スイッチをONにすると、ギョロッ(画像提供:宇都宮大学糸井川高穂助教)

読者の皆様、まず上の写真をご覧いただきたい。どこにでもある照明用のスイッチがONになった状態のようだが、なんとなく落ち着かない。何か妙な模様がある。模様というか、そう、顔のイラストだ。顔が横向きに描かれていて、目玉がギョロっと見える。このギョロメが、落ち着かない原因ではないか。そこで、ついつい......。

スイッチをOFFにすると、スマイル!


スイッチをOFFにすると、ニッコリ(画像提供:宇都宮大学糸井川高穂助教)

手を伸ばしてスイッチを切ると、ギョロメが消えて、笑顔に変わる。これでようやく落ち着いた。やはり、こうでなくては......。照明用のスイッチをOFFにすると、スマイルが現れる。見ているこちらもニッコリだ。

これは「思わず消しちゃう照明スイッチ」という、環境省主催「クールチョイスリーダーズアワード」で入賞したアイデアだ。地球温暖化対策につながる「賢い選択」(クールチョイス)に選ばれた。

このアイデアを考案したのは、宇都宮大学地域デザイン科学部の糸井川高穂(いといがわ・たかほ)助教だ。Jタウンネット編集部は糸井川さんに電話で話を聞いてみた。

「私は以前から、『省エネ』がテーマでした。大学では、照明器具で省エネ行動を促せる方法や装置を研究してきました。ただ省エネの意義や必要性を呼びかけても、なかなか行動には結びつきません」と糸井川さんは語る。

「そこでたどりついたのが、このスイッチです。スイッチを押したいから押す、その結果として節電につながるというアプローチです。またデザインには、認知心理学や行動経済学といった学術的な理論を採用しています」

糸井川さんは、その応用例として、こんなデザインも考案している。


結ばれた「糸」(画像提供:宇都宮大学糸井川高穂助教)

スイッチがOFFの状態では、指と指を結ぶ「赤い糸」が描かれている。なんとも微笑ましいデザインではないか。若い女性なら思わずキュンとするかもしれない。ところが......


切れた「糸」(画像提供:宇都宮大学糸井川高穂助教)

スイッチをONにすると、ハサミが現れてバッサリ切ってしまう。なんとも残念な結末になってしまう。「糸」を結んだままにしたいなら、おいそれとONにしてはいけない。なるべくOFFのままで......、そう思わせてくれるデザインだ。これも認知心理学や行動経済学の理論に基づいているようだ。

「つまりエコ意識がそれほど高くない人でも、ついついスイッチをOFFにしたくなる。それが結果として省エネにつながる、というわけです」と糸井川さん。スイッチにシールを貼るだけなので、手間も費用もそれほどかからない。普及しやすいのでは、と糸井川さんは期待する。

「実はいま、栃木県内のあるキャラクターとのコラボの企画もあるんですよ。子どもが喜んでスイッチをOFFにしたくなる、環境教育にも役立つデザイン、それが実現できるといいですね」。糸井川さんのアイデアが具体的に実を結ぶ日も、近いかもしれない。