日本は正直だな、と思う。

 8月31日のW杯最終予選で来日するオーストラリアが、30人の予備登録メンバーを発表した。8月15日の午後に、インターネットメディアが一斉に配信した。

 発表されれば、見たくなる。昨年10月のアウェイゲームのメンバーや、6月のコンフェデ杯に出場したチームと比較して、アンジェ・ポストコグルー監督の戦略や戦術に思いを巡らせてしまう。

 韓国や中国のクラブに所属する選手がDFラインに多いので、守備陣は長距離移動や時差の影響を受けないのか。“日本キラー”として名を馳せてきたティム・ケーヒルが出てくるなら、やはり終盤のジョーカーになるのか……思考はあちこちに飛び、簡単にはまとまらない。

 互いに既知の相手だから、情報戦に持ち込むのは難しい。そもそもインターネットを検索すれば、本田圭佑がパチューカへ移籍したことも、新天地でまだ試合に出ていないことも分かる。3月、6月のW杯予選をケガで欠場した長谷部誠が、フランクフルトで実戦に復帰していることも。

 オーストラリアの予備登録メンバーには、横浜F・マリノスに所属するミロシュ・デゲネクが含まれている。彼が発信源となり、日本の最新情報が伝わっている可能性は高い。

 今回のゲームは、どちらにとっても負けられない。ロシアW杯への決戦だ。日本のホームに乗り込んでくるオーストラリアも、勝点3を積み上げたい立場にある。

 そうしたなかで、日本の予備登録メンバーが意外性を含んでいたら? インターネットでも、デゲネク発の情報でも事前に辿り着けなかった選手を、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が予備登録メンバーとして発表したら?

 ポストコグルー監督は、多少なりとも戸惑うのではないだろうか。事前の情報発信は、自分たちの手の内(の大枠)を見せてしまう一方で、相手の心理を多少なりとも揺さぶる効果がある。あらかじめ伝わってきた情報は、誰だって見逃せないからだ。
情報戦などというものは、そもそも成立しない時代かもしれない。そうだとしても、ロシアW杯への大一番なのだ。チームにとってプラスになりそうことは、何だってやっておきたい。心理戦を仕掛けるのも、そのひとつだろう。戦いはすでに始まっているのだ。

 それは、相手への心理的な圧力に止まらず、日本のファン・サポーターへのメッセージにもなる。国内の興味や関心を高めることにもつながっていく。

「オーストラリアに絶対に勝つ。ホームでW杯出場を決める」という必死さを、ハリルホジッチ監督はもっと分かりやすく表現していいのではないだろうか。繰り返すが、大一番なのだ。