子どもが幼稚園や小学校に入り、「知りたい!」「やりたい!」を原動力にどんどん外へ出ていくようになると、ママはうれしい反面、「これはしちゃダメ」「その前にこれを終わらせて!」なんて声を荒らげてしまうことも。

【男の子】大声で「ちんちん!」「おっぱい!」と言いはじめた時の正しい対処法

特に男の子の場合、その傾向が強いようです。

いつもガミガミし続けるママにはなりたくないのに……しつけって難しい!10歳未満男児のママの多くが、日々そのジレンマと格闘中なのです。

『いまどきの子を「本気」に変えるメンタルトレーニング』は、メンタルコーチとして高校球児を甲子園に導いた著者が相手に前向きな行動を促す言葉がけのノウハウをまとめたもの。

著者・飯山晄朗さんに、やんちゃざかりの幼稚園・小学校低学年男児をやる気にさせる言葉がけについて伺いました。

「自分で考える子」になる、たった一つのこと

――幼稚園〜小学生の男の子の特性として、「その時の思いつきでバーッとやってしまう」ということがあります。

飯山さん(以下、飯山):そうですね。子どもたちはほとんど無意識で行動していますから。瞬間的なものなんですよね。

でも、その前にまず気をつけたいのは、お母さんが「子どもが失敗しないように」と考えすぎていないか、ということです。

ケガしないように、失敗しないように、嫌いにならないように、と親が危険なものをひとつずつ先回りしてつぶしてしまうと、小学校の高学年くらいになった時に子どもが自分自身で考えなくなる。

言われたことだけをやったり、誰かがやってくれるまで待つようになるんです。これでは社会に出て困ります。

そうならないためには、まず子どもが思うようにやらせてみればいいんです。うちはできるだけ、やってもうまくいかないかなと思うこともやらせます。

やってみて自分で失敗したなと思ったら「何がダメだったのかな」っていう話をすればいいんです。

失敗してからでも、実は遅くない

飯山:中には、親が「それは失敗だ」と思っても、子どもはそれでいいと思っているケースもあります。それなら子どもの気持ちを優先させて、社会通念上明らかにダメなこと以外は止めなくていいと思います。

すると、そのうちどこかで本人も「あれ?」と気づくもの。その時に「何でダメだったのかな」っていう話をすればいいと思うんです。

たとえばストーブが熱いからと近づくこと自体を禁じてしまうと、それが熱いものだと知らなくて、後になって大やけどしてしまう。だから、幼いうちにストーブにあえて近づいて、触らないように気をつけながらも「これは熱いものだ」と理解させるようなことも必要です。

――過保護にしないで見守るということですね。

飯山:そうです。子どもを育てるキーワードは見守ること。「あなたは絶対に自分で気づける」「あなたは絶対に立ち直れる」と信じながら見守るんです。

結局、見守れているかどうか=信じられているかどうかなんですね。

長続きの秘訣は「楽しくなること」

――小さい子どもは特に飽きっぽいところもありますね。やり通してほしいと思っているママはどう接すればいいのでしょうか。

飯山:子どもが飽きてしまうのは、面白くないから、ただそれだけなんです。

どこかに面白みを見つけられれば、自分からどんどんのめり込んでそればかりやるようになります。

だから、まずは子どもが何に興味があるのかを一緒に見つけてあげる作業をやったらいいと思いますね。「やっても続かないからダメ」とか「一回決めたんだからやり通しなさい」っていうのは子どもにとってストレスでしかないんですよね。

――根気が続かなくても、もう次に行こうっていうことですか?

