超大型望遠鏡により、生まれたばかりの原始惑星系円盤からどのように惑星サイズの天体が生まれていくのかが、よりリアルタイムで観測できるようになってきた。観測している数カ月の間に、その形の変化が見られるケースもある。

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文学者たちは、新しく生まれた恒星の周囲を取り巻く「原始惑星系円盤」(protoplanetary disk)を調べることによって、惑星がどのように形成されたのかという謎の解明に近づきつつある。

原始惑星系円盤は、生まれたばかりの恒星と、その周りを回るガスとダストの巨大な円盤で形成されている。その規模は巨大で、数十億kmに及ぶほどだ。

その後、時間の経過とともに、この円盤の粒子が結合して惑星サイズの天体になっていくのだが、この過程の詳細はほとんど知られていない。

ヨーロッパ南天天文台がチリ・パラナル天文台に建設した超大型望遠鏡「VLT」(Very Large Telescope)で2014年から行われている、系外惑星観測プロジェクト「Sphere」(Spectro-Polarimetric High-contrast Exoplanet Research:分光偏光高コントラスト太陽系外惑星探査)によって、こうした原始惑星系円盤を観測できるようになった。原始惑星系円盤が次第に、輪や渦状腕、影のように見える空間へと形を変えていくプロセスが解明されつつあるのである。

地球から600光年の位置にある若い恒星「RX J1615」。PHOTOGRAPH COURTESY OF ESO

例えば、さそり座を構成する恒星「RX J1615」の周りには、同心円状の輪から成る複雑系が存在し、土星の周りを回るタイタンの輪によく似た形を成している(冒頭写真:右)。この系が誕生したのはおよそ180万年前と見られ、その円盤は、現在も形成過程にある惑星によって形づくられているという。

RX J1615が180万年前にできたという「若さ」こそが、これを「注目すべき系」にしている理由だと、オランダにあるライデン天文台のヨス・デ・ボエールが率いるチームは述べている。これまでに発見された原始惑星系円盤のほとんどが、比較的古いものばかりだからだ。

同じくライデン天文台のクリスチャン・ジンスキーが率いるチームは、地球から約500光年の位置にあるカメレオン座の若い恒星「HD 97048」を観察した。この恒星を取り囲む若い円盤も、同心円状の輪を形成している(冒頭写真:左)。

さらに、アムステルダム大学アントン・パネコック天文学研究所のトーマス・ストーカー率いる天文学者たちは、地球から約450光年離れている恒星「HD 135344B」を取り巻く円盤は、巨大な中心腔と2本の渦状腕から成る構造をしていることを発見している(冒頭写真:中)。

HD 135344Bの円盤の影のように見える、4本の暗い縞も確認されている。そのうちの1本は、観察している数カ月の間に大きく変化した。これは惑星の進化をリアルタイムで観察するという、非常に珍しいケースである。

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