相手を注意しなければいけないシチュエーションになった時、どうすれば理解してもらえるか、あるいは注意すべき点は何か…、わからないことばかりですよね。今回の無料メルマガ『起業教育のススメ〜子供たちに起業スピリッツを!』では著者で長く人材育成に携わってきた石丸智信さんが、自身が研修で学んだという「相手を注意する時の留意点」と「怒りの抑え方」について紹介しています。

相手を注意する時に気をつけることとは

これまで約10年にわたり、人材研修機関にて、企業の経営者をはじめとしたリーダーを中心とした研修を第三者の目線から聴講してきました。聴講する中で、色々と学ぶ機会になりましたが、今号では、「相手を注意する時の留意点」と「怒りがこみ上げてきた時の抑え方」について考察していきたいと思います。

研修においては、リーダーとして部下などに対して注意する時の留意点についての講義でしたが、この留意点は、子どもたちに対して注意する時にも参考になるのではないかと思います。

聴講した研修において、「相手を注意する時の留意点」としては、5つが挙げられていました。この5つの留意点を聴いた時には、相手を注意する際に、感情的になってしまうと、ついついやってしまいがちなことだと思いました。

相手を注意するときの留意点の1点目は、「舌打ちをしない」ことです。もし、貴方が注意される立場だったとして、「チッ」と舌打ちされたとしたらどのように感じるでしょうか。舌打ちされると、「何それ!」と感情的になってしまって、その後の肝心の注意事項が耳に入ってこない、ということもありますね。また、何か馬鹿にされたような印象もありますね。

また、注意する側が、舌打ちすることによって、その人自身が、怒りで感情的になっていると、注意される側が捉えられてしまいます。

2点目は、「ため息をつかない」ことです。注意する時に何気なくため息をしてしまうと、注意される側から見ると、失望されていると感じるとともに、舌打ちの時と同様に、馬鹿にされているようにも感じることもあると思います。また、受け取り方によっては、自分の人格を否定されていると感じてしまう人もいるかもしれません。

そして、舌打ちの時と同様に、ため息をされた後に、注意されても、その内容は、なかなか入りにくいのではないでしょうか。

3点目は、「指さしをしない」ことが挙げられます。相手への指さしは、一般的に上位の者が下位の人たちに対して、見下しているというイメージで受け止められてしまいます。注意される時以外でも、自分が指名される際も、人から指さしされたり、指し棒で指名されたりすると、あまりいい感じはしないですよね。

そこで、人を指名する時には、手のひらを上に向けて「どうぞ」という感じで指名するとイイですよ、と教えてもらったことがあります。

4点目は、「難しいことを易しく話す」ことです。相手の言動を改めて欲しい、変えて欲しいと考えて注意すると思うので、相手にも分かり易い言葉で注意することが必要ですね。

例えば、リーダーが経験の浅い部下に対して、専門用語を羅列して注意しても、部下にとっては、何を注意されているのか、チンプンカンプンになりかねません。また、子どもたちを注意する時も、大人しか理解できないような言葉を使っても、子どもたちにとっては、何が何だか分からないでしょうね。

理解できない、分からない状態で注意したら、注意される側から見ると、その注意されることが、理不尽だと思ってしまうかもしれません。

5つ目の留意点は、「人格を傷つけない」ことです。例えば、相手に対して「あなたはだらしないねぇ。ダメだねぇ」と注意したとします。こういった注意に対して、注意された方から見ると、「自分は何をやってもだらしないし、ダメなんだ」と人格を否定されたように感じてしまいかねません。

そこで、注意する方は、相手のどんな行動がだらしなく感じるのか、その具体的な行動を指摘し、どのようにしてその行動を改善していくのか、相手と一緒になって考えていくことが大切だと言えるように思います。

つまり、相手の人格ではなく、その人の注意すべき具体的な行動に焦点を当てることが重要になるのでしょうね。

怒りがこみ上げてきた時の抑え方

では、ここからは、聴講した研修の中で学んだ「怒りがこみ上げてきた時の抑え方」について考えてみます。

ありがちなこととして、いざ、相手を注意しようとする時に、自分の怒りの感情が込みあがってきてしまうこともあるのではないでしょうか。相手の言動を注意する、指摘するということは、相手の言動を変容してもらうことが大事なので、その時には、「怒りが込みあげてきた時の抑え方」が必要だと言えます。

まず、怒りなどの感情の抑え方の1つ目として挙げられるのは、「ストップシンキング」です。

この手法は、怒りの感情の元になる出来事の意味づけや思考などをすべて止めてしまうことです。頭の中を真っ白にして、反射的にものを言わないことが大事になります。

2つ目として挙げられるのは、「ディレイテクニック」というものです。

この手法は、自分の感情の反応を遅らせるために、怒り以外のものに集中させます。例えば、1から順に数を頭の中で数えるとか、「100-7=93-7=86…」といったように引き算をやってみるなどといったものがあります。

3つ目の手法としては、「グラウンディング」が挙げられます。

これは、目の前にある物に意識を集中させます。例えば、目の前にカップがあれば、その色や形、手触りなどの詳細に意識を向け、集中させます。想像するのではなく、実際に目の前にある現実の物に意識を集中させることによって、一旦、怒りを鎮めることにつながります。

4つ目は、「コーピングマントラ」という手法です。この手法は、

「大丈夫! 何とかなるさ」

「こんなことぐらいで負けないぞ」

「怒っても何の得にもならない」

などというように、心の中で唱えます。怒りの感情が湧きあがってきた時に、気持ちを落ち着かせる言葉を、予め決めておくのもいいのかもしれませんね。

怒りがこみ上げてきた時の抑え方の最後の手法は、「タイムアウト」が挙げられます。

この手法は、何らかの理由をつけてその場から離れて、意識的に「間」を取ることです。例えば、子どもに注意しようとして、怒りが湧いてきた時に、「ちょっとトイレに行ってくるね」などと言って、その場から一旦、離れます。

また、会議の時に、議論が白熱して感情的になってきた時には、議長などが「申し訳ありませんが、これ以上は冷静に議論することができません。タイムアウト(時間)を取らせてください。○時間後にまた議論を再開しましょう」などというように、一時的に時間を空けることです。そして、その日の内に議論を再開させることが必要と言われています。

聴講した研修の中で学んだ「相手を注意する時の5つの留意点」「怒りがこみ上げてきた時の5つの押さえ方」について考察してきました。親御さんが子どもたちに、上司が部下に注意、指摘をする場面などにおいて、怒りの感情が湧きあがってきた時に、何らかの参考、ヒントになれば幸いに思います。

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