マツダが6月26日に就任する丸本明次期社長の下、新時代へと踏み出す。現行の「スカイアクティブ・テクノロジー」に次ぐ次世代技術を搭載した自動車の量産を今年度中に始め、2024年3月期に年間世界販売台数200万台(19年3月期予想は166万台)を目指す。

 注目すべきは、200万台に向けて車種群を二つに分けてきたことだ。「アクセラ」「CX―3」を中核とする「スモール」と、「アテンザ」「CX―5」を中核とする「ラージ」で、それぞれ年間販売120万台規模と同80万台規模を担う。

 スモールは世界各地の工場で生産し、コスト競争力ある車種群。米工場が作る新型スポーツ多目的車(SUV)も含む。ラージは各種の電動化技術を取り込んで、付加価値を高める車種群。後輪駆動(FR)を採用するもようだ。

 マツダはスカイアクティブ技術を搭載した現行の商品群に、「一括企画」という手法を採用。全体の車種の構想をあらかじめ定め、設計や構造に共通性をもたせながら特徴的な部分は個別に設計する。

 この手法により開発を効率化しつつ、商品の多様性を保ってきた。次世代はこれを2系統に分けることになる。

 特にFRは、主流の前輪駆動(FF)車と比べ運動性能や操縦安定性が向上するため、独BMWなどの高級車が採用している。一方で室内空間が狭まり、コスト高になる課題もある。

 業界全体の開発テーマが電動化やIT化へ大きく移行する中で、あえてFRを採用するのはいかにもマツダらしい“逆張り”手法のように見える。

 丸本次期社長は「まずは独自性を強化しないかぎり、ブランドは成長しない」と表明。その上で、「電動化や自動運転など単独で難しいところは、パートナーとやっていく」と話す。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一シニアアナリストは、マツダの一連の取り組みについて、「米国市場の販売テコ入れや内燃機関の強化、デザイン性向上、デジタルツールを使った開発など施策に違和感は少なく、方向性は正しいように思う」と評価する。

 ただ、「全体的に見ると(業績や株価などの)動きは良くない。利益率も高くなく、意外だ。しかも、しばらくは成長に向けた足場固めの時期が続く。株式市場はマツダの低パフォーマンスを織り込んで、見放しているようだ」と手厳しい。

 丸本次期社長はマツダの課題について、「稼ぐ力が低下していること」を挙げる。「特効薬はない」とし、「コスト低減であり、あらゆる固定費の削減であり、もう一度ゼロベースで取り組む」つもりだ。

 しっかり稼いで、次世代に再投資できる会社へと脱皮する必要がある。