2019年の巨人軍コーチングスタッフが発表され、外野守備走塁コーチの就任が決定した「代走のスペシャリスト」鈴木尚広さん。入閣決定直前に、独占インタビューを行った。

前回の記事では2016年の引退からコーチに就任が決定するまでの2年間について語ってもらったが、今回は鈴木尚広さんの考えるプロ野球論、コーチング論について聞いた。

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メンタルが強くなければ技術は身につかない


「引退して2年、解説や講演の仕事をしてきましたけど、どんな仕事でも常に緊張感はありました。一発勝負ですからね。ただ、野球選手として緊張感の中でプレーしてきたので、緊張状態の中でも上手く対処することはできたかなと思います。」

「なので、成長の度合いは速かったですね。最初の方は全然話せなかったですけど、今は非常に落ち着いて話せるようになりました。やはり、緊張感のあるところじゃないと成長は生まれないんだと思います。僕は勝負の世界で生きてきたので、特にそういった緊張感を求めているのもあるんでしょうね。今やっている仕事、例えば講演の場合は、評価のポイントがどこにあるのかもわからない。野球だとアウトとかセーフとかわかりやすいですけど。わからないからこそ本気になってやって、みんなに満足してもらえる、また呼んでもらえるよう、緊張感を持って臨んでいます。」

「自分のパフォーマンスを出すということがファンを動かすと思うんですよ。自己主義になればいいのか、利他主義になればいいのか難しいですけど、でも、自分を追い求めなければ人のために動けない。代走であれだけ皆さんに応援してもらいましたけど、『ファンのためにやっていますよ』ってことなら、あんなに応援してもらえたかわからないですね。たぶん、僕の生き様だったり、背中だったり、戦いぶりだったりを皆さんが評価してくれて、声援してもらえたのかなと思っています。」

「ファンの心を揺さぶらないといけない仕事なので、プロ野球では普通のメンタルではダメでしょうね。技術があってもメンタルがなければ結果は出せないです。そもそも、メンタルが強くないと技術は身に付かないですよ。技術が上がるというのは、自分が何かを追求しているということ。追求しない限り、技術は上がらない。失敗を糧にしようとか、そういう気持ちがなければ。落ち込んでいたって何にもならないし、誰も助けてくれない。プロ野球選手は孤独だけど、だからこそ養えるメンタリティもある。スランプとかだってメンタルの問題ですよ。僕はスランプなかったですけどね。そんなに打席入っていないから(笑)。とにかく、心の在り方ひとつなんですよ。」

「人から言われたことだって、それを『やる』と決めるのは自分自身の気持ち。僕が何かいうことによって、何かに気付いてもらえたら、話した甲斐があるのかな。もちろん技術も必要ですが、そこに向かうためにも心が大事。そうしないと勝負は勝てないですよ。若い選手にもそう伝えていきますよ。」

選手と一緒に考えていきたい。二人で本気になれば絶対にいいものができる

「プロである以上、上手くなりたければうまい人に聞きにいくべきなんですよね。その意識がなければ必要ない。厳しい言い方だけど、プロは厳しい世界なので。僕が現役の頃も、聞きにきてくれた人にはちゃんと応えるようにしていました。ただ、教えすぎないということもポイントで、考えさせることも重要なんですよ。自分が何をすべきかまず自分で考えて欲しい。自分から答えを探しにいかないと。周りの人は色々と与えてくれるけど、逆に迷う材料にもなりますからね。僕の場合は自分というものをも確立していたので、貫いたところもあります。当然、教えられているコーチの話は聞きますけど、自分に合うもの合わないものはありますからね。そこは分けて考えるようにしていました。」

「コーチというものは、選手の今すべきことの能力を引き出してあげることが仕事だと思っています。コーチと選手という立場になると、立ち位置ができてしまうけど、僕の中ではそうじゃなくて、一緒に考えて探していきたいと思っています。僕ももちろん知らないことはありますし、でも二人で本気になれば絶対にいいものができると思うんですよね。「やれ」ではなく「どうやるべきなのか」を考えていきた。個性を引き出すことが大事だし、一緒になって考えることは恥ずかしいことじゃない。時には厳しく言うことも大事ですが、枠にとらわれる必要はないかなと思っています。」

「僕もスイッチヒッターで内野手をやったり外野手をやったりしていましたが、周りに何を言われても気にしなかったですね。納得しないと仕事はできないし、現状自分はそう言う立ち位置だから配置転換とかもあるわけで。現状を受け入れないといけないところもありますよ。それをなくすためには、自分が成長して自分の存在価値を上げていくしかないです。」

コーチ就任の速報。来年にかける思いと決意

 インタビューの途中、鈴木尚広さんの巨人軍コーチ入閣決定の速報が入った。

「現役時代に一緒にプレーをした選手たちも多くいるので、楽しみですね。僕はたぶん三塁コーチになると思います。自分の足で行けると思う尺度と、選手の尺度はそれぞれ違うから、難しいですね。でも、そこはまず失敗していくしかないですね。失敗して、学んでいくしか。」

「球場を沸かせられる選手を育てていきたいですよね。若手の選手を、僕らがどうやって伸ばしていくか、育てていけるか。これは一年や二年で解決できる問題ではないかもしれないですが、一日でも早くそういった選手を育て上げたいです。」

「僕みたいな『代走のスペシャリスト』なんていらないんですよ。吉川尚輝にしろ重信慎之介にしろ、まだまだそこに収まって欲しい選手じゃないです。彼らが目指すのはレギュラー。毎試合毎試合ピッチャーにストレスを与え、内野にプレッシャーをかけ、キャッチャーに考えさせ、外野手を焦らせるというのが何よりも大事なんです。僕は最後に行き着いたところが代走で、むしろレギュラーから離れていった人間なので。だとすると、まだまだ彼らはそこにこだわって欲しいという思いは当然あります。もちろん、代走というのは原監督の必要とするポジションになるかと思うので、そういう選手を育てなければならない。ただ、思いとしてはレギュラーとしてやって欲しい。ただ、レギュラーに定着できなかった時に、自分の強みを生かして生き残れるような能力を身につけて欲しいです。」

「来年からは2年ぶりにジャイアンツのユニフォームを着てグランドに戻ります。引退してから出会った多くの人との対話や経験から培ってきた引き出しを活用して、若手選手に技術やメンタル面を伝えていくたいですね。特にこれからは走塁の意識を徹底しながらやっていきますので、期待していてください。応援、よろしくお願いいたします。」

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

鈴木 尚広(すずき・たかひろ)

1978年4月27日、福島県相馬市生まれの40歳。相馬高から96年ドラフト4位で巨人入団。俊足好打でチームに貢献し、16年に現役引退した。代走で132盗塁は日本記録。盗塁成功率は.829で200盗塁以上の選手では最も高い。通算1130試合出場で打率.265、10本塁打、75打点。身長180センチ、体重78キロ。右投両打。
公式サイト https://suzukitakahiro.com/