白熱の決勝を延長10回タイブレークで制する

 宮崎市内で行われていた「第12回 BFA U18アジア選手権」は10日、大会最終日を迎えた。決勝戦では韓国と5大会ぶり2度目の優勝を目指したチャイニーズ・タイペイが激突。延長タイブレークにもつれ込む大激戦の末、韓国が7-5で勝利を収め、2大会ぶり5度目の優勝を掴んだ。5度の優勝は日本と並び最多タイとなった。

 侍ジャパンU-18代表が中国と戦った3位決定戦から約2時間半後、韓国とチャイニーズ・タイペイによる決勝戦は序盤から大激戦となった。チャイニーズ・タイペイが先制すると、すぐさま韓国が同点、そして勝ち越し。再びチャイニーズ・タイペイが逆転し、韓国が同点に。一進一退の攻防は9回で決着がつかず、延長タイブレークにまでもつれ込んだ。

 結果的には延長10回に2本のスクイズと相手守備陣の乱れなどで4点を挙げた韓国が、その裏のチャイニーズ・タイペイの反撃を2点に凌いで逃げ切り勝ち。白熱の接戦を制してアジアの頂点に立ったのだが、決勝を戦った両チームともに実力はハイレベルだった。

 チャイニーズ・タイペイの先発はリ・チェンシュン。“台湾の大谷”と称される16歳は3回途中で降板したものの、最速150キロをマークするなど、前評判に違わぬポテンシャルの高さを伺わせた。韓国の4番キム・デハンは、この右腕の150キロを弾き返し、逆方向の右翼スタンドにソロ本塁打を叩き込んだ。韓国の3番手ソ・ジュンウォンは右サイドハンドで最速152キロを記録。チャイニーズ・タイペイの打者もこれを弾き返し、安打を放った。

 どちらも高いレベルにあることを感じさせる一戦。侍ジャパンU-18代表は5日には韓国、7日にはチャイニーズ・タイペイに敗れているが、確かにこの日の戦いを見ると、韓国とチャイニーズ・タイペイの力は、侍ジャパンU-18代表と互角以上にあったと言える。

 決勝を制した韓国は、やはり強かった。その戦いぶりは賞賛するに値する。心から拍手を送りたいと思えるほど、白熱し、緊迫した試合を見せてくれた。だからこそ、最後の最後に残った後味の悪さが残念でならなかった。

 2点リードの延長10回2死満塁、一打同点の場面で韓国の5番手キム・キフンは、チャイニーズ・タイペイの7番ダイ・ペイフォンをフルカウントから空振り三振に斬って取った。2大会ぶり5度目の頂点に立つと、一気に歓喜の輪が出来上がり、ナインたちはペットボトルの水をかける“ウォーターシャワー”で喜びを爆発させた。

散乱したペットボトルとグラブをチームの誰も拾わず

 そこまではいい。問題はここから、だ。韓国ナインはこのペットボトルをグラウンド上に次々に放り投げた。中には手にしていたグラブをグラウンド上に放り投げる選手もいた。そのままチャイニーズ・タイペイの選手と握手し、一塁スタンドの韓国人ファンに一礼すると、ベンチへと引き上げていった。

 マウンド付近に散乱したペットボトル、そして内野に転がるいくつかのグラブ。誰も片付けにいかないし、拾いにもいかない。この後には閉会式が予定されており、そのための準備がスタート。運営サイドのスタッフがグラウンドに駆け出し、この散乱したペットボトルとグラブを拾い集めることとなった。国民性も文化も違う他国に同じ考えや行動を求めるのは違うが、アスリートとして最低限の礼儀とマナーはあって然るべきではないだろうか。

 この大会はアジアの頂点を決める大会であると同時に、アジア圏における野球文化の発展と振興も大事な開催意義の1つである。今大会に参加した7か国のうち、日本と韓国、チャイニーズ・タイペイは、他の中国、スリランカ、インドネシア、香港という野球“発展途上国”にとってお手本、見本となる役割がある。この韓国の振る舞いを見て、例えば、ひたむきなプレーを見せていたスリランカの選手たちはどう思うだろうか。

 試合後、この行為を指摘された韓国のキム・ソンヨン監督は「若い子たちが興奮してしまっていたのだろう。配慮が足らなかった。あとで選手たちには言いたい。(グラブは)韓国でも大事にするように教えられている。興奮してやってしまったんだと思う」とバツの悪そうな表情を浮かべていた。

 今大会の韓国代表は強く、ポテンシャルの高い将来有望な選手たちが数多くいた。優勝するに十分に値するチームであった。だからこそ、自らでその価値を落としてしまう、“バッドウイナー”な振る舞いが残念でならなかった。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)