初の目標額の2000万円を達成。ところが2006年のライブドア・ショック、08年のリーマン・ショックで約1300万円を失います。精神的なダメージを受けましたが、あきらめずに投資と節約を続けました。

僕の信条は「毎月出ていく固定費をいかに抑えるか」ということなので、08年に結婚したときは、「社宅か、お互いの実家以外には住まない。それでよければ結婚してくれ」と言ってプロポーズしました。妻がOKしてくれたのは、大学時代からのつきあいで僕の性格をよく知っていたからでしょう。

いまは親子4人、妻の実家暮らしで、毎月4万4000円を水道光熱費代や駐車場代として入れています。家族ができたことで目標は1億円にグレードアップしましたが、これを達成してからは毎月定額で株を買うのをやめ、あとはひたすら貯蓄することに。実は入社10年目にして、生活はすべて配当金と株主優待で回るようになり、給料をまるまる貯蓄できるようになったのです。それでもいまだに僕は生活費にお金をかけたくない。今着ているワイシャツは紳士服の「はるやま」の優待でもらったもの。ズボンはドン・キホーテで3000円で購入。カバンは就活のときに買ったもの。

毎月決まって出ていくお金は、絶対に低く抑えること。それができればたぶん誰でもお金が貯まると思います。

あんなに辞めたかった会社ですが、「いつでも辞められる」と思うと、ストレスでなくなってきました。勤続20年までは続けようかと思っています。

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藤川 太(ふじかわ・ふとし)
ファイナンシャルプランナー
生活デザイン代表取締役。2001年に家計の見直し相談センターを設立以来、2万世帯を超える家計診断を行ってきた。著書多数。
 

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(ファイナンシャルプランナー 藤川 太 構成=大山弘子、長山清子 写真=amanaimages、iStock.com)