飯山:そうです。その結果、最初投げ出したものに戻ってくることもありますよ。

「これが好きなんだね、どんなところが面白い?」ってお母さんも興味を持ってあげると、子どもってすごくそれに対してのめりこもうとするんです。

「お母さんが喜んでくれる」は何にも勝る

――そんな中でも「まずこれをやってほしい」という状況は毎日あります。「ごはんを食べてほしい」「宿題をやってほしい」というようなことです。

飯山:やってほしいことに気持ちを向かせるには、どうしたらいいでしょう。

ひとつは、楽しいと思わせることですね。大人もそうなんですけど、正しいことは続かない。楽しいことしか続かないんです。子どもはそれがものすごく素直に出ます。

もうひとつ、楽しくないけどやるのはどんな時かっていうと、「やればお母さんが喜んでくれる」って思った時なんですね。

やっぱり子どもは、お母さんが喜ぶ顔が一番なんですよ。お母さんが家でニコニコ明るくしてくれると安心するわけです。逆に、いつも暗い顔や怖い顔をしていると、子どもも不安になるんです。

――たとえば「ごはん最後まで食べられたね!」「もう宿題やってるの?すごいね」っていう感じですか。

飯山:そうです。「できたね、ママ本当にうれしい」と言ってあげると、子どもは嬉しくなってまた次もやるようになります。

小学生までは確実にそうですし、中学生でも高校生でもそういう子はたくさんいます。反抗期があったり、だんだん言葉がそっけなくなったりというのはありますが、根底ではお母さんがどんな顔してるかというのは気になるわけです。

結局は母親なんですよね。母親がどう思うかってことなんです。

指示するなら「してはダメ」ではなく「していいよ」が基本

――身近なお兄さんやお姉さんをお手本として示すのもいいですね。

飯山:いいと思います。だから兄弟の場合は、下の子は上の子にくっついていくわけです。

下の子はほっといても育つというのはそういうところですね。早くお兄さんに追いつきたいと同じことをします。もっと成長したいっていう気持ちがあるんですね。

だから、「できるよ」っていう気持ちを伝えてあげたいですね。「危ないからダメだよ」「これはうまくいかないからダメだよ」ということではなくて。

やらないでほしいことではなくて、やってほしいことを伝えていくことは大事ですね。

――小さい子は特にそうですよね。

飯山:「ダメだって言ったでしょ」と言ったところで、ダメっていうのは指示ではないですから。こうしてほしい、そうなってほしいという行動を言わないと。

叱った後は、ママも切り替えることが大事

――叱って子どもがへこんじゃった時の立ち直らせ方についても教えてください。

飯山:たとえば子どもが誰かを叩いたりして、叱ったらへこんでしまって何もしない。「ごはんだよ」って言ってもいじけているような状況なら、基本はあれこれ言わずに、放っておけばいいんです。

自分がへこんで、黙っていれば誰かが何かしてくれるというのは甘えです。これは引きこもりの子に対してのやり方と同じなんですが、「ごはん食べたくない、いらない」と言うなら、「わかった、いらないんだね。じゃあお母さん食べるね」と言って、先に食べ始めてしまいます。

「あ、これおいしいな」なんて話しながら子どもをチラチラ見るのではなく、楽しそうに食べていれば、しばらくして「……僕も」って戻ってきますよ。

――普段通りに、ということですね。

飯山:目の前のごはんを楽しんで食べていればいいわけです。楽しい雰囲気を作っていれば、子どもはそこに行きたくなるものですから。

――「お母さんはもう怒ってないんだ」っていうこともわかりますね。

飯山:それでちょこちょこっと近づいてきたりしますよね。そうしたらパッと見て、「食べる?」って。もう叱ったことはいいんです。その話はもう終わってるから。普通に受け入れてあげればいいんです。

子どもは素直です。楽しい、やってみたいと思うことにはすごく前向きになれます。そのエネルギーをうまく活かしてあげられればいいと思いますね。

まとめ

飯山さんの著書『いまどきの子を「本気」に変えるメンタルトレーニング』、前著『いまどきの子のやる気に火をつけるメンタルトレーニング』(ともに秀和システム刊)では名門高校野球チームの選手たちとの具体的なやりとりを例にとり、メンタルトレーニングの方法が解説されています。

人は、「信頼されている」と思えば前向きに頑張れるもの。高校生でも、幼稚園児でもそれは同じです。子どものやる気を促す言葉がけを上手に取り入れて、子どもが委縮することなくのびのび育つ環境を作ってあげたいですね。