メルボルンでの初勝利の瞬間、杉田祐一は両ひざをつきながら、コーチたちがいる方に向かって雄叫びをあげ、喜びを爆発させた――。


シード選手を破り、全豪オープン初勝利を挙げた杉田祐一

 今季最初のグランドスラム、全豪オープンテニスの1回戦で、杉田(ATPランキング41位、1月15日付け、以下同)は、第8シードのジャック・ソック(9位、アメリカ)を、6-1、7-6(4)、5-7、6-3で破って、見事に全豪での初勝利を挙げた。同時に6度目となるトップ10選手との対戦でも、ついに初勝利をつかみ取った。

「トップ10の選手にグランドスラムで勝てたのは本当に大きい。嬉しさがこみ上げてきました」

 試合後、そうコメントした杉田は昨年のマスターズ1000・シンシナティ大会1回戦でソックと対戦し、7-5、6-4で勝っていた。それもあって、「一番相性がよく、絶対に向こうの方がやりづらいだろう」と自信を持って1回戦に臨んでいた。

 強風が吹き荒れる難しい状況下で、杉田は低い弾道で粘り強くソックのバックサイドにボールを集めた。そのためソックは得意のフォアハンドストロークを思うように打たせてもらえず、フラストレーションを溜め込んでバックハンドで28本のミスの山を築いた。

「相手にいいテニスをさせないように、ずっと集中力を持続できた」

 杉田は第2セットで4-1とリードしながら6-6に追いつかれ、さらにタイブレークでもソックに0-3とされながらも、逆転に成功して第2セットをもぎ取った。「何としても取りたかった」と、この重要な局面を振り返る。

 結局、ソックが52本のミスを犯す一方で、杉田はビッグサーバーのソックのお株を奪う14本のサービスエースを決めてみせた。さらにフォアハンド24本、バックハンド10本を含むトータル53本のウィナーを決めて、どちらがシード選手かわからないような巧みな試合運びを見せた。大会初日にビッグアップセットを演じた杉田は、現地でも一躍注目の人になっている。

 2016年以来、2回目の全豪本戦出場で大きな勝利をつかんが杉田だが、昨シーズンにトップ50まで駆け上がった勢いに乗じて、それを得たわけではない。

 実は昨年11月下旬に、縦隔腫瘍を摘出する手術を受けていたのだ。

「手術があったので、かなり時間をそこにとられてしまった。(体を)戻すだけでいっぱいいっぱいだったのが正直なところでした。だけど、それがいいリフレッシュになったかな」

 幸いにも腫瘍は良性だったため、再びコートに戻ることができたが、杉田の選手生命を左右しかねない危機を乗り越えてきたのは間違いない。

 その後、杉田は2017年末からパースで開催されたエキシビションマッチ「ホップマンカップ」から始動し、ロジャー・フェデラー(2位)やソックとプレーしたり、大坂なおみとのミックスダブルスをプレーしたりした。

「手術の影響がどれぐらいあるかわからない状況だったので、試合をこなしていきながらという感じでした。結構きつい1週間で、かなり精神的にも疲れていました。(全豪直前の)先週は1回戦で負けたので(ATPオークランド大会初戦敗退)、今週はフレッシュな状態で挑めたかなと思います」

 2回戦では、38歳のベテランで、長身211cmから繰り出す強力なサーブを武器にしているイボ・カルロビッチ(89位、クロアチア)と初対戦する。

「相手がビッグサーバーなので、自分のサービスゲームがもちろん大事になってきます。リズムはとりづらいだろうけど、自分のペースにしていきたいなという感じですね」
 
 プレーも、コートでの雰囲気も落ち着いている杉田は、「あんまり先は見ずに、1試合1試合ベストを尽くせればいい」と言う。錦織圭(24位)の欠場によって、日本男子の期待を一身に背負うような状況でも、いつもと変わらず泰然自若としている。

「楽しみな部分の方が大きい。より強いプレッシャーを感じることのできる場所に自分はいきたい」

 今、29歳の杉田はキャリアベストのテニスを披露しつつ、さらなる上を見据えている。まだ到達したことないグランドスラム3回戦以上の舞台への期待が膨らむなか、どんなテニスを見せてくれるのか非常に楽しみだ。

【全豪オープンテニス】
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