「マンション内ではあいさつをしないように決めてください」――。神戸新聞の読者投稿欄『イイミミ』に寄せられた、住民同士の「あいさつ」をめぐる投書がインターネット上で賛否両論の波紋を広げている。
投書を寄せたのは、神戸市内のマンションで管理組合の理事を務めている男性(56)。住民総会で「マンション内でのあいさつ禁止」が決まったことについて、「理解に苦しんでいます」と訴えている。ネットの反応は、大半がこうしたルールに疑問を投げかけるものだが、中には「理解できる」という意見も出ていて、マンションの住人関係の難しさを垣間見せている。
「知らない人にあいさつされたら逃げるように教えている」
話題の投書は2016年11月4日付の神戸新聞夕刊に、『理解に苦しんでいます』というタイトルで掲載された。
投書によれば、住民同士で「あいさつをやめましょう」とのルールが生まれたのは、小学生の子供を持つ親が発した一言がきっかけだった。その親は、マンションの住民が集まる総会の中で、
「(子供に)知らない人にあいさつされたら逃げるように教えているので、マンション内ではあいさつをしないように決めてください」
と提案したという。その上で、子供には声をかけられた相手が住民かどうかを判断できないことから、「教育上困ります」とも話していたそうだ。
この提案に、総会に出席していた年配の住民も賛同。あいさつをしても相手から返事がなく「気分が悪かった」として、「お互いにやめましょう」と意見が一致し、最終的に「あいさつ禁止」のルールが明文化されることになったという。
「単純に寂しい」「これは仕方ない」
一連の顛末について、投稿者は「世の中変わったな、と理解に苦しんでいます」と投書を結んでいる。
この投書は、あるネットユーザーが紙面を撮影した画像をツイッターに投稿したことをきっかけに拡散され、大きな注目を集めることになった。ツイッターやネット掲示板には、
「あいさつできるか否かでトラブル減ると思うんだけど」
「将来的にも困るし、逆に誰が近所の人なのかわからない方が困る」
「挨拶しないことがどう防犯に繋がるのか分からないけど、挨拶しないことによって失うものはたくさんある」
などと「あいさつ禁止」のルールに反対する意見が続出。そのほか、「単純に寂しいわ」「日本も変わってしまったなぁ」と投稿者の心情に同調する声も目立った。
その一方で、
「近所とかかわりのない生活したい人だっている」
「(マンションは)他人の集合体だからこの警戒も理解はできる」
「これは仕方ない。あいさつを教える機会は親戚づきあいや学校など、ある程度安全な環境で設ければいい」
など、あいさつを避けたい住民の心情に理解を示す声も、多数派ではないものの、一定程度の割合で存在する。
「毎回挨拶する」マンション住民は2割
実際、今回のように「あいさつ禁止」のルールを決めたマンションは他にあるのだろうか。マンション管理に関する電話相談が年に8000件以上寄せられるという「マンション管理センター」の広報担当者は11月8日のJ-CASTニュースの取材に対し、
「マンションの住民があいさつを禁止するルールを決めたという話は、これまでに聞いたことがありません」
と話していた。
京阪電鉄不動産が2012年に実施したマンション住民へのアンケート調査によれば、「近所の方とすれ違う時に挨拶を交わしますか」という質問に、「毎回挨拶をする」と答えた人は22.0%。残りの内訳は「たまに挨拶する」(50.0%)、「ほとんど挨拶しない」(16.7%)、「全く挨拶しない」(11.3%)で、8割近くの住民があいさつに消極的だという結果だった。