「世界史嫌い」だった人にこそオススメの「本&読み方」とは?(画像:scaliger / PIXTA)

「勉強しているはずなのに、成績が上がらない」「どれだけ本を読んでも身につかない」
受験生に限らず、勉強熱心なビジネスパーソンでも、このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
「かつての僕は、まさにそうでした」。2浪、偏差値35という崖っぷちから1年で奇跡の東大合格を果たした西岡壱誠氏は、自らの経験を振り返って言います。「でも、ちょっとした工夫で、劇的に改善したんです」。
教科書、参考書だけでなく、あらゆる本の読み方を根本から変えた結果たどり着いた、「知識を増やすだけでなく『地頭力』も高められる」「速く読めて、内容も忘れず、かつ応用できる」という読書法を、新刊『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』にまとめた西岡氏に、世界史が楽しくなって成績も急上昇する「3冊の参考書」と、その効果的な「読み方」を紹介してもらいます。

「世界史嫌い」の僕が180度変わった理由

みなさんは「世界史」という科目に対して、どんなイメージを持っていますか?


この質問の答えは、結構分かれます。「大好きだった!」という人もいれば、まったく真逆で「ホントに苦手だった……」という人もいるでしょう。

実は僕も、世界史が苦手でした。

まず教科書が面白く感じられないんです。読んでいても、「〇〇王朝で××という出来事が……」とか「Aという王様がBをして……」とか、ただ事実が並んでいるだけのようにしか見えない。だから、眠くなって仕方がないんですよね。でも、それを暗記しなければテストではいい点が取れない。つまらないことこの上なかったです。

こんなふうにして、世界史の面白さに気が付かないままに勉強を終えてしまった人、結構いるのではないでしょうか。

しかし僕は、ある3冊の世界史の参考書に出会い、ある特殊な読み方を実践したところ、世界史の面白さに目覚めて成績を向上させ、気付いたときには最終的に世界史が一番点が取れる科目に早変わりしていました。それも、「暗記しなくちゃ!」と思い悩まずに、楽しく勉強して東大入試で8割の得点を取ることができるようになったのです。

そこで今日は、僕が今でも読み直す3冊の世界史の参考書と、その読み方を紹介させてください。

大きな「流れ」をつかむための一冊

「流れ」をつかむなら『詳説 世界史B』山川出版社


みなさん一度は読んだはず、ご存じ山川出版社の『詳説 世界史B』。

僕はこの本が好きになるのに3年かかりました。逆に言えば、高校3年間、この教科書が嫌いで嫌いで仕方ありませんでした。

だってこの本の文章って、すごく「教科書的」なんです。事実がつらつら書かれているように見えて、しかも文章に強弱がない。網羅的に、ただ「その時代に何が起こったのか」が書いてあるようにしか見えなかったんです。面白い本だと思ったことは一度もありませんでした。

しかし実はこの本、「あるページ」を読んでおくと、とたんに面白く感じられるように作られていたのです。そのページは、多くの読者が読み飛ばしてしまう、章ごとに付いている「アレ」です。

『詳説 世界史B』はリード文を熟読し、まとめる

そう、答えは「その章のリード文」です。

たとえば「第1章 オリエントと地中海世界」には、いちばんはじめに「第1章ではこんなことが書いてありますよ」というリード文が、その章のまとめとして載っています。要は、その章の「流れ」が、たった1ページに全部詰まっているのです。

これを読めば、「この時代はどういう時代だったのか」「どうしてこのような出来事が起こったのか」という世界史の大きな流れが理解できるようになります。

普通に読んでいるだけでは「へえ、ローマ文明ってのがあったんだー」くらいにしか理解できないことでも、「そうか! ローマ文明はギリシア文明の影響を大きく受けていて、そのあとのヨーロッパの思想に大きな影響を与えたんだな!」と、「流れ」が理解できます。そうすれば、より多くの知識を吸収することができるんです。

「ローマはこんなところでギリシアと似てるんだ!」「たしかに今のヨーロッパでもこういう考え方あるよな!」と、1つの事実から関連させて多くの事実を理解することができるようになる。だから、複数の事実を暗記する必要なんてなくなるのです。

いわば、この「リード文」=「まとめ」を理解しておけば、一を聞いて十を知れるようになるのです。

僕はこのリード文の内容の中から重要だと思った部分を、何枚かの付箋に書いてまとめていました


章冒頭の「リード文」を、さらに付箋にまとめていく(写真:筆者)

章を読み進める前に「ローマ文明はギリシア文化を継承発展」「ギリシア文明やローマ文明はヨーロッパの思想の源流」……とリード文の内容をまとめておき、読み進める中で「この付箋と対応するな!」というページが見つかったら付箋をそのページに移動させるのです。こうすれば、リード文との関連をより強く意識することができるんです。

世界史を「つまらない!」と感じがちなのは、「何が起こったのか」暗記するだけの科目だと思いがちだからです。「どうしてそんなことが起こったのか」をしっかり考えたり、「どういう流れでその出来事が起こったのか」を知ろうとすれば、実は暗記なんて最低限でもよかったりします。

そして、この教科書は極めてスマートに「流れ」をまとめてくれている。「本文」にばかり目がいきがちですが、実はメインになっているのはリード文のほうと言っても過言ではなかったのです。リード文を読んでおけば、本文がすごくよく理解できる。あれだけ読みにくくてつらかった本文も、先にリード文を読んでおくだけで、読みやすくて楽しいものに早変わりするのです。

