借金の「保証人」と「連帯保証人」の違いについて先日、SNS上などで話題になりました。親などから「連帯保証人になるよう頼まれても、引き受けてはいけない」と言われた経験のある人も多いと思いますが、そもそも「保証人」とはどのような制度なのか、また「保証人」との違いは何なのか、正しく認識していない人が多いようです。SNS上では「正直よくわかってない」「何のためにこのシステムがあるのか」「義務教育で教えるべき」などさまざまな声が上がっています。

 保証人と連帯保証人には、どのような違いがあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

連帯保証人には「抗弁権」がない

Q.そもそも保証人制度とはどのようなものでしょうか。

牧野さん「保証人が、主たる債務者(例えば、借金をした人)がその債務を履行しない場合(借金の弁済をしない場合)に、その履行をする責任を負う(民法446条)『保証契約』をいいます。保証人は、債権者(例えば、金銭の貸し主)と保証契約を締結することになりますが、書面か電子データで締結しないと口頭の合意のみでは法的な効力がありません」

Q.保証人が支払いを肩代わりした後はどうなりますか。保証人は借り主に請求できるのでしょうか。

牧野さん「保証人が、債権者に対して債務を弁済した場合(つまり肩代わりをした場合)であっても、保証人は債務について最終的な責任を負うものではありません。従って、主たる債務者に対して求償(一時的に負担したお金を返してくれと請求すること)ができます」

Q.「保証人」と「連帯保証人」の違いは何ですか。

牧野さん「『保証人』と『連帯保証人』では大きく異なります。

保証人は、債権者(例えば、金銭の貸し主)から支払い請求を受けた場合、まず主たる債務者(例えば、借金をした本人)に請求や取り立てを行うようにと請求を一旦拒否することができます(民法452条、453条)。これらを法律用語で『催告の抗弁権』『検索の抗弁権』と呼びます。

しかし、連帯保証人の場合には、これらの抗弁権がないので(民法454条)、債権者は連帯保証人に対して直接に支払いを請求することができ、連帯保証人は支払いを拒否することができません。連帯保証人は、借金をしているわけではないのにあたかも自分が借金をしたかのように支払い義務を負うことになります」

Q.保証人や連帯保証人を引き受ける場合、意識すべきことはありますか。

牧野さん「恐ろしいのは、世の中で求められている保証のほとんどが連帯保証であることです。多くの場合、保証人になるということは連帯保証人になることであり、借金などをした本人と『運命共同体』になることであると認識しておくべきです。それは、自分が借りてもいないのに借金などの返済の義務を負うことになり、あるだけの財産から根こそぎ取り立てられることを意味します。

実際、会社や個人事業主が事業目的の融資を受ける場合に、事業に関係のない親戚や友人などが気軽に連帯保証人になってしまい、多額の債務を背負って自己破産するケースが増えています。2020年4月1日から施行される改正民法では、個人が事業用の融資の保証人になる場合、公証人役場で公証人による保証意思の確認手続きが必要とされます。

連帯保証人となるには、公証人役場に行かなければいけないということで、債権者も連帯保証人側も事の重大性を認識することが期待されています」