「フリースタイルダンジョン」Rec4-1が始まる前に、間違いない日本語ブックを紹介するぜー! DJエキレビかませー!(ドュク、ドュク、ドュク、ドュク)

「もっともイケてるTVショー 言わずもがもだなFSD 地方住みでもノー問題 オレなら速攻でアプリ(*)GETするだけだな」 (*AbemaTV


特別編「モンスターズウォー」が2週続いた(AbemaTV放映時のレビュー)。「ヤー!」の奇跡をきっかっけにチームR指定は完全に流れに乗った。そのR─指定を倒し、優勝を果たしたのがDOTAMA。勝利の瞬間に見せた複雑な表情。やがてこぼれだす大粒の涙。この変則的な大会は百戦錬磨のラッパーたちにとってもキツかったのだろう。大会を締めるサイファーは、マイクリレーが延々と続き、誰もが終わりにしたくない感じ。これはいいお祭りだなぁ、モニター越しにこの場を共有している僕もにっこりしていた。

さて、来週からはいよいよRec4がはじまる。どんなチャレンジャーが出てくる? 前Recでの伏線はどうなる? こんどの般若のコントは笑えるのか? お楽しみの材料いっぱい、期待膨らみ胸いっぱい、でもありつけるのは1週間後かい!

うへぇ、早く観てー、早く観てー。もうわれわれは即興日本語ラップのおもしろさを知ってしまった。やべー勢いですげー飢えまくってる。都合3週間の強制断食。明日がいきなり1週間後だったらいいけどそういうのあまりないからとりあえずまぁ落ち着け。たとえばRec4が放送されるまでの期間を夏休みだと考えたらどうだろう。必要だよねー、夏休み。先生からは夏休みの読書を提案します。課題図書をぜんぶ読みこなせたら、いままでの倍の倍の声で「うぇいよー!」出来るよ。

夏休みの課題図書1『ヒップホップ・ドリーム』(漢 a.k.a. GAMI 、河出書房新社、2015年


最初に紹介するのはこいつだー。モンスター勢の中でも圧倒的な存在感を放つ漢 a.k.a. GAMI の自伝。現役ラッパーがストリート・ビジネスの実態について赤裸々に語った事は衝撃的だ。読みながら、いくらなんでもこれ書いちゃうのはリスク高すぎるでしょー! と驚く。だが、漢は次のステージに移行するためのケジメとしてこれを記したのだろう。その律儀さにリスペクト。

印象的なエピソードがある。漢の信条は「リアル」。ある時クルー(仲間)のひとりがラップの中でビーフ(攻撃)対象を「刺す」とつい言ってしまった。それがやがて襲撃事件になってしまう。放たれた言葉に行動が伴っていなければ「リアル」ではない、そんな思考によるものだ。こっけいだけれど、けっこうイカレてる。コンプライアンスが猛威を奮うこの時代に、漢のような『全身小説家』タイプの表現者が萎縮せず存在し続けることは大事だろう。

後半は事務所から独立し、鎖グループを立ち上げるまでの経緯が語られている。ここを丁寧に読んでいくと晋平太が審査員を辞した理由がうっすらと見えて来る。この背景を踏まえ、もし晋平太がチャレンジャーとして戻ってくるならば……。想像しただけで脳みそ湧くなー。その日のためにも、読んどけ。

夏休みの課題図書2『クイック・ジャパン126』(雑誌、太田出版、2016年)


コムアイさんの表紙が目印。特集2が「フリースタイル」で、『フリースタイルダンジョン』にフォーカスされた内容で構成されている。いとうせいこうとジブさんによる重鎮対談をかわきりに、主要モンスターが次々と登場する。モンスターごとに異なるテーマなので、個性が際立つナイスな構成。とりわけR─指定による『高校生RAP選手権』のバトル解説がとても勉強になります。この分析能力の高さがR─指定の強さの秘密なんだねー。天才のかげに努力あり。

夏休みの課題図書3『ユリイカ 日本語ラップ特集』(雑誌、青土社、2016年)


ラスボスの般若がインタビューに応じている。ちゃんと、マジメに! 般若は駆け出し時代、他所のパーティに乱入し、殴り殴られながらマイクを奪いフリースタイルをしていたという。当時を回想すると「楽しさと暴力が半々くらい」だったそう。般若がプロレス技をかけながらラップしていたとの証言もある。般若さん、さすがや……。長渕剛が涙した大大大名曲『家族』成立のいきさつもアツイ。『ユリイカ』は「詩と批評」専門誌だけあってリリックをしっかり解読する。この曲に関して。父危篤の知らせに衝撃を受けた般若が当時を回想しながら「三日前 四日前 蝉の声 ごっちゃ混ぜ」とラップする。同一人物である体験者(般若)と語り手(般若)の間に「蝉の声」が介入し、体験者として感じていた意識の混濁が音源上でも反復されると指摘する。さすがラスボス、番組でラップするシーンはレアだけど、ムキムッキの体同様、リリックの体脂肪も極く少量!

夏休みの課題図書4『サイゾー』連載「川崎」(磯部涼、サイゾー、連載中)


番組ではオシャレ番長とも称されるモンスター、T-Pabllowのフッド(地元)の様子が丹念に取材されている。T-Pabllowは若くハンサムということもあり、モンスターの中では貴公子的なキャラだが、これを読んでいくと般若同様あなどれない存在だということがわかる。スタイルの模倣からはじまった日本のヒップホップカルチャーが、T-Pabllowの世代では地面から立ち上がっている必然的な表現になった。この連載は/webでも読めます。

いまの番組のブームをきっかけに、ひとりでも多くの人たちに現場に足を運んで欲しい。あるいは音源に触れて欲しい。そして、ヒップホップ文化を好きになって欲しい。と、これら雑誌インタビューでモンスターたちが言っている。日本語ラップはながらく「冬の時代」だった。ようやく巡ってきたチャンスをモノにするため、世代や立場や確執を超え、一同団結して日本語ラップを拡大するのだ! そのためにはセルアウトとそしりを受けることも覚悟のうえ。そんな彼らの心意気に応えなければハラの底から、うぇいよー! 出来ないよ。

1気に4日分の課題図書を指定しましたが、雑誌中心でかつ親しみのあるモンスターの話だったので余裕だろう。ここから先はちょと深めのダンジョン。どんなモンスターがいるのだろうか、眠っている財宝はなんだろう? また明日、紹介します。1日寝て待て、Rec4はまだ来ない。
(飯田和敏)

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