ミラノの指揮官ヴィンチェンツォ・モンテッラがどんな采配をするか、サポーターやジャーナリストは常に注目している。
 
 イタリア国内のカップ戦は、普段のレギュラー陣を休ませるチャンスであり、同時にセリエAではチームメイトのプレーを観戦することの多い選手たちに出場機会を与える良いチャンスでもある。
 
 もちろん最低限のバランスを保つ必要があり、11人すべてを入れ替えるのは無理だが、それでも多少のターンオーバーが使われることが少なくない。
 
 ミランは年明け最初の試合だったカリアリ戦(1月8日のセリエA19節)を1-0で何とかモノにし、その4日後の1月12日にはコッパ・イタリア5回戦のトリノ戦に臨んだ。
 
 1月16日にはセリエA20節で再びトリノと対戦予定で、9日間で3試合の過密日程だ。本田圭佑に出番が回ってくる可能性は、普段よりは高いはずだった。先発かはともかく、途中出場のチャンスはあるように見えた。
 
 右ウイングのスソは、GKジャンルイジ・ドンナルンマに次いで、つまりフィールドプレーヤーではここまでもっともプレータイムが長い。このスペイン人アタッカーをここで1試合休ませるか、もしくは使う時間を制限し、代わりに本田を使っても不自然ではなかったはずだ。
 
 しかし、それは実現しなかった。休みが与えられた主力は、CBのアレッシオ・ロマニョーリ、アンカーのマヌエル・ロカテッリ、CFのカルロス・バッカという3人(それぞれの代役はグスタボ・ゴメス、ソサ、ジャンルカ・ラパドゥーラ)。その一方では右ウイングはスソが先発フル出場し、本田はずっとベンチの出番なし――。いつものお馴染みの光景が繰り返された。
 
 その理由のひとつは、今回の対戦相手であるトリノがセリエAでも欧州カップ戦行きを争っている手強いチームであり(19節終了時点で8位)、そのうえ彼らがターンオーバーを使わずベストメンバーで挑んでくることが事前に分かっていたからだ。
 
 しかし、なによりも最大の理由は、モンテッラがスソを外したくなかったからだろう。指揮官は例え片足のスソでも、両足の本田よりもマシとすら考えているフシすらある。
 
 だから本田には、プレータイムが与えられなかった。状況はシンプルだ。
 本田の出場機会がまるでなかった試合は、今シーズンで早くもこれが14回目(20試合中)。もはや彼はスソのライバルですらない。おまけにこの決定は、スソの調子を見て試合直前になされたものではなく、事前に決められていた。本田にとっては最悪だ。
 
 そう、モンテッラの頭には、「スソの代わりに本田を使おう」などという案がこれっぽっちも浮かばなかったのである。
 
 しかし、このコラムで毎回のように繰り返しているが、忘れてはいけないのは、スソが単にモンテッラのお気に入りだから主力を張っているわけではないということ。いまやミランの攻撃は彼なしでは考えられないほどの存在感を放っており、スペイン代表入りも噂されるほどのパフォーマンスなのだ。
 
 ベスト16とはいえ、コッパ・イタリアは一発勝負。だからモンテッラは、信頼に応える活躍を見せているスソを先発に送り出したに過ぎない。
 
 また、MFのアンドレア・ベルトラッチが、間接的であるにしても本田の立場をより難しくしている。開幕直後の怪我で長く戦列を離れていたイタリア代表MFは、12月に入って復帰すると、直近の公式戦5試合中4試合でスタメン起用され、好パフォーマンスを見せている。
 
 このベルトラッチがインサイドハーフで計算できるようになったため、インサイドハーフ兼左ウイングのジャコモ・ボナベントゥーラをより左ウイングで起用しやすくなった。このポジションは本田がプレーできるもうひとつの可能性だったが、それすらも塞がれたのだ。