だから他の企業は“残業・転勤含み”での採用が前提なのであえて聞くことはしない。ではあえて聞く企業の意図はどこにあるのか。調査した連合は「残業しにくい人が多い女性を採用しないことにつながる」点を懸念しているが、そればかりではないだろう。 残業なくしてはビジネスが成り立ちにくい企業も多いだろう。24時間フル稼働の運輸業や発注先での常駐勤務もあるIT・ソフトウエア業界だけではなく、取引先・顧客に対応する営業や販売主体の業種では定時に帰れること自体が難しい。企業にとっては残業が続いて短期間に辞められては困るという意識も働いているのかもしれない。

 しかし、安易に「残業や休日出勤ができるか」と質問すれば、学生は残業が常態化し、場合によっては長時間残業が蔓延している企業かもしれないと思われる可能性もある。今年の就活戦線では墓穴を掘ることになりかねない。 例年のように「残業や休日出勤ができますか」と聞いたら敬遠されるかもしれない。逆に「1カ月の平均残業時間はどのくらいですか」「労働基準監督署の臨検や是正勧告を受けたことがありますか」「36協定の特別延長時間はいくらですか」と、突っ込んだ質問が来ないとも限らない。

 それよりは長時間労働対策など働き方改革に取り組んでいる内容をまとめて、真摯に対応したほうが無難だろう。