違う時代との「関連づけ」を知るための一冊

「関連づけ」なら『タテで覚える世界史B』


さて、お次はこちら。『タテで覚える世界史B』です。

この本は、他の世界史の参考書とは一味違う本です。というのは、普通の参考書であれば「時代ごとに」「ヨコで」世界史を見ていくのに対して、この本は「国や地域ごとに」「タテで」世界史を見ていくのです。

「13世紀→14世紀→15世紀……」というふうに時代ごとに追うのではなく、「イタリア史」「アメリカ史」「中国史」というように、地域ごとで区切られて書かれているのがこの教科書です。

でもだからこそ、使いこなすのに時間がかかります。授業や他の参考書で「ヨコから」世界史を見ることに慣れていると、この本とうまく付き合えるようになるまでに時間がかかってしまいます。僕もはじめは、うまく付き合うことができませんでした。

『タテで覚える世界史B』は『詳説 世界史B』と同時並行で読む

そこでこの本を、さっきの山川の教科書と同時並行で読んでみることにしました。「えっ!? 2冊同時に!?」とハードル高く感じる人もいるかもしれないんですが、そんなことはありません。辞書で単語を調べるのと同じように、『タテで覚える世界史B』を「その出来事に関連する情報」を調べるのに使えばいいんです。

たとえば山川の教科書で「イタリアでルネサンスが起こりました」と書いてあったら、「イタリアでルネサンスが起こる前ってどんなことがあったんだっけ?」「ルネサンス後どうなったんだろう?」ということを「タテで覚える」でチェックするんです。

そうすれば、「ルネサンスは、イタリアで都市共和国が栄えていたから発生したんだな」「ルネサンスが衰退したのはイタリア戦争の影響なんだな」と、他の出来事と関連させながら理解することができます。こういう他の出来事との関連が案外、入試では問われたりするんです。

1つの本・1つの見方では、関連させて覚えることはできません。「ヨコ」から世界史を見ているだけでは理解できないことも多いものです。しかし、この「タテで覚える」のように、新しい見方、斬新な視点を提供してくれる本を、他の本と同時並行で読めば、1つの出来事から多くの事実を知ることができる。同時並行で読むことで、2冊分以上の効果が得られるのです。

理解度をチェックするための一冊

理解度のチェックなら『荒巻の新世界史の見取り図』


最後に紹介するのはこの本、『荒巻の新世界史の見取り図』です。

この本、めちゃくちゃ面白いです。著者の文章の書き方がとてもうまく、大学入試を終えた東大生でも、いまだに読み物として読み直す学生が結構いるくらい面白い本です。

何が面白いって、この本めちゃくちゃ奥深いんです。他の教科書や参考書には絶対載っていないような超マニアックで面白いエピソードが載っていたり、「そうか! こういう視点で考えるとそんな関連があるのか!」と斬新なものの見方を提示してくれたり、果ては「世界史」という科目の域にとどまらず「今の世界にどういう影響を与えているのか」まで解説していてくれたりと、とても読み応えのある本なのです。

しかし白状すると、僕はこの本をはじめて読んだときには挫折しました。なぜか、なんとなく、面白いと感じられなかったのです。他の友達が「面白い!」と言って読んでいる横で、「どうして僕は面白く感じられないんだろう」と思い悩んでいました。

『荒巻の新世界史の見取り図』はリトマス試験紙として使う

実はこの本、「世界史に詳しくなれば詳しくなるほど面白くなる本」なんです。世界史の知識がまったくない状態で読んでもあまり面白さが実感できない。けれど世界史を知れば知るほど「うわ! 超面白い!」となっていく。受験を終えてから読み直してみると、新しい面白さがまた発見できる。

面白いと感じれば理解できている証拠、面白いと感じなければまだまだ理解できていない証拠。そんな、リトマス試験紙のような本が、この『荒巻の新世界史の見取り図』なんです。

なので、僕はこの本を「リトマス試験紙」として使っていました。その単元を読んで、面白いと感じられなければまだ理解が不足している証拠だから、もういちど復習。面白いと感じれば次の単元へというふうに、「理解できているかどうかのテスト」として扱っていました。

これが、面白いくらいに当たるのです。大学に入って家庭教師として勉強を教えるときに、教え子にも試してみたのですが、教え子が「面白く感じられなかった」と答えた単元をテストしたら、そこだけできていないのです。

「教養のある大人」なら世界史未受験でも面白い?

そして、最近気が付いたのですが、「世界史の知識」にあまり詳しくなくても面白いと感じられる人もいます。それは、「社会学」「経済学」といった、世界史にも関連する知識、いわば「教養」のある大人たちです。

「世界史は未受験だけど、経済の勉強はしているビジネスマン」とか「世界史はあまり知らないが、幅広い教養を持っている社会人」とか、そういう方が読んでも面白く感じるそうです。

世界史も英語も、国語も数学も、本当に多くの本があります。でも、それをどう使うかというのは、読者に委ねられています。うまく使うのも、「面白くない本だ」と断ずるのも、読者の自由です。

でも、リード文を読んだら面白く感じられるようになったり、同時並行で読んだら理解度が増したり、教養を試す素材として使えたりと、どんな本にも「面白くなる」読み方・使い方があるものです。みなさんも、「面白くない本だ」と決めつける前に、いろんな本との付き合い方を模索してはいかがでしょうか。