味噌カツに天むす、モーニングと聞いて「ああ、名古屋名物だね」と思った方、多いのではないでしょうか。しかし、実はこれらは名古屋発祥ではないというのが事実のようです。今回の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では著者の佐藤きよあきさんが、なぜ、名古屋のご当地グルメには名古屋発祥でないものが多いのかを探るとともに、そこから学べるビジネスのヒントを紹介しています。

発祥じゃない? 名古屋ご当地グルメの秘密

愛知県名古屋市と言えば、どんなご当地グルメを思い浮かべるでしょうか。

「味噌カツ」「天むす」「モーニング」「ういろう」「味噌煮込みうどん」「エビフライ」「きしめん」「カレーうどん」……。

他の地域ではあまり見掛けない独特なグルメが有名で、観光資源として、町おこしの一翼をしっかりと担っています。

しかし、これらのご当地グルメ、実は名古屋発祥ではないのです。ご当地グルメとして紹介されているので、見た人が勝手に“名古屋発祥”だと思い込んでいるのです。

たとえば、「味噌カツ」は三重県津市のお店が発祥であることが特定されています。「天むす」も三重県津市の天むす専門店で、昭和30年代初めに発売されたことがわかっています。「モーニング」と言えば、名古屋を中心に岐阜県にまで広がっていますが、同じ愛知の一宮市か豊橋市が発祥だという説があります。また、広島県の喫茶店が発祥だとする説もあります。「ういろう」は、神奈川県小田原市発祥であることが、ほぼ間違いないとされています。ただし、福岡県説も残っていますが。

名古屋と言えば、笑いのネタにもなる「エビフリャ〜」が有名ですが、こちらは東京の洋食店で誕生したものです。「カレーうどん」は、東京のそば屋さんが発祥ですが、「名古屋カレーうどん」という、若干言い訳のような名称で呼んでいます。

「味噌煮込みうどん」は、愛知県一宮市。「きしめん」は、愛知県刈谷市あるいは知立市と言われています。これらは、同じ愛知県内なので、目立つ名古屋で広まったので、自然なことなのかもしれません。

このように、名古屋のご当地グルメとして有名なものは、他の地域で誕生したものが多いのです。こういう言い方をすると、名古屋はパクったものをご当地グルメとして売り出している、と思われるかもしれませんが、これはビジネス的観点からすると、正当な戦略なのです。流行りそうなものを探し出す嗅覚が優れているのだと言えます。これは、どんなビジネスの世界でも共通している基本なのです。

パクリだと批判することはできません。マネして広がっていくのは、自然なことです。そのグルメが、他の地域でも受け入れられるほどの力を元々持っていたということです。

ただし、名古屋で広まったこれらのグルメは、お洒落でもなければ、繊細でもありません。どちらかと言うと、飾り気のない庶民的な味です。叱られるかもしれませんが、このB級感が名古屋の人に合ったのでしょう。気取ったものを好まない性分なのではないでしょうか。

では、こうしたグルメが、なぜ名古屋発祥だと思われたのでしょうか。それは、“イメージの植えつけ”なのです。ただし、誰かが策略したのではなく、マネする文化によって爆発的に広まったことで、「名古屋と言えば○○」というイメージができ上がってしまったのです。

「味噌カツ」のお店がたくさんできることで、「名古屋=味噌カツ」というイメージが定着し、その情報がマスコミなどに流れます。すると、見た人が勝手に、味噌カツの発祥は名古屋だと思い込むのです。名古屋には、そうしたグルメがたまたま多かったのではないでしょうか。

ご当地グルメが無くて困っている地域は、この方法を試してみても良いかもしれません。ただし、まずはご当地の住民に受け入れられることが肝心です。地元に定着していないものは、ご当地グルメとは言えませんから。

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