横浜美術館(横浜市西区)が「ヌード」をテーマにした展覧会を開催し、話題となっています。女性や男性のヌードを描写した西洋絵画や彫刻を集めた企画に、SNS上では「アートとしてのヌードの歴史、面白かった」「裸体や肉体美、官能美を表現する作品が並び、見応えある企画展」「上半期最高の企画展かも」などの声が寄せられています。主催する横浜美術館と読売新聞社の担当者に話を聞きました。

「アートとしてのヌード」の歴史をたどる

 展覧会は、6月24日まで開催中の「ヌード NUDE -英国テート・コレクションより」です。英国の国立美術館「テート」が所蔵する近現代の美術作品の中から「ヌード」をテーマとした作品を集めて紹介しています。日本初公開となるロダンの大理石彫刻「接吻(せっぷん)」に加え、ターナー、ルノワール、マティス、ピカソなど西洋の芸術家の作品を、国内の美術館の所蔵作品も合わせて、68作家、計134点展示しています。

 横浜美術館学芸員の長谷川珠緒さん、読売新聞東京本社事業局文化事業部の池田匠汰さんに話を聞きました。

Q.「ヌード」を主題とした展覧会は、国内ではあまり聞いたことがありませんね。

池田さん「近年では2003年に東京芸術大の美術館、11年に東京国立近代美術館で開かれたことがありますが、やはり実施例は少ないです。今回のように西洋におけるヌード美術の歴史をたどるような機会は珍しいといえます」

Q.どんな人たちが来場していますか。

池田さん「20〜30代女性を中心に、男女問わず幅広い年代のお客様が来場しています」

Q.どのような意見が寄せられていますか。

池田さん「『ヌード』というテーマ上、賛否両論ありますが、好意的な意見が多いです。SNSを中心に『キュレーションが見事』『ヌードの概念が変わった』『ここ数年で最高の展覧会』といった意見を頂戴しています」

Q.企画の経緯は。

池田さん「2013年ごろ、テートとシドニーの美術館との間で企画されたと聞いています。テートのエマ・チェンバーズ学芸員は『ヌードは西洋美術において欠かせないテーマです。ヌードを通して西洋美術を観ると、時代とともに芸術家たちの関心が移り変わってきたことがよく分かります。作品の背景にある社会構造や身体についての考え方の変化もはっきり浮かび上がります』と語っています。16年にシドニーを最初の会場として本展の巡回が始まり、オークランド、ソウルを経て横浜美術館での開催に至っています」

Q.8つの章・テーマに分けて展示していますが、工夫したことは。

長谷川さん「章立てやテーマ設定は、テートの学芸員が担当しました。年代を追って作品を紹介することで、19世紀から現代に至る裸体表現の歴史が、体感として伝わればと思います。作品解説などは、できるだけ平易な日本語でまとめました」

Q.見どころは。

長谷川さん「『エロティック・ヌード』のコーナーでは、時系列で作品を並べるのではなく、ロダンの『接吻』を軸に、展示の構成を考えました。『接吻』は360度からご覧いただけるほか、撮影も可能です」

Q.「接吻」以外で、日本初公開の作品はありますか。

池田さん「ボナールの『浴室』、マティスの『布をまとう裸婦』、ルノワールの『ソファに横たわる裸婦』などです」