店舗網の拡大が続くセルフ式うどんチェーンの「丸亀製麺」。足元の既存店売上高は前年超えが続いている(写真:トリドールホールディングス)

低価格セルフ式うどん「丸亀製麺」を主力とするトリドールホールディングス(HD)は、「2025年に全世界6000店」との目標を掲げる(2017年9月末で1315店)。店舗網拡大には人材が欠かせない。同社は年間約1万人のパート・アルバイトを採用。2017年春には大卒と高卒で、それぞれ100人超を新入社員として採用した。3年内離職率は飲食業全体が約5割で推移する中、30%台を保っている。人材確保や定着率向上の取り組みについて、トリドールHDの粟田貴也社長に聞いた。

高卒者の正社員が増加

――丸亀製麺のパート・アルバイトをどのように確保していますか?

各店舗の運営は社員の努力もあるが、やはりパート・アルバイトが支えている部分は見逃せない。採用を円滑に進めていくことは、われわれの成長戦略においてカギとなるポイントだ。年間約1万人ものパート・アルバイトを採用できる理由は、時給が高いということだけではない。


今年の9月上旬から10月上旬にかけて投入した期間限定商品「牛すき釜玉」(写真:トリドールホールディングス)

当社はトレーナー制度を設けて、マンツーマンで仕事を教える仕組みを採用している。提案制度も導入しており、パート・アルバイトでも店舗で試みたいことが自由に発言できる。

一例としては、ご当地商品などのアイデアを提案してもらっている。「一緒にお店を作りましょう」という姿勢が共感を呼んでいると思う。

──近年は大卒者に限らず、高卒者の正社員採用も増やしています。

2016年春に4〜5人の高卒者を採用したところ、仕事の覚えが早く、即戦力として活躍してくれた。そこで、今春は高卒者の採用を一気に100人に増やした。来年の春も同じぐらいの人数、もしくはそれ以上を採用したい。


丸亀製麺では店舗ごとにできたての商品を提供している(写真:トリドールホールディングス)

──外食業界の正社員は異業種に比べても離職率が高いといわれています。

当社でも一定の離職者が出ているのは間違いないが、同業他社よりは少ない印象だ。新入社員でもいち早く活躍できる場を与えている。すぐに成果を出した社員が、入社後6カ月で店長に昇格するケースもある。

また、長時間労働にならないように上司が勤務状況を把握し、休暇を取れるように留意するなど、定着率向上に向けた努力も継続していく。

来店客数を伸ばすのが重要


粟田貴也(あわた・たかや)/1961年生まれ。学生時代のアルバイトで起業資金を貯め、1985年に焼き鳥店「トリドール三番館」開業。2000年に「丸亀製麺」第1号店を出店(撮影:尾形文繁)

──人員を増やすと、人件費負担が重くなりませんか。

人件費や原価高騰を意識して人員を減らしてしまうと、サービスが弱体化する。その結果、顧客の不満が募って来店頻度が下がり、売り上げが落ちる。この「負のスパイラル」が続くと店は存続できない。コスト削減から戦略を組み立てると、経営の方向を間違えてしまう。

肝心なのは売り上げを伸ばすことだ。常連客のリピート率向上や新規顧客の獲得など、来店客数を伸ばしていけるかが、最も重要だ。トリドールはセントラルキッチン(食材仕込み工場)を採用していない。あえて人の手をかけ、店舗ごとにできたての商品を提供している。こうした考えは「すべては、お客様のよろこびのために。」という経営理念に基づいたものだ。

──「顧客への奉仕精神」がいちばん大事ということでしょうか。

いや、それは違う。あくまで売り上げを上げることが重要で、そのための手段が「顧客に喜んでもらう」ということだ。売上高、利益を上げるために全社員が顧客満足度を上げていくことを理解しないと、われわれの成長は続かない。売り上げと無関係な経営理念には何の意味もない。

(『週刊東洋経済』12月2日号「トップに直撃」を転載)