肉を楽しむスタイルがさらに広がりを見せた2016年。ここ数年はステーキの熟成肉や、焼肉における稀少部位などが取りざたされてきたが、今年はより深化が進んだと言える。

その象徴が松濤にできた『ELEZO HOUSE』。その正体は、北海道十勝を拠点に、生産狩猟などを行う食肉料理人集団であった。昨今のジビエ人気からの真打ち登場に業界も湧いた。肉好きたちが唸った、珠玉のお皿たちをここに紹介する。



「自社狩猟蝦夷鹿のロースト 3歳牝と2歳牡の盛り合わせ」。おまかせ¥12,000より
北海道からジビエの魅力を発信。名高い狩猟集団が満を持して東京進出『ELEZO HOUSE』

渋谷・松濤


その狩猟方法が肉の質を左右するといわれるジビエ。ここ数年ブームが続いているが、いよいよその真打ちの登場となった。北海道・十勝の食肉料理人集団「エレゾ」は、野生動物の狩猟や放牧で育てる家畜や家禽類の生産・加工を手掛けており、都内の名だたるレストランに指名される素材の確かさで知られている。

創業11年目となる今年、松濤にレストラン『ELEZO HOUSE』をオープンした。日本でも、もはや生産から皿の上までを一直線に結ぶ時代がやってきたのだ。



上が3歳の牝鹿、下が2歳の牡鹿。牝は繊維が柔らかくしっとり、牡は歯切れのいい柔らかさ。料理の前に肉を見せることで肉文化を知ってもらいたいという


代表である佐々木章太さんは北海道出身。東京の老舗フランス料理店で腕を磨いた後、地元に戻り、ヨーロッパの食肉文化に深い敬意を抱いて同社を起こした。専属のハンターを雇用し、野生動物の狩猟においても厳しいルールを設ける。品質から解体、加工に至るすべてを最高のレベルで行っている。

おまかせコースは肉を使った8〜9皿の構成で内容は日替わり。月齢と性別の違う鹿を同時に味わう一皿のように、ただ美味しいだけでなく、肉文化への造詣を深めたいという。

「ジビエをブームではなく、ひとつの食文化とする役割が担えれば」と佐々木さん。

日本のジビエブームもここにきてようやく成熟の兆しが見えてきたのかもしれない。



「パテアンクルート」。鹿、シャモ、ヒグマ、キジバト、フォアグラなど数種類の肉を重ねて



代表の佐々木さんは素材と真摯に向き合うひとりの料理人でもある



カウンターの席のほか、2階にはエレガントな個室もある



一見してレストランとは気づかない邸宅。思いを理解してくれる人に食べてほしいという気持ちから紹介制だ。今回は特別枠を確保。「東京カレンダーを見た」旨を記載すればホームページ(http://elezo.com/)から特別に予約ができる