川崎対鹿島。昨季J1で優勝を争った両チームが土曜日、対戦した。8節を終えた段階で、川崎は6位で鹿島は8位。シーズン序盤なので、こんなものかという見方が成立するのか、それとも少しばかり深刻に考えるべきか。両チームは微妙な立場に置かれていた。
 
 結果は1ー4。3位に浮上した川崎に対し、鹿島は順位を12位まで下げた。両者の明暗は分かれた格好だ。鹿島は事態を深刻に捉えた方がよさそうなムードになりつつある。

 その右サイドバックのポジションには、内田篤人が立っていた。前節の名古屋戦に続く連続出場ながら、生でこちらが観戦するのは久しぶりで、怪我からの回復ぶりはどれほどのものか、目を凝らしながらの観戦となった。

 もし、完全復活しているのなら、日本代表に抜擢すべし--とは、このコラムでも前に述べてきたが、この試合は、さすがにいまからでは遅いと感じていた矢先の一戦でもあった。内田への期待は、一縷の望みに変わっていた。

 右足を白い包帯でぐるぐる巻きにされたその姿は、やはり痛々しく感じられた。また実際のプレーも、痛々しいルックス相応の大人しいプレーに終始した。日本代表復帰の目は、最初のワンプレーを見た瞬間、淡すぎる期待であったことを確信した。

 もっと言えば、この日の鹿島の敗因そのものだった。鹿島の右サイドバックと言えば、昨季ベスト11に選ばれた西大伍がいる。その控えには、後半から投入されることが多い伊東幸敏もいる。内田はその2人を圧して出場した格好だった。内田と他の2選手との差は一目瞭然になった。

 実際、西と伊東は後半20分、内田と中村充孝(右サイドハーフ)と交代でピッチに2人揃って投入されたが、スタメンを飾っていれば、試合は反対の結果に終わっていたのではないかと思わせる水準を超えたプレーを見せた。内田には、いっそう痛々しい印象を抱くことになった。内田自身の問題で済んでいない所に根の深さを感じた。周囲が内田に気遣ってプレーしていることが、随所に見て取れたのだ。

 知名度は抜群だ。復活を願う人は数多くいる。だが、そのスタメン出場には無理を覚えずにはいられない。大岩剛監督自らの判断なのか。そうせざるを得ない、無言の何かに圧された結果なのか。後者である可能性が高いと見る。

 内田は現在30歳。サッカーは年齢でするものではないが、彼より若い選手で同等の力を備えた選手がいるなら、そちらを起用するのが筋だ。代表チームの場合は特にその理屈があてはまる。もし完全復活を遂げたのなら、代表チームに欲しい人材だと書いておいて、こう言うのは気が引けるが、30歳を超えた選手を起用する場合には、細心の注意が必要になる。

 言い方を変えれば、彼らは次回のW杯に出場する可能性が低い選手だ。選手の寿命は延びたとはいえ、W杯は今回がほぼ最後。23人の枠内で、その数が多ければ多いほど、次回の未経験者の数が増す。要はバランスの問題なのだけれど、30歳以上の選手の数は、代表の次回に多大なる影響を及ぼすのだ。

 前回ブラジルW杯に従えば、選手の平均年齢は27歳ジャスト。日本もほぼそれに近かった。川島永嗣(当時31歳)、今野泰幸(31歳)、長谷部誠(30歳)、大久保嘉人(32歳)、遠藤保仁(34歳)。以上が23人枠に名を連ねた選手5人だが、これは参考にすべき事例になる。

 もし川島(35歳)と長谷部(34歳)が続けて選ばれれば、他に30歳以上の選手は3人程度しか選べないことになる。長友佑都(31歳)、本田圭佑(32歳)、岡崎慎司(32歳)、西川周作(32歳)、東口順昭(32歳)、槙野智章(31歳)、森重真人(31歳)、小林悠(30)等々が、現在30歳以上の候補選手になるが、ならば候補者は10人を数える。興梠慎三(31歳)とか、西大伍(30歳)も、個人的には十分代表レベルに達していると思うし、前回選ばれた宇賀神友弥も30歳だ。これに内田も候補者に加えよと言うのなら、現在のJリーグで内田は相当な力を発揮している必要がある。