そうでなければ、今冬に獲得した3人の選手のうち、2人も彼と同じポジションの選手をというのはありえない。
 
 ひとりはエバートンから半年レンタルで迎えたジェラール・デウロフェウ。1月23日のミラン加入以降、すでにコッパ・イタリアのユベントス戦とセリエAのウディネーゼ戦で、本田を差し置いて途中出場している。
 
 バルセロナのカンテラ育ちの22歳は、右利きのサイドアタッカー。左右どちらのサイドでも機能し、ここ2試合はいずれも左ウイングで使われていた。天才肌の例に漏れず調子に波があるのは玉に瑕だが、テクニックとキックを駆使した打開力は一級品。スペインのユース代表時代にチームメイトだったスソと同じく、アタッカーに個の力を求めるモンテッラの好きなタイプだ。
 
 当初のミランの予定では、このデウロフェウで獲得は打ち止めだった。しかし、突如として予期せぬ出来事が起こる。前半戦は左ウイングのレギュラーだったエムバイ・ニアングを、急転直下で放出することになったのだ。
 
 年明け以降、モンテッラとニアングの関係は急速に悪化していた。コンディション不良で先発落ちが続いた22歳はモチベーションを落とし、これに激怒したモンテッラとチームメイトの前で激しい口論に発展したという。
 
 こうしてモンテッラ、チームメイト、そしてクラブ首脳陣を呆れさせたニアングは、1月26日にワトフォードへと放出された。当面は今シーズン末までのレンタルだが、10ゴールを決めれば買い取り義務が発生する。
 ミランがニアングを放出した時点では、本田にまた明るい兆しが見えてきたかのように思えた。
 
 しかしミランは、その代役を求めて再びメルカートに戻ってしまった。目を付けたのはルーカス・オカンポス。今シーズンはマルセイユからレンタルされたジェノアで台頭した22歳のアルゼンチン人アタッカーで、1月30日に半年レンタルでの加入が決まった。
 
 リーベル育ちで、アルゼンチンの選手らしくフィジカルとテクニックを兼ね備えている。本職はウイングだが、セカンドトップ、トレクアルティスタ(トップ下)でもプレーできる万能型のアタッカーだ。早ければ2月5日のサンプドリア戦でデビューするだろう。
 
 ちなみに、1月29日のウディネーゼ戦ではジャコモ・ボナベントゥーラが左内転筋の腱の剥離という大怪我を負う。緊急手術したが復帰まで4か月を要する状態で、今シーズン中の復帰は絶望的となった。
 
 今シーズンはインサイドハーフと左ウイングでハイパフォーマンスを見せてきたボナベントゥーラの長期離脱は、ミランにとって大きな痛手だ。
 
 ただし、ボナベントゥーラ離脱も本田にはあまり関係ないだろう。結局のところ左ウイングはニアングとボナベントゥーラが抜け、そこにデウロフェウとオカンポスがスライドしてきた格好。さらに新戦力ふたりはともに、スソが絶対的地位を築く右サイドでも機能する。両サイドの控えだった本田の地位は、前半戦よりさらに厳しくなったと言っていい。
 
 そう、後半戦も本田はモンテッラ構想における最下層だ。年明けの6試合で本田がプレータイムを得たのは、コッパ・イタリアのユベントス戦のみ。それもロスタイムのたったの2分間だけだった。
 
 もはやお先真っ暗である。にもかからず、冬のメルカートでは退団を志願せず残留してしまった。理解に苦しむ選択と言わざるをえない。
 
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)
翻訳:利根川晶子
 
【著者プロフィール】
Marco PASOTTO(マルコ・パソット)/1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動を始める。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。