若年労働力の不足が深刻になる中、多様な労働力の活用が課題となっており、従来型の採用手法では人材確保が難しくなっている。2017年の日本の雇用情勢と企業の人材採用数の予測を、企業の人材採用を支援する主要人材コンサルティング会社50社を対象にアンケート調査で聞いた。

 本誌が実施した企業の採用を支援する人材コンサルティング会社への調査では、2017年の日本の雇用情勢は良くなるという回答が63%、横ばいが33%、悪くなるが4%となった。企業の採用計画の予測も同様に、増加するが過半数を占めている。今年も高い水準の人材需要が続き、人材採用はますます困難を極めることになりそうだ。 今後の人材採用を考える上では、少子高齢化と労働力人口の減少を前提としなければならない。リクルートで転職情報サービスを提供する佐藤学リクルートキャリア執行役員は、「労働人口は減少の一途をたどっている。一方で企業は生産性の向上を求められている。今後はより、採用した人材が定着し、その企業でいかにイキイキ働き活躍してもらえるかが重要となる」と指摘する。 特に若年労働力の不足は深刻だ。大学などへの進学や就職の年齢でもある18歳人口はこれまで約120万人を維持してきたが、2021年から減少傾向に転じ、2030年頃には100万人を割り込むと推計されて
いる。これは「団塊の世代」の4割にも満たない。 リクルートワークス研究所が算出した17年3月卒業予定の大卒求人倍率(修士含む)は1.74倍となり、前年の1.73倍とほぼ同水準。全国の民間企業の求人総数は前年の71.9万人から73.4万人と1.5万人増加。一方、学生の民間企業就職希望者数は、前年41.7万人からほぼ横ばいの42.2万人で、引き続き売り手市場となっている。 18年卒の採用活動は、3月広報開始、6月選考開始、10月正式内定という経団連のスケジュールが継続されることになった。17年卒の採用活動では、学生エントリーの減少に苦しんだ企業が続出したこともあって、新卒採用支援会社のヒューマネージ齋藤亮三社長は、「広報解禁前(いわゆるプレ期)の活動も含め、早期化・短期決戦化がますます進む」と予測する。 本誌の調査でも18年卒の採用活動では17年卒以上の求人数増加が予想されている。学生に対して認知度の低いBtoB企業や中小・ベンチャー企業で採用に成功しているのは、自社の魅了の発信と経営者や働く社員への共感を前面に打ち出して、インターンシップや会社説明会に早期に取り組んだ企業だ。

 自社の魅力を伝えて共感を生むことで意欲の高い優秀な学生を採用できているし、そのような企業では内定辞退も少ない。もはや賃金や処遇だけが魅力の採用活動では意欲の高い学生は確保できない。経営者、社員が様々な機会を通して会社の魅力を全社で伝えていくような採用活動に取り組む必要がある。 中途採用も人材争奪戦の様相だ。人材紹介大手ジェイ エイ シー リクルートメントの松園健社長は、「(東京五輪開催の)20年までは語学力を有する人材ニーズの高まりは継続する。さらに、フィンテックやIoT関連、ロボット、自動車業界の自動運転関連の需要、各業界で注力しているAI関連の需要も引き続き高い需要が続くだろう」と展望する。

 同様に、プロフェッショナル人材の紹介を行うコンコードエグゼクティブグループの武中康泰エグゼクティブコンサルタントも「AIやフィンテックなどの新技術に関するスペシャリストのニーズは高まるばかりで、多くの企業で活発な採用が継続」と見込んでいる。 売り手市場化がさらに進み、どの企業も求めるようなスキルや経験を持った人物には複数のオファーが集中する。そのため従来の採用手法では人材を確保できない企業が続出するだろう。