年内にゾゾタウンとして初めてのPBが発売される。前澤友作社長は「超ベーシックアイテム」「科学やテクノロジーの力で実現する究極のフィット感」という言葉を繰り返した(写真:スタートトゥデイ)

「他社のブランドをコピーして、それを売るような卑劣なまねはしない。今までのファッション業界にはない商品や考え方、フィット感を提供することによって革命を起こしたい」

ファッションECサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイの前澤友作社長は、今年中に展開を始めるPB(プライベートブランド、自主企画商品のこと)について力強く語った。

10月30日に開かれた2017年度中間決算の説明会で、前澤社長がPBの概要について初めて具体的に言及した。これまで前澤社長は2017年度中に自社のPB商品を本格展開することは宣言していたものの、その内容はほとんど明らかにされていなかった。

PBを第2の収益柱に育てる

「超ベーシックアイテム」「科学やテクノロジーの力で実現する究極のフィット感」――。前澤社長はPBについて説明する中で、これらのキーワードを何度も繰り返した。ブランド名は明らかにしなかったが、実店舗は構えずにゾゾタウンのサイトのみで発売する予定。国内では今年中、海外は米国とドイツで来年春から販売を始める。

6〜7年前から企画を練っていたというPB。立ち上げの狙いについて、前澤社長は「もっと皆さんがスタイリッシュに格好よく着こなしていただけるような商品を提供し、ファッションを好きだと思う人を増やしたい」と話す。商品企画の過程ではIoT(モノのインターネット)を活用したり、ファッション業界では使われてこなかった製造設備を導入したりするなど研究開発にこだわったという。

当然、PBをファッションEC事業に次ぐ第2の収益柱にしようとする意図もある。順調に業績を伸ばしているゾゾタウンだが、アパレル各社は手数料のかからない自社ECでの販売比率を上げる戦略を強化している。

最近ではアマゾンジャパンもファッション事業に本腰を入れるほか、三井不動産は11月から「ららぽーと」などの商業施設と連動したファッションECを立ち上げる。外部環境が変化する中で将来的に出店ブランドの商品取扱高が伸び悩む事態となっても、PB事業で業績を支える可能性はある。

ただ、ゾゾタウンに出店するブランドからの手数料収入で成長してきたスタートトゥデイにとって、約6000に及ぶ出店ブランドと自社PBが競合すれば、結果的に利益相反となりかねない。

前澤社長も「デザインや価格の面で競合しないことを心掛ける」と強調する。PB商品のラインナップをベーシックアイテムとするのは、トレンドに合わせたデザイン性の高い商品を取り扱う出店ブランドと競合させない狙いもあるようだ。

在庫を抱える商売ではない?


スタートトゥデイの前澤友作社長。「PB生産は世界中の工場と提携する」と言及した(写真:スタートトゥデイ)

一方、懸念されるのが在庫リスクだ。ゾゾタウンの主力は一定量の在庫を委託形式で預かり、オンラインショップの運営管理を行う受託事業。そのためスタートトゥデイが出店ブランドの売れ残った在庫を抱えることはない。

PBの場合は自社でコストをかけた商品が売れ残れば在庫の処分につながり、収益を圧迫する可能性がある。ファッション業界は、天候やトレンドの変化によって商品の売れ行きが大きく左右される。売れ残った在庫を大幅値引きして販売し、粗利率の悪化に苦しむアパレル企業は少なくない。

こうした懸念について前澤社長は「在庫を大量に抱えてリスクを背負う商売にはならない。(PB販売が)始まってみれば、すぐに理解していただける」と述べ、事業展開のあり方について含みを持たせる。

PBの特徴について「究極のフィット感」をうたっている点を考慮すれば、大量生産をせずにオーダーメードなどのシステムを取り入れた商品展開もありうる。とはいえ、これまでとは大きく異なる新事業の立ち上げとなるだけに、経費コントロールや在庫管理を徹底できるかは未知数だ。

スタートトゥデイの2017年度上半期は売上高426億円(前年同期比35.3%増)、営業利益138億円(同30.6%増)で着地。通期では売上高1000億円(前期比30.9%増)、営業利益320億円(同21.7%増)と、いずれも過去最高を見込む。

国内のファッション市場を席巻してきたスタートトゥデイだが、前澤社長肝いりのPB投入はどのようなインパクトを与えるか。その全貌が明かされる日が近づいている。