ラテン音楽のミュージシャン、盆栽とフィギュアを組み合わせた「マン盆栽」の家元、「入浴剤ソムリエ」……など数多くの肩書きを持つパラダイス山元氏。

私が初めてパラダイス山元氏を間近に見たのはミュージシャンとしてだったのだが、二度目に目にした時は、「グリーンランド国際サンタクロース協会」の“公認サンタクロース”としてで、氏は白髭をたくわえたサンタクロース姿となっていた。

そのパラダイス山元氏にはもう一つ、餃子王としての顔があり、餃子好きが嵩じて「蔓餃苑」という餃子専門店を営んでいるほどである。とはいえ、多忙なパラダイス山元氏だけに、その店は会員制かつ不定期開店というシステムで運営されているという。限られた者だけが入店を許される幻の餃子店であり、それがまたすこぶる美味しいという。

運良く「蔓餃苑」に行けた方の書いたブログを読むに、「蔓餃苑」では一般的な焼き餃子だけでなく、魚介類などを使った創作餃子のフルコースが提供され、デザートまで餃子なのだとか。食通で知られるアンジャッシュ渡部建も絶賛している(よかったら「蔓餃苑」で検索してみてください)。


「なんだか面白そうだなー食べてみたいなーでも自分には一生縁が無さそうだなー」と思って漫然と日々を過ごしていたのだが、その「蔓餃苑」の餃子がホテルのビュッフェに出品されるという情報を耳にした。これは……都市伝説のように噂だけが聞こえてきて、どんなものなのか気になり続けていたあの「蔓餃苑」の餃子を食べられる貴重なチャンスなのではないか!と思い、ついに念願の餃子を食べた、という模様をこれからレポートします。

「蔓餃苑」が出店したビュッフェはホテルニューオータニ大阪で8月11日から14日までの4日間のみ開催されていた“極上の肉ビュッフェ”「PERFECTグルメ&SATSUKIスイーツ GOURNERGY2016」というもの。なんだかビュッフェのタイトルからして迫力を感じる……。

ホテルニューオータニ大阪2階に設けられた会場に足を踏み入れると、社長令嬢の結婚式かというような広い会場の正面に「“おいしい応援団”メニュー」のブースが並んでいる。



「“おいしい応援団”メニュー」というのは、今回の「GOURNERGY2016」の目玉企画で、専門分野に精通した食のプロたちがオリジナルメニューを用意するというもの。脚本家・小山薫堂氏が熊本復興支援の一環として「くまモンの肥後丼」というメニューをプロデュースしたり、麻婆豆腐研究家・本郷義浩氏が究極の麻婆豆腐を作り上げて提供していたりするのだが、その中に「蔓餃苑」の「ラムパクチー餃子」がエントリーされているのである。

色々美味しそうなものが目に入るが、とりあえずこの餃子を食べなくては始まらない。「蔓餃苑」ブースから早速餃子をいただいてきた。


「ラムパクチー餃子」というだけあって餃子が隠れるほどパクチーをドサッと乗せて供される。


その下から現れるのはずっしり重量感のある餃子。見た目からしてプリプリの食感であることをうかがわせる。


醤油や酢などにはつけず、そのままいただくスタイルでほお張ると、見た目から想像していたプリプリ具合を上回るプリプリ度。肉がみっちり詰まっていてラムの濃厚な旨みと、餡に練り込まれているというクミンシードの香りがぶわっと広がる。その後にパクチーの香味が爽やかな余韻を残していく。美味い。まったく食べたことのない餃子である。

これが「蔓餃苑」の餃子……。少し気持ちを落ち着けてから2個3個と味わっていくと、皮の絶妙な厚みや、肉の密度の高さに何度も驚く。

幸福を感じながら周囲を見渡すと、改めて荘厳な雰囲気の会場である。会場の中央では、「氷彫刻の世界チャンピオン」により氷の彫刻ショーが始まり、なんだか普段の食事とあまりにかけ離れた雰囲気でニヤニヤしてしまう。


見とれてぼーっとしてる場合じゃない!と気合を入れ、前述の小山薫堂氏プロデュースによる「くまモンの肥後丼」を食べ(甘辛いタレと熊本県産あか牛の相性が最高)、同じく前述の麻婆豆腐研究家・本郷義浩氏の「稲妻麻婆」(大きめの厚揚げ豆腐が入っていてこれに酸味を強調した味付けが合う)を食べ、食べログの兵庫県の「ステーキ部門」で3年連続1位を獲得した「大栄」の裏メニュー「山芋100%ふわふわお好み焼き」(生地の柔らかな食感にうっとりと目を閉じた)を食べた。




国産牛のステーキを食べ、さらに色々食べ、“スイーツ界のピカソ”とも称される「ピエール・エルメ」のソフトクリーム「マホガニー」(ココナッツのギモーブとライチの果肉がトッピングされたマンゴーベースのソフトクリーム。そこにキャラメルソースもかかっていて桃源郷の味わい)を食べて自分の中の美味しさラインが測定不能の域に達した。



ホテルニューオータニ大阪の広報担当・吉田さんにお話を伺うと、このビュッフェ以外には出店したことのない「蔓餃苑」や、「ピエール・エルメ」のソフトクリームなど、この機会にあわせて特別に提供されたフード・デザートがかなり多く、交渉やその後の調整は大変だったという。例えば「蔓餃苑」でいえば、パラダイス山元氏の“公認サンタクロース”としての活動を通じてホテルニューオータニ大阪との縁が生まれ、そこから徐々に話し合いを重ねた上で出店が叶ったのだとか。

「今日は美味しいものばかり食べることができて幸せでした……」と、満腹感からぼう然としている私に吉田さんが「実は、蔓餃苑の餃子に麻婆豆腐をかけて食べると美味しいんですよ」とささやいた。

まさにここでしか試すことのできない組み合わせ。やるしかあるまい!


「ラムパクチー餃子」の「稲妻麻婆」のせ。その美味さにシビれた。



これでもうしばらくは粗食で暮らしてもいいや、と思いつつ会場を後にしたのだが、今この記事を書いていて、ディナータイム限定の「蔓餃苑」の「バナナマンゴー餃子フリッター」が食べられなかったことが心残りで、つくづく人間の欲望には果てがないと思い知ったのだった。

ホテルニューオータニ大阪では季節ごとに様々なイベントが催されており、遊び心と勢いを感じる面白い企画も多い(今年10月には関西初となる「デーモン閣下」のディナーショーが予定されていたり)ので、たまの贅沢に足を運んでみて欲しい!

店舗情報:ホテルニューオータニ大阪
住所:大阪府大阪市中央区城見1-4-1
電話:06-6941-1111