人気レスラー、H・ホーガンの「セックスヴィデオ」流出報道に端を発する、米ウェブメディアとの訴訟問題は、大物投資家の参戦により運営会社に対する多額の賠償金支払いというかたちで決着した。ではその後、何が起きているのか。

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その立ち上げから14年、『Gawker.com』が今週にも閉鎖されようとしている。Gawker Media(ゴーカー・メディア、以下ゴーカー)の新たなオーナーとなった米国のスペイン語テレビネットワーク、ユニビジョンが決定した。このことはゴーカーのスタッフに、ファウンダー兼CEOのニック・デントンから伝えられたという。8月18日(現地時間)、マンハッタンにあるオフィスでのことだ。

オンラインジャーナリズムの先駆けともいえるゴーカーが築いた手法は、ウェブでの言説はこうあるべし、というスタイルの基となったと言ってもいい。しかし最悪なのは、『Gawker.com』が世に出した内容はニュースとしての価値はほぼなかったことだ(例えばそれは「コンデナスト〈われわれ『WIRED』の版元だ〉の役員のお出かけ」などだったりする)。あるいは、せいぜい著名人・団体を叩きまくる程度で、そうしているうちに力ある人びとの怒りを買ってきた。

なかでも次の2つの記事が、今回の破滅への第一歩だった。億万長者でヴェンチャー企業の資本家ピーター・ティールがゲイであることを公にしたものと、ハルク・ホーガンのセックスヴィデオ流出記事だ。

ティールは、ホーガンがゴーカーを名誉棄損で訴えた際に秘密裡に資金を援助し応援し、結果ホーガンが勝訴した。ゴーカーには1億4,000万ドルの支払い命令が下され、破産に追い込まれ、その編集にまつわるアセットを売却する羽目になったわけだ。

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ゴーカーのライターたちは、同社の抱える『Gawker.com』以外の6メディア(日本でもライセンス・運営されている『Gizmodo』『Lifehacker』など)、またはユニビジョン傘下の他社へと“残留”し、引き続き仕事ができるという(ユニビジョンもテック系の『Fusion』、ブラックニュースやブラックカルチャーの『The Root』を所有している。また同社はニュースメディア『The Onion』の少数株主でもある)。

お抱えライターがどこへ落ち着くかはともかく、『Gawker.com』の閉鎖が厳しい現実であることに変わりはない。それは社員たちにとってのみならず、ジャーナリストにとっても同様だ。

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