ヒットを飛ばし続ける人気マンガ家・三田紀房氏が再び始動します! 来たる2018年1月25日より『モーニング』誌で、伝説のベストセラー漫画『ドラゴン桜2』の連載がスタートすることになったのは皆様ご存知の通り。漫画界初の試みとして 『ドラゴン桜2』は最新話を同時にメールマガジン『三田紀房公式メルマガ連載「ドラゴン桜+」』でも配信します。今回、メルマガの配信開始日までに事前登録した方へ開始までの期間中に無料配信される「特典記事」を、なんと特別に公開。第一弾は、三田氏本人が著したビジネス書『徹夜しないで人の2倍仕事をする技術』の内容(全5回連載)の第一回を、特別に「ちょい見せ」します。三田氏の活躍を支えてきたのは、長いキャリアを経て築き上げた“成功の方程式”だった? 「徹夜はしない。でも締め切りは守る」「ベタを貫け」など『ドラゴン桜』を生み出した人気漫画家が教える、あなたの仕事を抜本的に進化させるノウハウとは?

仕組みを作れば徹夜はなくせる

机の上にどっさりお菓子を置いていた

世間一般でイメージされている通り、アシスタントと一緒に徹夜するマンガ家は多い。編集者も心得ていて、深夜や明け方に原稿を取りに来る。そもそも出版をはじめメディアに関わる人間には夜型が多い。デザイナー、編集者、カメラマン、そのほか多くの業界人は昼ごろから活動し、夜中まで働く。しかし、私はある時期を境に、このような慣習からすっぱり足を洗った。

私は常時5人のアシスタントを雇っている。彼らは毎朝9時半に仕事場に来て1日分の仕事を済ませ、18時半には帰っていく。昼休みは特にもうけず、めいめいが自分の判断で自由に取る。金、土、日は休みで週休3日制。木曜が週の最終出社日で、この日だけは週刊誌1本分の原稿が仕上がるまで作業をする。だから多少帰りが遅くなるが、せいぜい終電までだ。アシスタントが休む週末に、私はじっくりネーム(マンガのストーリーをコマ割りに落とし込んだ鉛筆による下書き)を考える。もう15年近く、このペースで制作を続けている。

どうやら私の職場は、徹夜が前提の“一般的な”マンガ家の職場より働きやすいらしい。ふつう、マンガ家のアシスタントはその重労働から短期間で入れ替わっていくが、うちは長年続けるベテランが多い。体調を崩す子も少なく、安定的に働いてくれている。心身ともに余裕があるので、デジタルの新しい技術、描き方を導入しようという話をしても面倒くさがらず、積極的に挑戦してくれる。そりゃそうだろう。マンガ家だってアシスタントだって、特別な人間じゃない。徹夜をすれば疲れるし、集中力も落ちる。規則正しくメリハリある働き方のほうが力を発揮できるに決まっている。

私だって、最初からこのことに気付いたわけではない。マンガ家になりたてのころは、先輩からアシスタントの給料やシステムなど、業界の慣習を教えてもらって参考にしていた。そのときに「アシスタントのお菓子は切らしちゃダメだよ。ただでさえ徹夜して疲れているのに、お菓子がないと不満が出るから」と言われて、そんなものかと思って山のようにお菓子を買っておいた。机の上におせんべいやチョコレートを積み上げて、これでアシスタントが機嫌よく働いてくれると思っていたのだ。

1週間、徹夜なしの働き方を提案

遅い時間に仕事を始めて、お菓子をつまんだりしながらダラダラと夜中まで続ける。そんな生活を続けていると、アシスタントの子たちが太り出して、見るからに不健康そうになっていく。しかも徹夜するからいつも睡眠不足。当時はせっかく仕事を覚えても、「つらい」と言ってやめていくアシスタントが多くて、また次の子にいちから教えなくてはならない。本当にもったいないことをしていた。

“業界の慣習通り”の働き方を続けながら、これでいいのだろうかという疑問を持つようになった。どう見ても不健康だし、自分にとってもアシスタントにとっても、いい働き方とは思えない。そこで7〜8年間経ったあるとき、「来週、実験的に1週間徹夜しないルールを作ってみないか。朝早く来て、集中して作業して終わるかどうか、やってみよう」と言った。アシスタントのみんながすんなり賛成してくれたので、やってみたら案外うまくいった。作業がはかどり、夕方帰っても十分仕事が間に合うことが証明できたのである。

1週間試した結果、アシスタントのみんなも「このほうがいい」と納得してくれたので、それ以来、9時半出社を原則とした。規則正しい生活になったおかげでアシスタントが病欠しなくなり、辞めないで長く続ける子が増えた。そうすると技術が蓄積されていって、手が早くなる。結果、さらに仕事を効率化して早く作業できるようになったり、新しい技術を覚えて自分の仕事に生かすことができたり、副次的な効果が大きいと気が付いた。この「働き方改革」は、私にとってもアシスタントにとっても良いこと尽くめだった。机の上に、お菓子はもう積んでない。食べたい人は自分で買って食べている(笑)。

「マンガ家は精神的にも体力的にもきつい仕事」という先入観があって、だからお菓子を与えてケアするとか、耐え抜いた人間しか成功しないとか、妙な方向に考えがいってしまう。そうではなく、健康的な生活環境を整えてあげれば、自然と集中して仕事するようになる。そもそもマンガ家というのは、毎日徹夜しないと終わらないほどの作業量があるわけではない。ほとんどの人が惰性でもって、だらだらと仕事をしているだけなんだ。仕組みさえ整えれば公務員のように9時〜17時で働くスタイルが確立できると、実際にやってみてわかった。

一般の仕事に置き換えても、同じことがいえると思う。放っておくと、「みんなが仕事をしているから」と言ってダラダラ遅くまで残って仕事をしがちだ。会社にとっては残業代がかさむし、社員にとっては他の勉強や技術習得、休養に費やせたかもしれない時間をムダに使って体が疲れる。まったくいいことがないのに、日本の会社では残業が横行している。これは上司が仕組みを作らない限り、改善しない問題だと思う。「はじめに」でも述べた通り、「個人の頑張り」に成果をゆだねている限り、パフォーマンスは上がらない。組織のパフォーマンスを上げたいなら、やはり決まりを作って社員の行動を変える「仕組み化」が欠かせないのである。

徹夜しないマンガ家は珍しいと言われるけど、変わったことをしているつもりはない。しごくまっとうな、合理的なことをしているだけだ。

<ポイント>

夜型は業界の単なる「慣習」だ仕組みを作れば残業は減る徹夜ゼロで社員がやめなくなり、副次的なメリットが多い

(第二回に続く)

『ドラゴン桜2』メルマガ配信開始日は 2018年1月25日(木)から

上の見出しにもあります通り、『ドラゴン桜2』の連載スタートとメルマガの配信開始日は 2018年1月25日(木)から。それまでに事前登録していただいたみなさまには、開始までの期間中に、以下のコンテンツが無料配信される特典付きです。

・『ドラゴン桜』名シーンのピックアップ連載

・作者・三田紀房氏によるビジネス本 『徹夜しないで人の2倍仕事する技術』連載(この記事の続きです)

無料コンテンツの配信予定日は、 12/14(木)、12/28(木)、1/11(木)となっています。

やっぱり、2020年の日本には、この男が必要だ。

MAG2 NEWS