先のトリノ戦も、出場停止だったエムバイ・ニアングの代わりとなる左ウイングでボナベントゥーラ、インサイドハーフでベルトラッチが先発。モンテッラは他の選手は替えることができても、スソとボナベントゥーラだけはどうしても外すことができないのだ。
 
 実際、トリノ戦のゴールはこの2人から生まれた。1点目はスソのミドルシュートをGKが弾き、そのこぼれ球を拾ったボナベントゥーラがユライ・クツカの得点をアシスト。2点目はスソの斜めのロビングパスを、ボナベントゥーラが右足ダイレクトで叩き込んだ。
 
 ミランはこれから、トリノ戦(1月16日のセリエA20節)、ナポリ戦(1月22日のセリエA21節)、そしてユベントス戦(1月25日のコッパ・イタリア8強)と強豪との連戦が続く。本田に出番が回ってくる可能性は極めて低い。
 
 本田とミランの日々は、これからも変わらないだろう。本田は一生懸命に練習をして、それを見てモンテッラは彼のプロ精神と献身を公の場で褒め称える。その繰り返しだ。
 
「本田は素晴らしいプロフェッショナル。チームの手本となるべき存在だ」
 
 今やお馴染みとなったモンテッラのこの賛辞は、おそらく彼の本心から出たものだろう。しかし、これだけ使ってもらえないとなれば、本田はまるでからかわれているような気分になっても不思議ではない。
 わたしは数日前、日本代表監督のヴァイッド・ハリルホジッチが「もし継続してプレーできないのなら、チームを変えたほうがいい」と、本田に向けてメッセージを放ったという話を聞いた。
 
 現在の本田は、ミランで続けてどころか、まるでプレーすることができていない。世界中のどの代表監督であってもきっと、同じことを言うだろう。
 
 言うまでもなく、代表チームの活動時間は極めて少ない。だから代表監督にとって、選手たちが普段からプレーのリズムを身につけていることが非常に重要だ。
 
 本田はこれまで、日本代表のシンボルだった。しかし、彼はそのポストさえも失う可能性があるのだろう。そうならないためにも、ハリルホジッチはまず本田に忠告し、彼がそれに従うかを見ているのかもしれない。
 
 しかし、状況は前回のコラムから何も変わっていない。本田には中国、MLS、プレミアリーグ(サンダーランド、ワトフォード、サウサンプトンなど)のクラブが興味を示しているというが、「本人とクラブが交渉に入った」、「移籍金がいくらで、年俸がいくらのオファー」という具体的な情報は、まったく入ってきていない。私が働く『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙にも、その他のメディアにもだ。
 
 とはいえ、このままミランにいても本田の状況が変わるとは到底思えないし、さらに悪化する可能性すらある。いまミランは、エバートンからジェラール・デウロフェウを獲得すべく動いている。そう、両ウイングの控えとして。本田はいわば八方塞がりだ。
 
 しかし同時に、前回も書いた通り、「いま本田を放出しても大した収入にはならない。それならシーズン終了まで手元に置いても、まあ害にはならないだろう」と考えるミランは、この1月に本田を手放す気がない。つまり、全ては本田自身にかかっているのだ。
 
 アドリアーノ・ガッリアーニ副会長のオフィスのドアを叩き、「俺を放出してくれ」と頼めば、「NO」とは言われないはずだが……。
 
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)
翻訳:利根川晶子
 
【著者プロフィール】
Marco PASOTTO(マルコ・パソット)/1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動を始める。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。