サンドイッチチェーン「サブウェイ」が苦境にある。4年で約170店舗が閉鎖し、運営会社「日本サブウェイ」も2期連続で赤字を計上した。野菜たっぷりでパンも選べるサブウェイのサンドイッチは、なぜ売れなくなったのか。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏は、「コンビニのサラダが充実し、飲食店でも野菜メニューを押し出している今、『野菜のサブウェイ』の訴求力は低下している」と分析する――。

■2期連続で当期純損失を計上

サンドイッチチェーン「サブウェイ」の閉店が止まらない。2014年には国内で480店を展開していたが、その後も閉店が相次ぎ、4年で約170店も減った。現在は310店を割り込んでいる。

運営会社「日本サブウェイ」の業績も、厳しい状況にある。決算公告によると、16年12月期は当期純利益が5047万円の赤字、15年12月期は4863万円の赤字だった。2期連続で当期純損失を計上している。

サブウェイはアメリカに本社を置き、100を超える国に4万3000店以上を展開する世界最大の飲食チェーンだ。店舗の過半数はアメリカにあるが、カナダやイギリス、ブラジル、オーストラリアでも多く展開し、実は店舗数ではマクドナルドに勝っている。

日本で第1号店が誕生したのは1992年。サントリーホールディングス(HD)が米サブウェイからマスターフランチャイズ権を取得し、日本サブウェイを通じて運営を開始した。

■7割が「野菜がとれるから利用している」

サブウェイの売りは、パンや野菜、ドレッシングなどを自由に組み合わせられる点だ。サンドイッチの種類を決めたら、数種類あるパンの中から好きなものを選び、好みでトーストもできる。野菜やドレッシングの量も調整可能だし、追加料金を払えばトッピング増量もしてくれる。

野菜が多くとれることも売りになっている。日本サブウェイによると、約7割もの人が「野菜がとれるからサブウェイを利用している」と答えた調査結果があるという。会社としても08年から「野菜のサブウェイ」のスローガンを採用し、前面に出してアピール。そして健康ブームが追い風となり、健康に気を使う人を中心に支持を集めてきた。

また、小さなスペースで出店できることが、店舗網の拡大の原動力となった。サブウェイでは調理に火や油を使わないため、大がかりな厨房設備を必要としない。それゆえ、一般的なファストフードチェーンの半分程度、15坪ほどの広さで開業が可能だという。

これらが人気と出店攻勢の源泉となり、店舗数は10年から14年で倍増した。しかし、14年を境に伸びが止まり、以降は不採算店を中心に店舗の閉鎖を進め、減少の一途をたどる。今もこの流れは止まらない。

サントリーHDはサブウェイを見限ったのか、日本サブウェイの株式すべてを放出した。フランチャイズ契約が切れた16年4月に、世界のチェーンを統括する本社「サブウェイインターナショナルグループ(オランダ)」に、日本サブウェイの株式の65%を売却した。18年3月には、残りの株式もすべて同社に売却している。以後は、本社主導で再建を図る考えだ。

■コンビニおにぎりに便利さでかなわない

世界一の店舗数を誇るサブウェイが、なぜ日本で苦戦しているのか。筆者はコンビニエンスストアの存在が大きく影響していると考えている。

海外で始まったコンビニは、日本で大きく進化した。多くの訪日外国人が、その利便性の高さや品ぞろえの充実ぶりに驚くという。「日本のコンビニがすごい」というネタは、しばしば海外のメディアで報じられたり、インターネット上の掲示板で話題に上ったりする。海外に行くとわかるが、たしかに日本のコンビニの充実度は群を抜いているといえるだろう。

言うまでもないが、日本のコンビニではサンドイッチも充実している。そのため、「サンドイッチ」というと多くの人がコンビニで販売しているものを想像してしまう。そうなると、サブウェイのサンドイッチの価格の高さが際立ってくる。一般的なコンビニのサンドイッチの価格は200〜300円程度だが、サブウェイは300〜600円と、より高額だからだ。もちろん、具などの内容が異なるため、本来は単純比較できないものだ。しかし、価格帯だけで両者を比べて判断する人は少なくないだろう。そうした人たちが、「サンドイッチを食べよう」と思った時に、「サブウェイは高いからやめて、コンビニにしよう」となっているケースが考えられる。

また、コンビニのおにぎりや弁当もサブウェイから客を奪っているといえるだろう。サンドイッチの魅力のひとつは、手軽に食べられることだ。だが、おにぎりや弁当もそれは同じ。また、サブウェイの場合、パンやトッピングを自分で選んでオーダーできるという特徴が、逆に「めんどくさい」というハードルにもなってしまう。手軽に食事を済ませたければ、わざわざサブウェイであれこれ選んで高いサンドイッチを買うのではなく、コンビニでおにぎりや弁当を買う――これはコンビニが発達している日本ならではだろう。

サンドイッチに対する嗜好が、日本人と欧米人とで大きく異なることも影響していると考えられる。サブウェイは欧米人が好む長楕円形のパンのサンドイッチを提供しているが、日本人が慣れ親しんでいるのは食パンのサンドイッチだ。

日本サブウェイも、日本人の味覚に合った独自メニューを開発・販売してはいるものの、さすがに食パンのサンドイッチは販売していない。それではコンビニとの競争に埋没してしまうと考えているのだろう。だがそもそも日本では、欧米に比べて「外食でサンドイッチを食べる」という発想が乏しい。さらになじみのないパンでは、客足は遠ざかってしまう。

■「野菜たっぷり」はもはや珍しくない

強みである「野菜のサブウェイ」の訴求力が落ちていることも、苦戦の大きな原因だろう。これにも、コンビニの存在が大きく影響している。近年、コンビニ各社は、野菜が多く入った食品やサラダの品ぞろえを強化している。

たとえば、ローソンはサラダの品ぞろえを充実させた。2017年2月に一部地域で試験的にサラダの品ぞろえを従来の約1.5倍の26種類に増やしたところ、1日1店舗あたりの平均売上高が前年比で5割増えたというのが、そのきっかけのひとつだ。セブン−イレブンやファミリーマートも、同様の動きを見せている。

飲食店でも、野菜が多く入ったメニューが充実してきている。「野菜たっぷり」と銘打ったメニューをよく見かけるようになっていないだろうか。ヘルシーなイメージとは縁遠い吉野家でさえ、肉を一切使わない「ベジ丼」を発売したくらいだ。

こうした動きによって、サブウェイの「野菜が食べられる」という訴求力は、当然相対的に弱まってきた。

こういった要素が折り重なり、サブウェイは日本でははやらず苦戦を強いられていると筆者は考えている。現在も不採算店の閉鎖が続いているが、新機軸を打ち出すことができなければV字回復は望めないだろう。

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佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。

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(店舗経営コンサルタント 佐藤 昌司)