「やっとこのTシャツを着られました(笑)。もう、ドラちゃん最高!」「曲がったまっすぐさがのび太くんの魅力!」ドラえもんとのび太の声を担当する水田わさび&大原めぐみは、愛情たっぷりに語ってくれた。最新作『映画ドラえもん のび太の宝島』の脚本は、映画『君の名は。』で知られる川村元気。川村“ならでは”の新しさでつくられた物語を、水田&大原はほかの3人の仲間とどのように旅したのか? 2005年のキャストリニューアルからのいまと、最新作の魅力について話を聞いた。

撮影/川野結李歌 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.

ドラえもんが「一歩引いている」感じが新しい

シリーズ通算38作目であり、藤子プロ創立30周年記念作品となる『映画ドラえもん のび太の宝島』は、船に乗って宝島へ向かうのび太たちの冒険を描きます。脚本は川村元気さん、ゲスト声優として、のび太たちの船を襲う海賊船の船長・シルバー役を演じた大泉 洋さん、その妻・フィオナ役の長澤まさみさん、主題歌担当には星野 源さんなど、豪華な顔ぶれが集まりましたが、プレッシャーはありましたか?
水田 ワクワクしかなかったですね。そんなビッグな方たちと共演できるというのは、役者人生においてなかなかないですから。ドラえもんを演じているからこそ実現したんだろうなあと思います。だからもうプレッシャーというよりも、超嬉しくて「やったー!」って感じですね(笑)。
大原 本当にそう思います(笑)。プレッシャーはあんまりないですね……でもそれは、今回だけじゃなくて、テレビシリーズやこれまでの『映画ドラえもん』でも同じです。心の温度は常に一定で、とにかくベストを尽くして、自分に出せる表現を思いっきり出すということでしか、スタッフさんたちの気持ちに応えられないので、もうそれだけですね。
川村さんのシナリオを最初に読んだときに、どう感じましたか?
水田 超わかりやすかったです!
どのように「わかりやすかった」のでしょう?
水田 藤子F(藤子・F・不二雄)先生ってウソを絶対に書かないので、たとえば地殻変動なども地質学にもとづいて考えていらっしゃるんですね。私にはそういった勉強ごとが難しくて(笑)。もちろん、アフレコでは台本があるので理解して演じることができますが、シナリオの時点ではわからないこともあって。そういう意味で、今回はシナリオを読んだときから「ああ、わかりやすい!」って思いましたね。すごく読みやすかったです。
大原 あと、川村さんのト書き(※脚本などでセリフのあいだに挟み込まれる、演出や状況を指定する文章)が……なんて表現していいのかわからないのですが、いままでの方とは違った感じの書かれ方だったので、すごく面白いなと思いました。物語もいろんなものがギュッと詰まっている印象で、「たくさん伝えたいことがある、濃いお話だなあ」って思いましたね。
「川村さんならでは」と感じたところは、どんな部分でしょう?
水田 「恐竜が出てくる!」とかじゃなくて、人の心理描写が多いところが川村さんらしいなあと思いました。のび太とパパ(声/松本保典)の親子関係や、海賊船で働くセーラ(声/折笠富美子)としずかちゃん(声/かかずゆみ)のような女子同士の関係って、これまでの『ドラえもん』ではあまり描かれたことがなかったと思うので、新しいなあと感じましたね。だから逆に、今回はドラえもんが一歩引いている感じの作品になっていますよね。
そうですね。今回は冒険の途中で出会った青年・フロック(声/山下大輝)とセーラの兄妹や、のび太の心情にフォーカスするところが多かった印象です。
水田 そうなんです。ドラえもんはもう、引いて引いて(笑)。川村さんも「ドラえもんの見せ場が今回ちょっと少なくて……ヤバい」みたいなことをおっしゃっていましたね。でも、人間の心理描写にフォーカスすると、やっぱりドラえもんは引くべき立場ではあるんです。だから、今回はそういうところがハッキリと表れている感じがしましたね。

今作で改めて見つけた“のび太のまっすぐな気持ち”

心理描写が多かったということをふまえて、演じるうえでとくに意識した部分などはありましたか?
水田 意識はあまりしてないですね。今までと同じです。
その「引いた感じ」というのも、自然と出てきた?
水田 そうですね。ただ今回は「ああ、こうやってみんながアフレコをする姿を、後ろから座って見守ることってなかったな」と客観的に思いました。これまでは私も一緒にマイク前に立っていることが多かったけれど、今回はみんなの背中を見ていることが多かったので、そこはもう明らかに違った点でしたね。
大原さんは、今作でのび太を演じたなかで、改めて気づいた点などはありましたか?
大原 「のび太くんは、しずかちゃんとドラえもんをすごく大事に思っているんだなあ」というのがすごく伝わってきましたね。シナリオを読み進めていくなかで何度も心が揺れ動いて、読み終わった後、ものすごく疲れたんです。それはたぶん、のび太くんとシンクロしながら読んでいたからだとは思うんですけど……。
のび太の強い気持ちがたくさん描かれていました。
大原 本当に。のび太くんの思いが、まっすぐに描かれていますね。とくに、しずかちゃんを思う気持ちがガーッて描かれていたので……。いつもしずかちゃんのことは大好きなんですが、今回はもっと細かい感情として捉えて、大事に演じさせていただきました。
後半の怒涛のような展開に、のび太の気持ちが乗った数々のセリフにも惹きつけられました。
大原 そうですね。いつもそうですが、今回ものび太くんの「ちゃんと伝えたい」とか「わかってもらいたい」という気持ちが根っこにあって出てくるセリフなので、私もその気持ちにシンクロしながら、きちんと言葉に乗せるように演じました。もう本当に……良いセリフが多いですよねえ。
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