飛行機が離着陸するとき、客室の照明を暗くされることがあります。しかし、必ずしもそうされるわけでもないようです。また、暗くする理由について「省エネ」などが挙げられることもありますが、実際はどうなのでしょうか。

「万が一」を考えて

 飛行機が離着陸する際、それまでついていた客室の照明が暗くされるときがあります。これはどのような理由があるのでしょうか。


JALのボーイング777型機とANAのボーイング787型機、スカイマークのボーイング737型機(2016年3月、恵 知仁撮影)。

 JAL(日本航空)の広報部によると、客室の照明を暗くするのは「安全のため」といいます。

「何らかのトラブルが生じた際に客室内の照明が消える場合があります。万が一、そのような事態になったときでもすぐに動けるよう、目を暗さに慣らしておくためです」(JAL広報部)


照明が消されたJALのボーイング777-300ER機内(2016年1月、恵 知仁撮影)。

 航空機事故は離陸滑走開始後の3分間と着陸前の8分間に発生する確率が高いとされ、この時間は「Critical Eleven Minutes(魔の11分間)」とも呼ばれています。このようなときに突然、室内が暗くなってもすぐに行動できるよう、あらかじめ客室を暗くしているそうです。

「限られたエネルギーを有効利用するため」や「窓からの景色を楽しんでほしいため」といった理由ではなく、あくまで「安全を重視したルール」とのこと。国内線、国際線を問わず、また天候も問わず、会社全体のルールとして、夜間の離着陸時は客室を暗くするようにしているといいます。

原則、明るいままのANA その理由は

 一方、ANA(全日空)は離着陸時における客室照明の取り扱いについて、ルールは特に設けていないといいます。


JALとANAで異なる客室照明の扱い(2016年3月、恵 知仁撮影)。

 広報部によると、客室の照明は乗客に提供するサービスのひとつと考えていることから、離着陸時でも原則は暗くしないとのこと。ただ、たとえば深夜便などで乗客の多くが寝ているときなどは、チーフパーサー(客室乗務員の責任者)の判断で、離着陸時にも室内を暗くすることがあるそうです。

LCCはある意味、わかりやすい? そしてスカイマークは

 LCCはどうでしょうか。ジェットスター広報部によると、社内の規程により離着陸時は客室内の照明を暗くしているといいます。理由は、外の明るさ(暗さ)に目を慣れさせ、万が一のトラブルで照明が消えた際にもすぐに対応できるようにするためだそうです。


JALやカンタス航空(オーストラリア)などが出資し、2012年に運航を開始したジェットスター・ジャパン(2014年5月、恵 知仁撮影)。

 対してPeachは、広報によると「規程は特にない」とのこと。離着陸時でも基本的に照明はつけたままですが、深夜で乗客の多くが寝ているときなどは、客室乗務員の判断で照明を暗くすることもあるといいます。

 ジェットスターはJAL系、PeachはANA系のLCC。客室照明の取り扱いも「暗くする」JAL系と「明るいまま」のANA系に分かれています。

 国などがガイドラインを設けていないという事情もあり、離着陸時の照明に対する扱いや考え方はこのように、会社によって異なっています。

 ちなみにスカイマークは、JAL系ともANA系とも異なり、日没後に離着陸する便については、客室内の照明を暗くするとのこと。日没後かどうかの判断は客室乗務員のチーフが行っているそうです。