●ハウステンボスがドローンライトショーを開催へ

ハウステンボスとインテル、hapi-robo stは共同で、長崎のハウステンボスにおいて日本初となるドローンによるライトショーを展開することを発表した。海外では普及しつつあるドローンのライトショーだが、日本においても普及する余地はあるのだろうか。

○ライトショー専用ドローンを300機同時使用

ハウステンボスが開催するのは「Intel Shooting Starドローン・ライトショー」だ。これはインテル製の「Shooting Star」ドローンを使った光のショーで、このドローンを数百機単位で飛行させ、プログラム制御でLEDを点灯してフォーメーション飛行することで、空中にアニメーションを描くというもの。これまでに米国をはじめオーストラリア、ドイツ、オーストリア、メキシコ、シンガポールなどで開催されており、昨年11月には1人のパイロットで同時に500機のドローンを飛ばすというギネス記録を達成している。

Shooting Starドローンはライトショー専用に設計されており、サイズは幅384x奥行き384x高さ93mmと標準的なホビードローンと同等ながら、重さは280gと非常に軽量。最大飛行距離は1.5km、最大飛行時間は約20分。ライトショー時は秒速最大3m(時速10.8km)、GPSモードでは秒速10m(時速54km)で飛行できる。風については風速8m程度までは耐えられるという。ライトショーに利用するLEDライトは赤・青・緑・白の4色で構成され、約40億色を表現できるという(各色256段階と思われる)。

●ドローンライトショーでオンリーワンに

ハウステンボスのCTOであり、hapi-robo stの代表取締役でもある富田直美氏は、ロボットがメインスタッフの「変なホテル」の開業をはじめ、最先端技術を体感できる「ロボットの館」、店長と料理長がロボットの「変なレストラン」など、ロボットの活用を加速させてきた人物だ。今回のライトショーについても「ドローンでの夢」と表現し、「本当はドローンの編隊飛行を自分で開発したかったが、大変難しかった。それをインテルが実現したことで、世界最高水準のドローンによるデジタル花火をお客様にナンバーワン、オンリーワンとして提供できる」と語った。

○日本でもドローンのライトショーは根付くか?

ハウステンボスでは7月22日から8月5日までの間、Shooting Starドローン300機によるショーを実施する予定で、音楽に合わせて3Dアニメーションなどを表現するという(雨天中止)。期間中の7月22日と8月5日は「夏一番花火大会」および「スペシャルテーマ花火」がそれぞれ同時開催される予定。

この両日は花火とライトショーが同時に開催されるため、伝統的なアナログの花火と、最新テクノロジーであるドローンのライトショーが同時に楽しめる、まさに前代未聞の貴重な機会になる。

海外ではレディ・ガガのコンサートやスーパーボウル、ディズニーランドのショーなどに活用されて、かなり市民権を得てきているドローンによるライトショーだが、日本においてはほぼ完全に未開拓の市場だ。

筆者が知る範囲では、NTTドコモなどがドローンの編隊を使って空中に広告などを描いたり、災害時の情報発信などに利用することを研究しているが、まだまだせいぜい数十台での研究段階。インテルのShooting Starはすでに多数の実績がある点や、同時制御の台数などで大きく水を開けている。

エンタテインメントとしてドローンライトショーを考えたとき、花火やプロジェクションマッピングと比べると、空中を舞台にするため、同時に楽しめる人数の点で建物の壁面を使うプロジェクションマッピングを上回り、騒音や正確性において花火を上回ることができるといったメリットがある。

●頭痛の種はコストの問題

○ドローンライトショーを巡るいくつかの問題

日本でも今回のショーを皮切りに、今後本格的なドローンライトショーが広まっていくだろう、と結びたいところだが、いくつかの問題もある。

まず、人口集中地ではドローンを飛ばすこと自体が難しい点だ。日本ではレジャー施設やスタジアムなども比較的住宅の近くにあるケースがあり、こうした場所ではドローンを飛ばした時に事故が起きる可能性がある。

ハウステンボスの場合、私有地である上に飛ばすのは海上ということもあって、万が一の際にも事故が起きないという判断で実施するとのことで、こうした条件を満たせる場所はやや限られそうだ。

続いてがコストの問題だ。ドローンによるライトショーは数百機というドローンの数に加え、制御は一人でもできるとはいえ、ショーの実施するためには数多くのスタッフが必要だ。

トータルコストについて具体的な金額は公表されなかったが、ハウステンボスの澤田秀雄社長は「花火よりちょっと高い」と表現していた。ハウステンボスの花火大会は九州でも最大級の1万8000発(「夏一番花火大会」の場合)を打ち上げるが、1万発規模の花火大会で人件費を含めた費用が5000万〜1億円程度と言われており、ライトショーの値段は少なくとも1億円以上はかかるとみられる。こうなると、実施できる期間は相当限られてしまう。

とはいえ、場所の問題は花火大会が実施できる場所であればクリアできるだろうし、コスト面もスポンサーをつけるなりすれば問題はない。こうしたエンタテインメントは回数を重ねて経験値をためることで安全性や確実度が高まり、コスト減にも繋がっていく。

日本で楽しめる最新エンタテインメントの一つとしてドローンライトショーを定着させるためにも、その嚆矢となるべく積極的に導入に動いたハウステンボスの英断を歓迎したい。