“衣”と“食”でこれほどデフレが歓迎されているとなれば、当然“住”も同様。
 エブリデー・ロー・プライス(EDLP)をキャッチフレーズにするのが、世界最大のスーパーマーケットチェーン・ウォルマート100%傘下の『西友』だ。
 「一定商品の値上げを半年凍結する『プライスロック』が人気です。今も1300品目を掲げ、実質値下げを断行中で、売上を伸ばしています」(同)
 総務省が発表した7月の全国消費者物価指数は99.6%(生鮮食料品を除く)で、前年同月比を0.5%も下回った。とはいえ、デフレを味方にする企業を見ると「デフレが悪いわけではない。インフレになれば景気がよくなるとの考えが浅はかなのだ」ということがよく分かる。

 かつての“本業”が完全崩壊しながらライフサイエンスや高機能材料、印刷、イメージング、関連会社の富士ゼロックスなど5領域が絶好調だった富士フイルムが図らずもつまずいた。8月30日、化粧品大手DHCに1億円の損害賠償を求めた特許訴訟で、同社の請求を棄却する判決が下されたのだ。同社はこれを不服として知的財産高等裁判所に控訴中だ。
 「とはいえライフサイエンス領域の躍進は目覚ましい。インフルエンザ薬『アビガン』はエボラ出血熱に有効性があると伝えられたばかり。4月には人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)など、情報科学分野の研究開発を行う『インフォマティクス研究所』を設立して、新分野の事業化を画策中です」(株式市場ライター)

 同社はキヤノンによる東芝の医療機器子会社・東芝メディカルシステムズの買収について異議を唱え、6月30日には、これに同調した公取委が経団連会長輩出企業キヤノンに対して異例ともいえる「注意」を行っている。
 熊本地震で工場が被災したが、その収拾も早かった。同社の果敢な経営戦略は、こんなところにも反映されているようだ。