国内組のハリルジャパンは、現状持っているすべてを、中国戦で出し尽くしていた。マンツーマンでつく守備ブロック、奪ったら1トップに蹴るロングボール、サイドから運ぶ攻撃ルート、テスト起用でコンバートしたポジション。そのすべてを韓国に研究され、対策を打たれた。

 韓国は両サイドバックを高い位置へ送り、日本の攻撃ルートである両ウイング、伊東純也と土居聖真を押し下げた。日本は奪ったボールを運ぼうにも、両サイドが押し下げられており、味方への距離が遠い。1トップに蹴っても、そこで時間を作ることはできず、相手の激しいデュエルにつぶされる。マンツーマンはリアクションの守備。日本は相手の思うようにポジションを動かされ、ずるずる下がるしかなかった。
 
 一方、中央では韓国のボランチ2枚、特に16番のチョン・ウヨンが最終ラインに下がり、3バック気味にポゼッションを安定させる。韓国は円を描くように、日本の中盤を取り囲む。デュエルが得意なインサイドハーフの井手口陽介は、誰もマークする相手がおらず、立ち尽くした。
 
 22分、軽率なスライディングタックルで車屋紳太郎が2失点目につながるFKを与え、警告を受けた場面。昌子源や今野泰幸ら、選手たちはピッチ内で話し合っていた。そして失点の後、倉田秋がハリルホジッチとも話し、逆三角形の中盤を、倉田をトップ下とする三角形に変えた。
 
 その直後、内容は改善したかに思えた。両ウイング、伊東と土居が高い位置を取り、ボールの出所である相手の最終ラインにプレスをかける場面を作れたからだ。特に右サイドバックは本来のポジションではない植田直通。縦の連係に不安がある中で、高い位置から守備に行くためには、ダブルボランチがサイドまで広くカバーする安定感が必要だった。
 
 しかし、それも長続きはせず。韓国がGKまでボールを下げると、日本は帰陣してしまう。せっかく追い詰めたのに、もったいない。そこまで行ったら、センターバックへのパスくらいは切ってしまえばいいのに。前に行けるチャンスを、みすみす手放してしまう。
 ただ、プレスがはまるかな……と思った瞬間、韓国は割り切って9番の長身FWキム・シンウクにロングボールを蹴ってくるので、日本としてはやりづらかった面もある。韓国はAがダメならBと、戦い方が整理されている。後手、後手に回るうちに、何をやってもダメな雰囲気が日本を支配してしまった。
 
 ハリルジャパンは迷った時に立ち返る方向性がない。このチームが基盤とする守備。その守備がハマらない時、マークを捨てながら前に出てハメるのか、引いてハメるのか。その答がハッキリ出ない。1-3で惨敗したブラジル戦も同じだった。前から行くのか、引いて構えるのか、2列目がその決断をできず、相手のボールの出処をフリーにしてしまう。欧州遠征で経験した課題を、もう一度、今度は国内組のメンバーが、日韓戦で経験することになった。
 
 本来なら、自分たちの特徴、試合の状況を考えれば、それは明確に方向付けられるはず。まず、日本代表には前線で時間を作り、押し上げを待てるようなターゲットマンはいない。サイドも相手に人数をかけて押し込まれており、低い位置でボールを奪っても、攻撃にならない。高い確率で奪い返されてしまう。

 さらに韓国の9番FWキム・シンウクには空中戦で歯が立たないので、この選手をゴールから遠ざけることが必須。一も二もなく、ラインを下げて耐える選択肢は、日本にはあり得ない。本来はハイプレス一択。行ける時は、必ず行って、相手を押し返したほうがいい。
 
 ベルギー戦では相手FWロメル・ルカクをゴールから遠ざけるために、高いラインを保つことが意識されたが、E-1選手権で同じことはできなかった。この守備のはまらなさ、ひたすら引き下がる守備は、ブラジルワールドカップのコートジボワール戦を思い出す苦々しさだった。相手が韓国でなくても、サイドに人数をかけて押し込まれると、ずるずるとサンドバック状態になる。そこから攻撃に切り替えようとしても、遠い。さらに日本はハイプレスをかけられると弱い。これらの弱みが全部出た。