四大大会で唯一8強進出経験なしも、FOXスポーツは日本のエースを「希望」と特集

 テニス男子シングルス世界ランク9位の錦織圭(日清食品)は、ウィンブルドン1回戦で同102位マルコ・チェッキナート(イタリア)と対戦し、6-2、6-2、6-0のストレート勝ちで好発進した。グランドスラムで唯一8強進出の経験がない“鬼門”での挑戦を続ける日本のエースに対し、米メディアはウィンブルドン優勝に向けた「アジア最大の希望」と報じている。

 錦織は初戦をわずか1時間12分で突破。ウィンブルドンで順調な第一歩を踏み出した。米テレビ局「FOXスポーツ」電子版では、「ニシコリは依然としてウィンブルドンで成功を収めるアジア最高の希望」と特集している。

これまでウィンブルドンでは、女子シングルスで1995年に伊達公子、2008年に中国の鄭潔がアジア勢としてベスト4入りを果たしている。しかし、一方の男子シングルスのアジア最高位は、錦織の“師匠”が記録したものだ。記事では、「シュウゾウ・マツオカは1995年にベスト8に進出した。猛反撃を食らうまで、ピート・サンプラスから最初のセットも手にしたのだ」と振り返っている。

 そして、「誰が2002年にロンドンとバンコクで起きた大興奮を忘れることができようか」と記し、2002年大会の2回戦で優勝候補のアンドレ・アガシを倒したタイ人のパラドーン・スリチャパンの躍進についても触れている。スリチャパンは翌03年大会の3回戦でもラファエル・ナダル(スペイン)を下すなど、英国でスリチャパン旋風を巻き起こした。

「高速でもパワフルでもないサービスは、男子の芝の試合では大きな不利益」

 そして今、アジアのテニス界は“錦織時代”だ。

 記事では、「すべての東洋のテニスファンの期待は、ケイ・ニシコリの双肩にほとんど課せられることになる」との見方をしている。ただ、その一方で優勝に向けた高いハードルも存在するという。

「世界9位の日本のスターはポテンシャルを持っているが、芝がお気に入りのサーフェスではないことは明確だ」

FOXスポーツは、グランドスラム唯一の芝コートで錦織がこれまで成功を収められていないデータを示している。全米オープンでは2014年大会に決勝でマリン・チリッチ(クロアチア)に敗れたものの準優勝を飾り、全豪オープンでは準々決勝に3度、全仏オープンでも2度進出している実績と比較。「ウィンブルドンではいまだ、彼の最高成績は4回戦。過去2大会は怪我で棄権を強いられている」と鬼門ぶりと指摘している。

さらに、記事では「素早いグラウンドストロークと堅実なバックハンド」という武器を誇る錦織が芝のコートで苦しむ理由について、「そこまで高速でもパワフルでもないサービス。男子の芝の試合では大きな不利益となっている」と分析している。

錦織は「トップ4シード選手のスランプにつけ込むことができる1人」と分析

 それでも、錦織にはこれまでの鬼門だったウィンブルドン攻略の可能性が存在するという。世界ランク1位のアンディ・マレー(英国)、同4位ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は今季本調子ではなく、全仏オープンで10度目の優勝を果たした“赤土の帝王”ラファエル・ナダル(スペイン)も、2年間芝のコートでの大会でプレーしていない状況。FOXスポーツは「希望は存在する。他の優勝候補も絶好調ではない」としている。

“芝の帝王”と呼ばれるロジャー・フェデラー(スイス)が優勝候補筆頭となるが、記事では「錦織はトップ4シード選手のスランプにつけ込むことができる、もう一つ下のグループの1人だ。優勝候補の1人とは言えないが、かなりのチャンスはいまだに存在する」との見解を述べている。

今季まだタイトルを手にしていない錦織には、ウィンブルドンでの活躍にアジアから大きな期待が寄せられている。