結局のところ、最後は個で試合を決することがほとんどなので。もちろん、日本の最大のストロングポイントはチームワークですが、そんなものは生まれ持った能力なので、どう自立した選手になって個を高められるか。

 自分が前に出るという気持ちを持って、集まっているのが代表選手。ここからの1年は短いですが、考え方によってはまだ1年あるという見方もできると思います。真司や佑都みたいに本当のトップクラブでやっている選手もいますし、ただ、そうじゃないリーグやクラブでやっている選手もやれることはある」

 こうして振り返ると、本田の言葉には妙な説得力がある。ニュージーランドやハイチに苦戦したのもプレーの精度が足りなかったからで、その意味で日本は4年前と同じく、個の力不足という課題を抱えていると言えるだろう。

 10月シリーズで計2ゴールを奪った倉田秋、ハイチ戦で代表初得点を決めた杉本健勇、1アシストをマークした車屋紳太郎など存在感を示す選手はいたが、いずれも個で圧倒したというレベルではなかった。今回招集された24人のうち22人が出場したにもかかわらず(不出場はGKの中村航輔とDFの植田直通)、大きな発見はなかった。むしろ募ったのは危機感だ。事実、ハイチ戦後のハリルホジッチ監督も厳しい言葉を並べている。

「色々な選手のクオリティや反応を見たかったから、この2試合で22選手を使った。主力が怪我をした時のために、若い選手にチャンスを与える必要があったんだ。だから、もちろんビッグマッチを期待していたわけじゃないが、それでも今日(ハイチ戦)の出来は受け入れられない。チャンスを与えたのだから、もっと良い部分を見せてほしかった。

 もちろん、6月まで色々なことがある。(本大会登録の)23人を絞るまでまだ時間はある。1試合だけで判断するつもりはない。ただ、もし今日のようなパフォーマンスが続けば、全員を入れ替える必要がある」

 結局のところ、キャプテンの長谷部誠(10月シリーズは未招集)がいなければ、このチームはまとまらないのか。果たして、それが健全な状態なのか。アジア予選ならまだしも、世界の強豪が集うワールドカップ本選でこのベテランMFに依存するのはどうなのか。今回の連戦を経て膨らむのは不安ばかりだった。
 そもそも、現行の4-1-2-3システムはサッカー大国と戦ううえで適したフォーメーションなのか。私的な見解を述べれば、答は「ノー」だ。ニュージーランド戦とハイチ戦ではアンカーの両脇のスペースを突かれるケースが少なくなかった。世界的には「弱小」の部類に入るだろう彼らとの試合でさえ、そうした脆さを見せたのだから、改善・変更は不可欠だ。その意味で、11月の欧州遠征でどんなシステムを用いるかは興味深いところである。

 もっとも、ここから短期間で個の力が急激に伸びれば、4-1-2-3システムでロシア・ワールドカップを戦うことも可能だ。ただ、それはあくまで理想論。現実的には、粘り強く守ってカウンターという「弱者のサッカー」に徹する以外に本大会で躍進を遂げる手立てはないのではないか。

 モデルは、2010年の南アフリカ・ワールドカップでベスト16に勝ち進んだ日本代表だろう。「俺たちは弱い。恰好をつけている場合じゃない」(田中マルクス闘莉王)という現実を受け入れ、あえてベタ引きし、個々のハードワークをベースとしたサッカーでチャンスを窺った、あのスタイルこそ模範とすべきだ。

 もっとも、当時の日本代表にも闘莉王や中澤佑二といった“強烈な個”がいた。それに比べると、今のハリルジャパンは個性さえも足りない。監督の指示に従いすぎる傾向が強く、それがかえって個々のキャラクターを消してしまっている印象さえある。

 本田の言葉を今一度思い出すべきだ。「結局のところ、最後は個で試合を決する」ことを──。単なる組織ではなく、個も融合した集合体にならないと、ワールドカップへ明るい展望は開けない。

文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)