後半戦で順調な滑り出し見せるDeNA、ラミレス監督の戦略とは

 シーズン後半戦が始まり、2カード連続で勝ち越したDeNA。順調なすべり出しを見せたチームで、大きな注目を集めた2人がいる。筒香嘉智今永昇太である。

 不動の4番・筒香は22日の巨人戦(横浜)でプロ野球史上初となる3戦連続マルチ弾を放ち、本塁打トップのヤクルト・山田(29本)にあと1本に迫る28本と驚異のペースで打ちまくった。一方、ドラフト1位ルーキー・今永は24日の巨人戦で1か月ぶりの先発マウンドに上がり、5回7失点で6敗目を喫した。

 対照的な結果となった2人だが、ラミレス監督の下、特徴的な起用をされている。

 24日の巨人戦、筒香は8点ビハインドの9回の守備から交代させた。もちろん、故障があったわけではない。今季から就任した新指揮官は、点差が離れてリードもしくはビハインドの試合が決した状況で、頻繁に4番をベンチに下げている。

 出場84試合で途中交代は26試合。キャリアを積んだ30代のベテランなら、体への負担を減らすために珍しくない策だが、24歳の主砲としては多い数字だ。

今永に対しても思い切った決断

 もっとも筒香自身、怪我が少ない選手ではない。レギュラーに定着した14年以降、太ももや脇腹の故障などで短期的に毎年離脱している。今年も5月に右脇腹の軽度の肉離れで10日間、登録を抹消されている。

 ラミレス監督が「少しでも体の負担を減らし、次の試合に備えてほしい」と説明する通り、そんな4番の肉体を考慮し、状況に応じて休養を与えている。いかに筒香を大事に使いたいか、という思いが見て取れる。その結果が、夏場に入ってこの爆発的な打撃成績である。

 選手に決して無理はさせない、その姿勢は22歳のルーキーに対しても同じだ。

 開幕ローテ入りした今永は、3、4月こそ好投しながら打線の援護に恵まれなかったが、5月は初勝利から一気の4連勝。ところが、6月に入ると不安定な投球をすることが目立ち、ラミレス監督は6月18日の楽天戦(横浜)の4回4失点の後に2軍再調整を命じた。

 この判断も思い切ったものだった。楽天戦こそ打ち込まれたが、前戦の同11日オリックス戦(京セラD)も6回無失点で5勝目を挙げていた。確かに生命線の直球のキレが失われつつあったが、場合によってはもう1、2試合、様子を見てから―、という考え方もあったはずだ。

避けたい昨季の二の舞、「ラミ流マネジメント術」は花開くか

 戦力として計算していないから、というわけではない。むしろ「後半戦で大きな助けになってくれる」と期待するからこそ、精神的、肉体的にダメージが取り戻せなくなる前に、指揮官は早い段階で2軍行きを命じた。

 復帰戦となった24日の巨人戦は4回に相手打線にうまく打たれたこともあり1イニング6失点と崩れたが、序盤の3イニングは最速146キロをマーク。直球のキレは明らかに休養前に近いものがあった。本人も「納得のいくボールをいくら投げても、コース、高さを両方間違えてしまっては打たれることがわかりました」と話した通り、課題は制球面。今後への期待を感じさせる内容だった。

 選手の体の負担を最優先し、休ませながら能力を最大限引き出すマネジメント術。タクトを振るう指揮官の脳裏には、昨年のチームの苦い経験があるのだろう。

 前半戦首位ターンを果たしながら夏場に息切れしたチームは、まさかの大失速。最終的に最下位に転落した。去年の二の舞いを防ぐべく、用兵でも配慮を尽くす。現在、最も多くマウンドに上がっている田中の登板数は38。これはチーム毎の最多登板数としては12球団で最少だ。特定の選手に負担を偏らせないスタイルは、チーム全体に浸透している。

 チームは26日からCS進出を争う中日、そして首位を独走する広島とのビジター6連戦。その先には勝負の8月がやってくる。筒香や今永は、その中核となる選手だろう。「ラミ流マネジメント術」が花開くか、注目の戦いとなりそうだ。