白人警官による黒人の射殺事件が「黒人差別が原因なのではないか?」と考えられるなど、アメリカでは人種差別問題が大きく取り上げられています。ニュージーランドのカンタベリー大学でヒューマンマシンインタフェースの准教授を務めるクリストフ・バートネック氏らの研究チームは「人は人間だけでなく、ロボットにおいても色で差別する傾向にある」ことを示しました。

Robots and racism

https://ir.canterbury.ac.nz/handle/10092/15024

We're racist towards robots, too, study finds - ABC News (Australian Broadcasting Corporation)

http://www.abc.net.au/news/2018-07-24/we-are-racist-towards-robots-too-study-finds/10029548

バートネック氏らの研究チームはこの研究を行う前、「多くのロボットが白色に配色されていること」に疑問を感じていたとのこと。以下の画像は記事作成時にGoogle画像検索で「robot」と検索したときの画像一覧ですが、大半のロボットが白色の配色となっていることがわかります。この事実に「ロボットの配色にも人種差別の影響があるのではないか?」と考えた研究チームは、色の違うロボットに対して人々がどのように反応するかを調査することにしたそうです。



研究チームは「シューティング・バイアス」と呼ばれる手法を使用して、多くの人が色の違うロボットにどのような反応を示すか調べてみることにしました。シューティング・バイアスとは、被験者が画面の前に立ち、「武装している人が表示されたら発砲」「非武装の人が表示されたら発砲しない」というルールの簡単なゲームで、表示される人物に応じて反応の違いを調べるものです。過去の研究では武装もしくは非武装の白人または黒人が映し出されて試験していましたが、この研究では、白い(白人風の)ロボットと黒い(黒人風の)ロボットが登場するものに変更されています。



実際に被験者を集めて実験を行うと、以下の結果となりました。この結果は、過去に白人と黒人を映し出した結果と同等の結果になり、結果を人種別に分析しても同じ結果となったそうです。

1:黒いロボットが武装しているときは、被験者は迅速に発砲し、ミスする確率は低い

2:黒いロボットが非武装のときは、被験者の判断が遅く、ミス(発砲)する確率が高い

3:白いロボットが武装しているときは、1より判断が遅く、ミスする(発砲しない)可能性が高い

4:白いロボットが非武装のときは、2より判断が早く、ミス(発砲)する可能性が2より低い

なお、この結果はメディアの影響で「白人は優秀で黒人は劣っている」という評価を刷り込まれた結果だとされています。実際、1940年代に心理学者のケネス・クラーク氏とマミー・クラーク氏は「メディアによる刷り込み」を調べるために「白い人形と黒い人形のどちらが優れているか?」を黒人の子どもに聞くという実験を行いました。この実験では大多数の黒人の子どもが「白い人形の方が優れている」と回答したことが知られています。

バートネック氏は「人型のロボットは多くの人が『生きている人間』のように扱う傾向があります。しかし、同時にさまざまな差別の問題を引き起こす可能性があり、これらを解決することもロボット開発者の務めです」と述べており、差別の問題もロボット開発者が考慮しなければならない課題の1つであるとしています。