リヤドに本拠を置くアル・ヒラルは自らを「アジアの世紀のクラブ」と謳う。それは1980年代後半から2000年代序盤にかけて、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の前身であるアジアクラブ選手権で優勝2回、準優勝3回の実績を誇ったからであり、域内を代表するクラブと自負しているのだ。

 
 しかしながら、その期間は彼らの絶頂期と言うべきで、2000年の優勝を境にアジアでの存在感は薄れていった。2014年にはACLと名称が変わってから初の決勝に進出したが、ウェスタン・シドニー・ワンダラーズに敗れて準優勝。3年ぶりに決勝へ戻ってきた彼らは、今度こそ頂点に立ち、ACLのトロフィーを手にしようと意気込んでいる。
 
 黄金期のチームには当時のサウジアラビア代表の主軸が顔を揃えていたが、元Jリーガーのラモン・ディアス監督率いる現チームにもタレントは揃う。
 
 なかでもエースストライカーのオマル・カルビンは、浦和レッズが最も注意すべき選手だ。この23歳のシリア代表は今大会中随一の決定力を誇り、その風貌と猛々しいプレースタイルから、スペイン代表FWジエゴ・コスタと比較されるほど。準決勝の2試合で5得点を積み重ね、今大会通算8ゴールで得点ランキングのトップに立っている。
 
 中盤で創造性を発揮するのはサウジアラビア代表のふたり、アル・ファライとナワフ・アル・アベドだ。またウルグアイ人のニコラス・ミレシはセットプレーの名手で、絶妙なボールを味方に届ける。主なターゲットは空中戦に強いカルロス・エドゥアルドとなり、このブラジル人は中盤の全域で高質な仕事を約束する。
 
 最終ラインを束ねるのはベテランのオサマ・ハウサウィだ。高さと強さ、そして豊富な経験を備えるこのCBは、サウジアラビア代表と同じ仕事をぬかりなく遂行する。
 
 アル・ヒラルはアジアの大会の決勝で4度、日本勢と対戦している。1986年のアジアクラブ選手権で古河電工、1987年に同大会で読売クラブに敗れているが、以降は2勝──1996年のアジアカップウィナーズカップ決勝で名古屋グランパスエイトを、2000年のアジアクラブ選手権決勝でジュビロ磐田を下しているのだ――。
 
 おそらく苦手意識はないし、ディアス監督はかつてプレーした日本のサッカーをよく知っているはずだ。10年ぶりのアジア制覇を目指す浦和の前に、難敵が立ちはだかる。
 
文:マイケル・チャーチ
翻訳:井川洋一