梅雨で気分がふさぎがちなこの季節。夏休みには少し早いけれど、気持ちを切り替え、週末を利用して北海道へ、というのはいかが? スタンダードな景勝地巡りや海鮮グルメもいいけれど、北海道に来たらぜひ試してほしいのが、アイヌの郷土料理。果たしてどんな食材を使っているのでしょう? そして気になる味は…? 

店内にはアイヌと世界の少数民族の装飾品が並び、独特の世界観が広がっている

アイヌ料理を目当てにやってきたのは、北海道最大級のアイヌ民族の集落・アイヌコタンです。こちらは阿寒湖温泉街の西側に位置する、およそ130名ほどのアイヌ民族が暮らすコタン(集落)で、木彫りなどの伝統的な民芸品を販売するショップや、アイヌ料理が味わえる店が30軒ほど軒を連ねています。

そのなかで、知る人ぞ知る存在なのが、民芸喫茶ポロンノです。ここでは、山や海の恵みを存分に生かした伝統的なアイヌ料理から、独自のレシピによるオリジナル料理まで、素朴でおいしい郷土料理をいただけます。

たとえば、阿寒湖湖畔を散策したあとのランチにぴったりなのが、アイヌ料理の定食です。ユック(シカ)のオハウ(汁物)とアマム(炊き込みご飯)のユックセット(1000円) は、体にやさしいメニューです。

ポロンノのメニューは、店主・郷右近好古(ごううこんよしふる)さんのお母さんの味をベースにしているそう。「アイヌ料理は家庭によっても全く味が異なります。私の母の出身は(日高地方の)浦河町なのでその地方の味になっていると思います」とのことで、心がこもったおふくろの味がうれしいですね。

アイヌの伝統的な保存食、ポッチェイモ(ほかの地域ではペネイモ、ムニニイモなど名称が変わります)をピザ生地にしたポッチェピザ(750円)もおすすめです。個性あるポッチェイモ、チーズ、そしてギョウジャニンニクの香りがとてもよくマッチします。また、ポッチェピザのトッピングに使われているコゴミは、アイヌの伝統文様を連想させますね。

また、小腹が空いた時にちょうどいいのが、おやつ代わりにいただきたいラタスケプ(500円)です。ラタスケプを直訳すると“混ぜ合わさったもの”という意味だとか。上新粉が入っており、もちもちした食感で腹持ちもいいですよ。

一見カボチャサラダのように見えますが、イナキビ、トウモロコシ、金時豆が入り、それらの食感もあわせて楽しめます。また、アイヌの調味料的存在であるシケレペの柑橘系の香りがさわやかかつスパイシー。胃もたれに良いとされているシケレペ茶や、体調がいまいち、というときに飲まれていたセタエント茶など、旅先での体調不良時に助かるアイヌのお茶(各350円)と一緒にどうぞ。

アイヌ料理を扱っているお店は道内でも貴重な存在です。それはポッチェイモのように手のかかるものが多かったり、材料が手に入りづらかったりするためです。ポロンノで使っているシカ肉や山菜は近隣の山のものであり、まさに阿寒の自然の恩恵を存分に受けたメニューとなっています。

伝統的なアイヌの食材を生かしつつ、創作し過ぎない範囲で新しいメニューを出したい、と話す郷右近さん。せっかくお店を訪れたのなら、郷右近さんのアイヌにまつわるお話を聞きながら、心がほっこりするアイヌ料理を堪能したいです。

おいしいものや雄大な自然の宝庫である北海道。メジャーな観光スポットは何度行っても飽きないけど、たまにはこういうアイヌの伝統料理を目的に訪れてみるというのも乙ですね。ぜひ週末や夏休みを利用して北海道へ旅行して、知られざる北海道の魅力を再発見してみてください。

民芸喫茶ポロンノ■住所:釧路市阿寒町阿寒湖温泉4-7-8 ■電話:0154・67・2159 ■時間:12:00〜22:00(L.O.21:30)15:00〜18:00は仕込みのため準備中になることがあります ■休み:不定(休みの日はSNSで告知)※11〜4月は要予約 ■席数:25席(禁煙)

【北海道ウォーカー編集部】(北海道ウォーカー・山崎伸子)